味の素グループは8月1日、東北復興支援活動「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」の新拠点を福島県いわき市に開設した。同グループは2011年10月から、避難生活者の食改善「健康・栄養セミナー」を実施。味の素CSR部兼人事部の前原誠一郎社会貢献担当部長は、「福島の避難生活者は、いまだにいつ帰れるか分からない日々が続いている。仮設住宅がなくなるまで活動を続けていきたい」と話す。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

いわき拠点の開所式で挨拶する前原社会貢献担当部長

いわき拠点の開所式で挨拶する前原社会貢献担当部長

■移動式調理台積み込み、被災地を毎日走る

味の素グループは、震災発生後、被災者の心と体の健康づくりを支援しようと「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」を立ち上げた。

2011年10月からは、平日のほぼ毎日、「健康・栄養セミナー」を実施してきた。宮城県遠野市と仙台市に拠点を置き、味の素CSR部の社員が駐在。これまでに被災3県43市町村で800回ほど開催した。のべ参加者数は14400人にも上る。

「健康・栄養セミナー」では、移動式調理台「どこでもキッチーン」をトラックに乗せ、管理栄養士らによる健康に関するセミナーを開く。その後、住民も参加して調理を行う。

前原担当部長は、「つくる楽しさと集まる楽しさを伝えて、食生活の改善を目指したい」と話す。

同社には、「現場を大切にする」というDNAがある。この復興支援活動も、そのDNAから生まれた。震災発生後の5月、前原担当部長に、「現場に入りこんで何か活動を展開しろ」と内示が出たことが発端だ。

それから3年間、前原担当部長は休むことなく、施設を周り続けてきた。活動を継続するモチベーションは、「恩と義理」だ。

「隣人としてできる範囲で、できることを続けている。当社の発展を支えていただいた皆様へのご恩返しという思いが強い」(前原担当部長)。

このほど拠点を開設した福島県では、津波被害だけでなく、放射能汚染による帰宅困難地域もあり、住民一人ひとりの声を聞き、柔軟な対応を取ることが求められる。前原担当部長は、「いつ帰れるか分からない日々が続いているため、長期的に活動を続けていくことが大切」と話す。

開所式に出席した参加者で集合写真=8月1日、福島県いわき市で

開所式に出席した参加者で集合写真=8月1日、福島県いわき市で

いわき拠点は、大人40人ほどが入れる広さで、普段は住民たちにコミュニティーサロンとして解放する考えだ。

震災が発生して3年が過ぎ、東北から撤退する企業も増えるなか、同社・加藤浩輝CSR部長は、「新たに拠点を構える狙いは、『NPOや市民との対話』ができることにある」と話す。

「ビジネスとして、物の販売を介して消費者とコミュニケーションを取っているが、それよりも深く分かり合える。気付かなかった課題も把握することができる」

震災から3年が過ぎたが、いまだ10万人が仮設住宅に住んでいる。仮設住宅に住む人がいなくなるまで同社の活動は続く。