伊藤忠商事は次世代育成のCSR活動の一環として3月15日、障がいを持った子どもたちへの野球教室を開いた。会場は明治神宮外苑室内球技場で、元プロ野球選手から、ボールの投げ方や打ち方を学んだ。子どもたちは、テレビで観ていた野球を実際にプレーし、会場には、はつらつとした笑い声が広がった。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
当日、参加した子どもたちは27人。その子どもたち1人ひとりに、ボランティアが付いた。ボランティアは、同社の野球部やグループ会社の社員たちで、20~30代で48人が集まった。野球教室は朝9時から始まり、コーチを務める矢野和哉氏(元東京ヤクルトスワローズ投手)の教えに従い、12時まで、キャッチボール、ティーバッティング、1塁までのランニングなどを行なった。
同野球教室は、今年で8回目となるが、「年々、参加人数が増してきている」と、同社CSR・地球環境室の鈴木祥一氏は話す。この教室では、参加する子どもたちに、野球は「観るもの」ではなく「プレーできるもの」という体験を与え、ボランティア社員にとっては、「障がいを持った人へのコミュニケーションを学ぶ機会」となる。
第一回からかかわっている鈴木氏は、「最初の頃は、子どもの母親たちが率先して、フォローしていたが、今では、社員がコミュニケーション方法を理解している」と言う。ボランティア社員には「10歳そこそこの子どもが大人に声をかけることは難しいに決まっている。こっちから積極的に声をかけて」と伝えた。同日も、グラウンドの端で、子どもたちを見守る母親たちの姿があった。
中学2年生の子どもを持つ母親は、「スポーツ観戦が好きだったので、(野球教室に)参加した」と話す。特別支援学校や家以外では、人と接する機会が少ないため、この教室が、子どもと社会との接点になっているという。
■「健常者も障がい者も違いはない」
この野球教室のコーチを務めた矢野氏は、普段から少年野球団の監督もしているが、教え方に「違いはない」と答える。障がいを持っている子どもの方が、「がんばる力を感じる」と言う。
同日も、バッティング練習で、ピッチャーのボールにバットを当てて、一生懸命に1塁まで走る子どもたちの姿が印象的だった。さらに、矢野氏はスポーツマンシップとして大切な「人を尊重する心」を持っていると指摘。教えたことに忠実に、諦めずにバットを振り続ける子どもたちの姿勢からは、「こちらがパワーをもらう」と目を細める。
矢野氏は、「単純に、元プロ野球選手が子どもたちに野球を教えるのではなく、野球を教えることを通して、お互いを理解しあえるのが、この教室の求めるもので、CSR活動の本質でもあると思う」とまとめた。
この教室の練習方法を考える際には、日本身体障害者野球連盟の矢本敏実氏も加わった。矢本氏は、障がいを持った子どもは、野球は「できないのではなく、やらせてくれないだけ」とし、健常者と同じメニューを考えた。
子どもたちの顔も時間をますごとに明るくなり、積極的に声を出すようになっていった。
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