タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆いじめ

「取材して来たよ」桃山が言った。
「県の役人で本山市の農業を指導する立場の大西と言う人物がこの事件の主犯だったよ、動機は、だだ杉山さんにプライドを汚されたくないだけなんだ」
「杉山さんはおとなしい人だよ」片桐が言った。「その人が何をしたというんだい」

「なんの罪もないよ。農地法と農学の知識を教員の性として丁寧に丁重に大西部長に教えたそうだ。それが大西さんの怒りに触れたんだな。彼は地方政治家の息子で親の威を笠に着る所があって、奇妙な話だが人事にも影響力がある人物らしいよ」
勿論、県でも市でもその人柄に面柔しても腹背する人も多いのだが、甘い汁が吸えると思って取り巻きになる人物も少なくはないと言う事だ。
「田舎で有りがちなことで、皆、波風を嫌うから声が大きい物がのさばる体質ってのはあるよね」
と片桐がいうと「これがいじめの体質の心理学なんだよ。大柄のいじめっ子の前では、いじめに加担せざるをえないんだな。長年農業を取材した俺にはよくわかるよ」
「しかし、今回のケースでは、明らかに認可されていた事実を隠ぺいした事件だから、事実が明るみにでれればそれで解決するんじゃないかい」と片桐が言った。

「しかしそこが役人たちの巧妙なところなんだよ。役所は杉山さんに親切ごかしに『ごちゃごちゃしちゃったから申請をやり直した方がいいですよ』と言って自主的に取り下げさせているんだ。つまり申請者が申請者の都合で申請を取り下げたと言う事をでっち上げて、許可も申請者の都合で取り下げられたと言うことにしてしまったんだ。おれは農水の組織のなかで散々そんなことを見て来たけどね」と桃山が言った。

「なんでそんなことをして苛めるんだ。なんの得もないだろう」と片桐が言うと桃山は「そもそもいじめなんてものは利益を目的としていないだろう。いじめそのものが目的なんだよ」といった。
「そして止めるものは誰もいない。それがいじめだよ」
「では杉山さんはどうしようのないのかい」片桐が言った。
「普通ならどうしようもないといって泣き寝入るんだが、今回はそうでもないかもしれない」桃山が言うと「ペンはいじめより強し」と片桐がニヤッとした。
「やるのかい?」桃山。
「たまには社会悪と戦おうよ」
「たまにはね」

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