「地元は好きだけれど、面白い仕事がない」。地方出身者の中で、やりたい仕事がないという理由で地元を出て行く人は多い。だが、その仕事は本当に地元でできないものなのだろうか。地元への可能性を閉じないためのワークショップをレポートする。(寄稿・寺田 匡志朗)
私のいる法政大学藤代ゼミは、先月25日にふるさとしまね定住財団との共催で「地元に帰る帰らない会議」を開催した。地方出身者を集めて、働く場所や地元の魅力について語り合った一日。開催のきっかけは今年の2月に島根県で行ったゼミ合宿だった。
松江や隠岐を巡り、島根で活躍している人たちを取材。彼らは私たちが漠然と考えていた「地方には何もない」という考え方にとらわれず、自由に働いていた。「将来働く場所で悩んでいる地方出身の人達にも、この島根の人たちのことを伝えたい」こうして私達はイベントを開催することを決意した。
ふるさとしまね定住財団の協力もあり、当日は30名近くの参加者が集まった。会場となった移住交流情報ガーデン(東京都中央区)は地方出身の若者で一杯になった。
イベントの前半は、ゲストの三浦大紀(みうらひろき)さんと、田中輝美(たなかてるみ)さんの二名による講演だ。三浦さんは島根で広告代理や商品開発の仕事を請け負う企画会社、シマネプロモーションの代表取締役社長。田中さんは島根を拠点に島根の面白さを発信しているローカルジャーナリストだ。
何もないと思われがちな地元にも、目を凝らしてみるといろんなものがある。大事なのは自分が何をしたいか、何ができるのかを考えるということ。参加者だけでなく、イベントを運営していた藤代ゼミ生や定住財団の人達もゲストの話に真剣に耳を傾けていた。
講演の後はグループに分かれ、参加者の地元の魅力やエピソードをそれぞれ出し合った。ポストイットに地元の魅力を書いて、話し合いながら模造紙に貼っていく。豊かな自然、人の雰囲気、有名人に食べ物に歴史と、色々な魅力が出てきた。「これって何?」、「どんな思い出があったの?」と話していくうちにまた新しい魅力が見つかる。発表の時間が来るころには、模造紙は地元の魅力で一杯になっていた。
ワークの最後には、見つかった魅力を全体で共有。「登下校の帰りにカキを採って食べたり、田んぼで遊んだ」、「東京では感じることのできない田舎のにおいが好きだった」といったエピソードが語られた。その時の情景が浮かび上がってくるかのような話しから、発表者の地元に対する思いが伝わってくる。なんとなく「いいな」と思えるような温かさを感じた。
イベント後、参加者から「違う地元を知れてよかった」、「自分は地元のことを何も知らないんだなと思った」という感想が。色々な地方の人と話すことが、地元に対する新しい発見に繋がったのだ。
何もない地元にだってなんでもある。無いものは作ればいい。大事なのは自分がどこで何をしたいかということだ。将来働く場所を考える時に、どうかもう一度地元を見つめ直してほしい。きっと新しい発見があるはずだ。
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