キリンビールは7月31日、福島産和梨の果汁を使用した「キリン 氷結 和梨」を昨年に続き、今年も期間限定で発売することを発表した。キリンビールマーケティング・布施孝之社長が福島県庁を訪れ、佐藤雄平県知事に「福島の美味しさを一人でも多くの人に知ってもらうべく、今年も販売を継続します」と報告した。キリングループは、事業活動によって社会課題の解決に貢献するCSV(共有価値の創造)の実現をめざしている。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

佐藤知事(写真真ん中)に「キリン 氷結 和梨」の販売を継続することを 伝えた布施社長(左)と椎屋直孝福島支社長

佐藤知事(写真真ん中)に「キリン 氷結 和梨」の販売を継続することを
伝えた布施社長(左)と椎屋直孝福島支社長

同商品で使用する梨は、福島県内の農家が生産したものだ。放射性物質の検査は、国の基準値よりも厳しい、同社が設けた自主規制値をもとに、梨の生育から加工までの各過程で3回にわたり実施している。

使用する梨は今年8~9月にかけて収穫し、11月4日から全国で発売する。

昨年は、11月に販売したところ、すっきりした飲み味と梨のさわやかな香りが20~30代の女性に受け、年内に工場から全量の出荷を終えた。

昨年の出荷数量は21万ケースだったが、今年は7割増の37万ケースを予定している。さらに、男性からの支持も集めるため、350ml缶だけでなく、500ml缶も販売する。布施社長は、「商品の認知拡大に力を入れていきたい」と意気込む。

今年は商品の売り上げ1本につき1円が東北の農業の復興支援に活用される「復興応援 キリン絆プロジェクト」の対象ではないが、キリンビールは福島県内の復興支援イベントやキャンペーンに協賛していく予算を確保しているという。

■福島県知事「風評被害はまだ根強い」

同日、佐藤知事を表敬訪問した布施社長は、「福島産の安全と美味しさをよりアピールしていきたい」とし、風評被害を払拭する意向を強く示した。

キリン 氷結 和梨」を試飲する佐藤知事=7月31日福島県庁知事室で

キリン 氷結 和梨」を試飲する佐藤知事=7月31日福島県庁知事室で

佐藤知事は、「まだまだ風評被害は根強く残っている。市場は回復しているが、震災前の値段には戻っていない。この商品で福島の元気を全国に届けてほしい」と話した。

布施社長は、同商品のことを「キリンのCSVの象徴」ととらえている。商品を通して、継続して福島の復興支援を行うため、「社員と福島の生産者が『風評被害の払拭』を共通目的として共有することが求められる」と語った。そして、「福島の課題解決が、商品の売上につながる流れをつくっていきたい」と、CSVのモデルケースを目指す。

布施社長は今年3月27日に同社の社長に就任したが、前職は小岩井乳業の社長を4年間務めていた。岩手県を拠点に働いており、東日本大震災のときも岩手県にいた。実際に被害を目の当たりにしたこともあって、今回の震災への思いは強い。

今後は、和梨だけでなく、福島産のほかの果物を使って氷結シリーズを展開していく考えもある。