パラグアイ共和国を中心とする途上国で、子どもたちの教育やジェンダーの課題に取り組んでいるNPO法人「ミタイ・ミタクニャイ子ども基金」(以下、ミタイ基金)が、パラグアイのカアグス県にあるメルセデス地区に小学校を増設するためのプロジェクトを行っている。ミタイ・ミタクニャイは、パラグアイの原住民族の言葉で「こどもたち」という意味。(オルタナS横浜支局=細川 高頌)
メルセデス地区はもともと、パラグアイ政府が世界銀行や国連機関から出資を得て、貧困層を対象に居住環境を整えるためのプロジェクトとして作られた地域だった。一日1ドル以下で暮らす人々も含め十分な居住環境がない中、この地区に移り住み新たな生活が始まった。しかし、住居はあるものの地区のなかに学校がなく、ミタイ基金の存在を知った住民から学校建設支援の要請があった。
ミタイ基金は、住民たちでもお金を出し合い、学校建設のための土地を取得することを条件に要請を承諾。そこには、「支援する側が全てをしては持続しない」という思いがあった。村人たちは自分たちの力で土地を取得し、ミタイ基金の支援を受けて2013年に小学校が完成した。
小学校には予想を超える児童が集まり、教室が不足するようになった。足りない教室は保護者たちが仮設の小屋を作ったが、屋根がない、蟻が大量発生するなど、子どもたちが安心して学べる環境ではなかった。
そこで今回、不足した小学校の増設を目的としたプロジェクトを始めた。中心となって活動を進めているのは、横浜国立大学3年の久喜淳史さん(20)だ。久喜さんは2015年にパラグアイに渡航し、現地の視察などを行った。「メルセデス地区にある小学校の校長先生はとても教育熱心で、子どもたちもみんな学校が大好き。先生も保護者も子どもたちもモチベーションがあるのに、学ぶ環境がないのはもったいない」と、学校建設の必要性を訴える。
ミタイ基金の代表理事で横浜国立大学大学院教授の藤掛洋子さんは、1993年から1995年まで青年海外協力隊としてパラグアイ共和国で活動した。当時、人身売買や夫による暴力など、地位の低かった農村女性のために、生活改善を目的とした栄養指導や、女性が収入を得るためのジャム加工技術の指導などを行った。
帰国後も継続した活動をするため、1995年にミタイ基金を設立。2008年には、活動に賛同した学生からも手が上がった。複数の大学から参加者が集まり、現在は横浜国立大学の学生が中心となって活動している。
藤掛さんは「学生たちはこれまで、毎年パラグアイまで現地視察に行き、住民の目線にたって自分たちにできることを考えてきた。住民たちも定期的に集まって会合を開くなど、協力関係が出来ている。学生たちと住民たちの相互の関係性の中から生まれる可能性の大きさを実感している」と話す。
今回のプロジェクトの資金は、クラウドファンディングサイト「Ready for?」で集められている。クラウドファウンディングとは、インターネットを通した寄付の仕組みのこと。支援者には支援金額に応じて、パラグアイの民芸品である「ニャンドゥティ」の製品、伝統衣装の一つ「アオポイ」、メルセデス地区の子どもたちが描いた絵などがプレゼントされる。目標金額は900,000円、期限は8月24日まで。詳細は下記リンクから。
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