廃校寸前の小学校を救うために、地元の中学1年生が立ち上がった。クラウドファンディングで600万円の資金集めに挑戦しており、現在111人から420万円が集まっている。一人の若者から始まったこの動きに、地元集落やNPOが加勢し、廃校を阻止するために、地区一丸となっている。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

クラウドファンディングに挑戦している鈴木くん(写真左)

クラウドファンディングに挑戦している鈴木智也くん(写真左)

その若者とは、左鐙(さぶみ)中学1年の鈴木智也くん(12)。今回、廃校を阻止しようとしているのは、左鐙小学校で、智也くんが小学6年生に転校してきた学校だ。

智也くんは、2013年3月に茨城県筑波市から島根県津和野町左鐙地区に、母親と妹の3人で引っ越してきた。左鐙とは縁はなかったが、母親が子どもたちを、山や川に囲まれた自然の中で、育てたいと思い、同地区に決めたという。

左鐙小学校が廃校に追い込まれている理由は、生徒数が少ないため。同県の教育委員会は2013年9月、同校に2015年4月までにおよそ16人が通っていないと「統廃合」と宣告した。現在、通っているのは6人で、その内1人が6年生なので、来年には生徒数が5人となる。

そこで、智也くんは、地区の空き家を改修し、子ども連れの家族が引っ越せるように動き出した。同地区には、空き家はあるのだが、古くて住める状態にはない。そのため、移住希望者が来ても、住む家がなくて、諦めてしまっていたという。

同地区に空き家はあるのだが、改修費は800万円かかる。集落の人で200万円を出し合い、残り600万円をクラウドファンディングで集めることにした

今回、クラウドファンディングで資金を集め、空き家2棟分を改修する。左鐙地区には2015年4月までに入居が可能な住宅として、津和野町の「若者定住促進住宅」が2棟建つため、計画通りにいけば合計で4棟、住める住居ができることになる。

同地区の空き家は広く、かつ、時間も経過しているためさびれている。そのため、建物すべてを改修するには800万円以上かかる。今回の資金では、トイレやお風呂、床ずれなどを改修し、最低限生活できるようにする考えだ。

智也くんの活動を応援しようと地元の大人たちも立ち上がっている。津和野町を活性化するFounding Base(ファウンディングベース)の社員や地元活性化の取り組みを行うNPOさぶみのが、クラウドファンディングで集めた資金管理やリターン品の準備を手伝う。

ファウンディングベースやNPOさぶみのなど、智也くんの動くをサポートする

ファウンディングベースやNPOさぶみのなど、智也くんの動くをサポートする

智也くんは同地区の生まれではないが、今回クラウドファンディングに挑戦した理由を、「大事なものを守りたいから」と話す。「左鐙小学校は、左鐙地区の中心的存在。運動会や発表会では、地域のおじいちゃん・おばあちゃんが集まり、料理をもってきてくれる」。

同小学校は2階建てで木造平屋建て。校庭はきれいな緑色をした芝生で、地域の人たちがボランティアで手入れしている。智也くんは、同校がなくなることで、一番気がかりなのは、そのような地域の人ではないかと心配する。

校庭には、きれいな芝生が広がる

校庭には、きれいな芝生が広がる

小学校がないことで、子ども連れの家族が隣町に引っ越してしまい、ますます高齢化が進み、限界集落となってしまうからだ。

タイムリミットとなる、2015年4月まで、残り4カ月。同校を存続させるためにも、最低で10人の小学生が必要となる。

同地区では小学生の生徒数が減りだした2007年から、地元の人でNPOを立ち上げて、移住者を増やす取り組みを行ってきた。教育委員会は2009年に2014年の同校の生徒数を1人と予測していた。しかし、2014年の同校の生徒数は6人で、その内の5人がIターンで来た。このような数字を実現した背景には、NPOの存在がある。

智也くんは、子どもの数は増えているのに、学校をつぶすのはおかしいと力を込める。田舎だからこそできる、少人数制の密度の濃い教育の良さも実感している。「人数が少ないという理由で、学校をつぶしてしまっていいのか。たとえ国の考えだとしても、ぼくは違うと思う。みんなが集まる大事な場所を残したい」と訴える。

お知らせ 智也くんが挑戦中のクラウドファンディングプロジェクトはこちら

智也くんの「TED×Kids@Chiyoda2014」でのプレゼン。38:20〜からが智也くんのトーク↓
http://new.livestream.com/tedx/TEDxKidsChiyoda-2014-JP/videos/69930142

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