LILAC(Low Impact Living Affordable Community)はイギリス初の「エコで経済的」がコンセプトのコレクティブハウスだ。20世帯が同じ敷地内でコンセプト通りの暮らしを実現している。コミュニティー構築機能があり環境負荷も小さく経済的だと言われるコレクティブハウスで従来の地域コミュニティーの再興が見える。(オルタナS特派員=平 芙実加・リーズ大学)

LILACの住居とシェアガーデンと多様な住民たち Photographed by Muir Vidler  http://www.thesundaytimes.co.uk/sto/Magazine/article1336491.eceより引用

LILACの住居とシェアガーデンと多様な住民たち Photographed by Muir Vidler 
http://www.thesundaytimes.co.uk/sto/Magazine/article1336491.eceより引用

英国リーズ、郊外の小学校跡地を利用したコレクティブハウスLILACの住民たちは環境負荷を抑え経済的な暮らしを実現している。コレクティブハウスとは、複数世帯が1つの家屋または敷地内に個々のプライベートな空間と他住民と共有するモノやスペースを持ちながら暮らす住居のこと。

各世帯のプライベート住居はわら断熱の壁とパッシブソーラーシステムで建てられ、LILACの総CO2排出量は平均家庭より約55%少ないという*1。敷地奥のシェアガーデンでは野菜やハーブなどが栽培され食料の一部を自給しつつ、コンポストで生ごみから肥料を生む循環システムを備えている。

また全世帯で10台の自動車を共有し、その所有率は平均の半分以下である*2。家賃体系*3が経済的であることもLILACの魅力の1つだ。

住民は家賃として世帯月収の35%を毎月支払い、その一部は「共同基金」としてLILACの運営費となる。住民が組合員の協同組合のようなシステムだ。35%という割合は学術研究に基づいて設定されており、家賃は世帯収入により前後する。近年英国で住宅価格の上昇傾向が問題視されている中、低収入でも支払い可能なLILACの家賃システムは非常に画期的と言えるだろう。

LILACにはコミュニティーハウスとは別棟で個人のプライベートの住居がある。ペット可。 わら断熱の壁は厚く、壁から20cmほど向こうに椅子の後ろの窓がある

LILACにはコミュニティーハウスとは別棟で個人のプライベートの住居がある。ペット可。
わら断熱の壁は厚く、壁から20cmほど向こうに椅子の後ろの窓がある

住民の1人、Laura Smithさん(55)がLILACに暮らす最大の利点として挙げたのがコミュニティー内でのソーシャルな暮らしだ。LILACの住民は独立のプライベートな住居で暮らしつつ、コミュニティーハウスで他住民と交流することができる。

敷地の入り口に建つコミュニティーハウスには大きめのキッチンやワークショップ用の部屋などがあり、LILAC内外の人々が交流する場となっている。LILACにはコミュニティー機能を維持するための9つのタスクチームがあり、最低1つのタスクが住民に課されている。

Lauraさんはその中でも「大変」だという財政管理チームと「得意」な料理チームを担当し、毎週2~4時間ほどタスクのために当てているという。自分の時間が削られてしまうものの「LILACに入居する前よりも幸せに暮らしている」とLauraさんは言う。

Laura Smithさん(55)筆者撮影

Laura Smithさん(55)筆者撮影

「サステイナブルでかつコミュニティーの中での暮らしがしたかったのでLILACへの入居を決めた。…LILACの仲間たちとの暮らしは楽しい。ここでは一緒にパーティーをするなどして若者と友達のように交流することができる。コミュニティー内の楽しみがあるおかげで、外での出費が減った。LILACはとても安全に暮らせる場所のよう。気分が落ち込んだ時でも、体調がすぐれない時でも、すぐに話せる相手が近くにいる」

コミュニティーハウス内に設置されたポスト。住民が自然とコミュニティーハウスを利用するようにという狙いから、プライベート住居ではなくこちらに設置

コミュニティーハウス内に設置されたポスト。住民が自然とコミュニティーハウスを利用するようにという狙いから、プライベート住居ではなくこちらに設置

イギリスのコレクティブハウス推進団体UK Cohousing NETWORKによると、コレクティブハウスは1960年後半にデンマークから始まり、イギリスでは1990年後半から広まった*4。

現在までにLILACを含め18のコレクティブハウスがつくられ、60以上のグループが新たなハウスの実現に向けて活動しているという。しかし、コレクティブハウスの実現は必ずしも容易ではないようだ。

LILACの場合、アイディアの構想段階から入居まで約6年の歳月を要した。入居後の住民の努力も欠かせない。Lauraさんなど住民は定期的にミーティングを開きLILACの維持・改善に努めている。

9つのタスクチームが設けられた背景には、「LILAC内でのタスクが一部の住民に偏るようになってしまった」ことが挙げられる。外部のファシリテーター協力の元、住民で希望や意見を出し合い行き着いた形が9つのタスクチームであった。理想的な暮らしの形の裏にはそれを支える住民の努力が不可欠だ。

現在日本国内ではNPOのサポートで7つのコレクティブハウスが存在する*5ものの、発展途上の段階にある。

しかし、隣人と暮らしの一部をとシェアしつつコミュニティーの中で暮らせるコレクティブハウスだが、完全に新しいアイディアというわけではない。従来の日本の地域社会で、ご近所同士のおかずのお裾分けや住民の出資で運営される町内会など当たり前に行われていたことと似ている。

だが、時がたち社会情勢が世帯の形を変え、少子高齢化の進行や若者の未婚率上昇などで単身世帯が増加し地域社会でのコミュニティーが希薄化。その一方未来予測ができない世の中でコミュニティーの重要性が再考されはじめた結果、コレクティブハウスのアイディアが新鮮に思えたのではないか。

その社会的背景から、きっと日本はコレクティブハウスが成功できるベースを備えている。従来の地域社会にはなかったカーシェアの機能やコミュニティーでの食事の機会は、経済的な余裕がなく単身世帯が多い現代のニーズにより適している。

さらにLILACのサステイナブルな側面のように、同じ希望を持つ同士で集まり協同することで理想の暮らしを実現することもできる。コレクティブハウスは真新しい未知なるアイディアではなく、従来の地域社会再興型で現代のライフスタイルに適合したコミュニティーシステムなのだ。

参考
*1 LILAC公式websiteより http://www.lilac.coop/
*2 LILACのあるヨークシャー地域の世帯別自動車所有率は1.13台(2012/2013)。LILACは0.5台。(20世帯で10台を共有)
http://www.statista.com/statistics/314912/average-number-of-cars-per-household-in-england/
*3 MHOS(Mutual Home Ownership Scheme)を採用している
*4 UK Cohousing NETWORKのWebsite http://www.cohousing.org.uk/about
*5 NPOコレクティブハウジング社のサポートによるコレクティブハウスのプロジェクトは日本で7件。http://www.chc.or.jp/chcproject/ourprojects.html

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