2013年3月11日にEUは、すでに施行されていた化粧品の動物実験の実施の禁止に加え、この日付以降動物実験が実施された化粧品や原料の販売を禁止し、世界最大のcruelty-freeな (動物実験していない)市場となった。EUに加え、昨年秋インドもすでに禁止していた動物実験の実施に加え、新たに動物実験された化粧品の輸入を禁止し、完全にcruelty-freeな化粧品市場への仲間入りを果たした。現在、化粧品の動物実験の実施と動物実験された化粧品の輸入・販売の両方を禁止しているのは、EU、イスラエル及びインドの3つの地域であるが、他の地域も後に続く姿勢を見せている。(寄稿・Humane Society International 山﨑佐季子)

ブラジルのサンパウロ州でも化粧品の動物実験の実施が禁止され、現在ブラジルにおいては、国レベルの禁止に向けた動きがある。加えて、米国、オーストラリア、ニュージーランド、台湾などにおいても化粧品の動物実験の禁止に向けた法案が検討されており、その他各国においても、化粧品の動物実験の禁止に向けた動きがある。

例えば、隣国の韓国では、動物実験の代替法の使用を義務付ける法案が実現した。この法律により、代替法がある試験に関しては、一部の原料や製品を除き、化粧品の動物実験が禁止となった。EU、イスラエルやインドで施行されているように、化粧品の動物実験を完全に禁止する法律ではないが、韓国でも、確実に化粧品の動物実験を終わらせる方向に政策が動いている。そして、中国においても、昨年6月に国内で製造される一般化粧品の動物実験の要件が廃止された。

これに対し、日本の法令では、一般化粧品については特段動物実験が義務付けられておらず、また禁止もされていない。規制上、動物実験が求められる状況は限られており、新規の防腐剤やUV吸収材など、特定の新規の化学物質を用いる場合や、薬用化粧品(医薬部外品)において新たな原料を使う際に、動物実験が求められるが、他国と比べて、法的規制への道が見えてきているとは言いがたい現状がある。

そんな中、化粧品の動物実験を終わらせるためのグローバルな取り組みとしては最大規模のヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International, HSI)のBe Cruelty-Free 思いやりのある美しさキャンペーンは、2月26日に参議員会館において、国会関係者に動物実験をしていない化粧品を実際に体験してもらい、この問題について知ってもらうための動物実験をしてない化粧品の無料お試し会を実施した。

イベントは、国会議員やメディア関係者などで賑わいをみせ、参加者は、イベントに協賛したラッシュジャパンやミス・アプリコットなどの、cruelty-freeな化粧品を間近で体験し、最新の世界各国の規制について、キャンペーン担当者からの講演で知識を深めた。

化粧品の動物実験は、言うまでもなく、美しさのために何千もの動物を犠牲にするため、倫理的観点から禁止が訴えられている。しかし、これに加え、動物実験は人間に対する安全性を評価する方法としては信頼性が低く時代遅れであり、現在は、動物を用いない最先端の科学技術を駆使した方法のほうが、より適切に消費者の安全を評価できるとされている。

疑問の残る動物実験に頼らず、既に実績がある既存の原料の組み合わせで化粧品を製造することもできる。消費者の安全性の観点からも、動物を使用しない試験方法への移行が求められている。

さらに、化粧品市場としては世界最大であるEUが動物実験を禁止しており、動物実験を継続する企業は、EUの市場で製品を販売することが難しくなっているため、貿易の障壁になる可能性も考えられる。日本は今後この課題についてどのように対応するのか。「動物好き」のみの関心ごとではなく、消費者の安全や貿易にかかわる課題でもあり、早急な対応が求められる。

Be Cruelty-Freeキャンペーンについての詳細はこちらから。また、消費者は、オンラインのBe Cruelty-Freeの誓約に署名することにより、化粧品の動物実験を終わらせることへの支持を表明することができる。

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