札幌の中心部から車で30分、手稲山の麓で葛の布を織る渡邊志乃(わたなべしの)さん。作品の販売やワークショップを通して、多くの方に葛の布を知ってもらいたいと活動する。(オルタナS北海道支局長=横山 光紀)
渡邊さんが、布織りに関心をもったのは、10年以上前の、鎌倉で出会った手織りがきっかけ。「普段着る服が自分の手で織れることに感動し、織りはじめた。楽しくいろいろな作品を織るうちに、糸にこだわるようになって、葛の糸に出会った」と語った。
渡邊さんは、静岡・大井川葛布にて、葛の採取から糸積み・染色・織り・仕上げの行程を学んだ。江戸時代に唯一の産地として栄えた土地だ。札幌で採れる葛による糸で布を織るが、土・水・気温・湿度・日照時間などの違いからか、静岡で習った時とは、出来る布の風合いが違った。そこで、彼女は、北海道ならではの葛の布「oykar usep」(オイカラウセプ)を作ることにした。
10年以上、葛の布づくりに取り組み続けた渡邊さんは、2013年、自身の創作拠点となる「cise ne oykar」(チセネオイカラ)を構えた。制作を通して、葛の布の美しさが生きるのは何かと考えた結果、行き着いたのが「帯」だ。
「代々受け継がれてきた着物のように、思いを込めて作った帯を大切に使ってくれる人に使って欲しい。糸がほつれたり、破損したりしたら、出来る限り手をかけて私が補修する。長く愛着を持ってもらえる作品をつくりたい」と作品一つ一つにかける想いを語ってくれた。
「oykar usep」の製品化に向けて、彼女はスタートを切ったばかり。古来からの織り技術を取り入れた葛の布が、多くの人を感動させる日が待ち遠しい。
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