今月24日はSNSを通じてファッション業界のあり方を問い直すムーブメント、ファッションレボリューションデーだ。服を裏返しに着た写真に#whomademyclothes?のタグを付けて投稿し、SNS上でそのブランドに「Who Made My Clothes? (私の服を作ったのは誰?)」と直接問いかけるという企画。服の生産現場から消費者までファッション業界に関わるあらゆる層を巻き込み、服の生産過程の透明性を訴える試みは、日本を含め世界66カ国で開催予定だ。(オルタナS特派員=平 芙実加・リーズ大学)

Photographed by Rachel Manns

Photographed by Rachel Manns

ファッションレボリューションとは、2013年4月24日にバングラデシュの縫製工場の崩落事故をきっかけに昨年から始まったムーブメントだ。事故のあった日を「ファッションレボリューションデー」と定め、ファッションブランドに生産者を尋ねる写真を投稿することで生産過程の透明性を訴える。

昨年は世界中で数万件の投稿が寄せられ、ツイッター上でトレンドとなった。2年目となる今年は、服を裏返して着た写真に#whomademyclothes?のタグをつけて「Who Made My Clothes?」とブランドに問いかける投稿を呼びかけている。

服を裏返しに着て、写真を撮り、SNSに投稿するというこのシンプルな企画は、ファッションに関わるあらゆる人々が参加しやすいようになっている。昨年は有名人を含めた数万件の投稿がSNS上に寄せられ、#insideout(裏返し)はツイッター上でトレンドとなった。

このムーブメントのコ・ファウンダーを務めるキャリー・サマーズさん(49)は、従来のショッピングの仕方を変えるように訴えるのではなく、写真をSNSに投稿するというシンプルな企画でより多くの人々を巻き込もうと考えている。

ファッションレボリューションの発案者でコ・ファウンダーのキャリー・サマーズさん(49) Source from:http://www.ashbournenewstelegraph.co.uk/s-important-know-togs/story-25816812-detail/story.html

ファッションレボリューションの発案者でコ・ファウンダーのキャリー・サマーズさん(49)
Source from:http://www.ashbournenewstelegraph.co.uk/s-important-know-togs/story-25816812-detail/story.html

「ただ服を裏返しに着て、ブランドに私の服を作ったのは誰かと問いかけるだけです。私たちは人々にただツールを提供し、服を裏返しに着ることで一人ひとりが変化を生み出すことができそれがファッション業界に大変な影響を与えると伝えています。この企画は、人々が参加してそのために行動を起こすように働きかけているのです」

ファッションレボリューションのきっかけとなった縫製工場の崩落事故は1,133人の犠牲者と2500人以上の負傷者を生み出した。その工場ではアメリカの小売大手ウォールマートやイギリス発のファストファッションブランドのプライマークなど大企業の製品も含めて生産されていたことが後に判明した1。

労働者の多くは低賃金でほとんど休憩なしの長時間労働を強かれていたことも浮き彫りになりファッション業界のサプライチェーンにおける透明性が問われる事態となった。透明性はファッションレボューションが業界に訴えようとしているのものでもある。透明性が増すことによって、どこでどのように作られた原料からどの国の縫製工場で生産されどのような過程を経て販売されているのかが明らかになることが期待できる。

仮にファッションレボリューションを通じて企業が透明性を高めようと努力する場合、それはただ評判を得る目的だけの表面的な取り組みになる恐れはないのだろうか。そのことについてサマーズさんは「なぜ企業が透明性を高め、そうする必要があるのかと言えば、多くのリスク回避を迫られていることにある」と主張した。

2013年の事故では、そこで生産していたかどうかを把握していなかった企業もいたという。どこでどのようにして自社製品が作られているのかを把握することが評判の低下を含めたリスクの回避につながるのではないかとみている。

このファッションレボューションは決して他人事ではない。日本でもバングラデシュで生産された服を見る機会はあり、ユニクロのファーストリテーリングや無印良品など海外に多く出店している企業もある。ファッションレボューションを通じて日本企業に求めることについて、日本のコーディネーターである竹村伊央さんは、もっと企業が自社の生産内容や行程を公開すべきだ、良いことをアピールしてほしいのでなく、ファッション業界では生産過程があまり語られないことが多いという当たり前をもう一度、見直す良い機会にしてほしいと語った。

変化が求められるのは企業だけでなく消費者も同様だ。エシカルファッションジャパンの代表でもある竹村氏は、消費の経済的な負担が軽いことからエシカルやサステイナブルなものではなく安価なものを選択することの問題点を次の様に答えた。

エシカルな商材が高いと言われるが、それ自体が間違っているような気がする。安くたたかれないで手塩にかけて育てた素材を使い、良い労働環境で対当な賃金を生産者に支払えば、対当な価格になるのではないか?それが、ファストファッションの登場や人や物の叩き売りが始まり、服への値段評価がおかしくなってきているように思える。安価な物はやはり壊れやすく、意図的にそのように縫製や素材を使っているところも多くある。壊れたからまた買う、安いから壊れてもしょうがないなどで、次々とお買い物をしていく。その出費はトータルでみれば、もしかしたら、高いけれど、長く良いものを1つ購入するのと変わらないかもしれない。自分にとっての価値をもう一度考えてみて欲しい。あなたが、いつも通常に行っていることが、本当に正しいのか?自分にとってメリットがあるのか?ファッションレボリューションがそんなきっかけになると良いと思う。

バングラデシュのような人件費の安い国で生産された安価な服を買うことを避けることが賢明か、というと必ずしもそうではないと語る人もいる。現地の雇用が維持されず特にバングラデシュの縫製産業を担う女性たちの人権や生活の退化につながる恐れがあるとNY市の人口協議会のSajeda Amin氏はガーディアン紙に寄稿している2。

ファッションレボューションの趣旨はファッション業界のサプライチェーンにおける透明性を訴えることでそこに関係するすべての人が幸せになることにある。誰かや何かの犠牲をもとに生産された商品をボイコットするのではなく、その企業に私の服を作ったのは誰かと問いかけることで明らかになっていなかった状況の改善につなげようとしている。1人ひとりの投稿がより多くのファッションブランドに気づきを与え、犠牲の少ない生産過程の実現に近づく可能性がある。

4月24日のファッションレボューションデー当日、東京・芝浦でトークイベントが開催される。「これからのファッションはどう変わる?」をテーマに繊研新聞の中村善春氏、ファッションジャーナリストの生駒芳子氏とピープル・ツリーのアンバサダーでフリーアナウンサーの末吉里花氏の3人が登壇予定。ムーブメントとは別にファッション業界のこれからについて理解を深める機会にしてはいかがだろうか。

◆日本での開催予定のイベント詳細はこちら

1http://www.usatoday.com/story/news/world/2013/04/24/bangladesh-building-collapse/2108727/
2http://www.theguardian.com/global-development-professionals-network/2014/apr/30/rana-plaza-boycott-bangladesh-garment-factory

[showwhatsnew]