楽天はCSR活動として、全国の高校生を対象に電子商取引を教える「楽天IT学校」を行っている。同社の社員が講師として学校に行き、「電子商取引は究極の対面販売」という考えを、若者に伝え、ビジネスマインドの育成や地域活性化を狙う。この取り組みの導入校は、2008年度の5校から始まったが、今年度は21都道府県25校に拡大している。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
楽天IT 学校は、同社が高校生を対象に約1年にわたり実施するものだ。授業では、同社が運営する「楽天市場」での販売戦略の立案、商品プロデュースなど店舗運営のノウハウを教える。年に数回、町へ出て市場調査もあり、授業の後半では、各校による地域のPR を兼ねた販売実践も行う。講師を務めるのは、同社社員に加え、地元の「楽天市場」出店者などだ。
各校で授業を受けるのは、1クラス10~40人の生徒たち。4~5人でグループをつくってもらい、どの班が一番商品を売り上げたのかを競い合う。最終的には、全国の「楽天市場」出店者が一堂に会する楽天新春カンファレンスで楽天IT 学校を開講している全高校参加によるプレゼン大会も行われる。
2008年から2012年では導入校は6校ほどだったが、2013年度には15校、そして今年度は25校と増えている。年々伸びている背景には、2010年に文科省が、2013年度の入学生から商業高校では、電子商取引を必須科目とすると発表したことがある。
商業高校だけでなく、普通科高校からの問い合わせもきている。現役ビジネスマンが講師なので、「ビジネスマインドを培うための実践的な授業」との評価を受けているのだ、楽天IT学校を統括する同社CSR部黒沼篤氏は、「販促方法の前に、社会人として通用する基本的なビジネスマナーを教えることを心がけている」と話す。
ネットで商品を販売する過程では、消費者と販売者の直接のコミュニケーションはない。しかし、同社は、「究極の対面販売」と考える。そのため、基本的なビジネスマナーを徹底するのだ。そして、顧客の気持ちを想像することを求める。
「その商品を購入することによって、購入者にどんなハッピーを届けられるのか」――授業では、きれいなサイト製作のコツや効率の良い販売方法などよりも、この問いを第一に生徒たちに投げかける。地元企業の商品を、全国のお客さんが受け取ったとき、どう思うのかを考えさせることが、生徒たちのビジネスマインドを醸成するだけでなく、地域企業の繁栄にもつながるのだ。
楽天は、生徒、地域、同社の3セクターが協働するこの取り組みで、「人と社会のエンパワーメント」を実現する。