アクアソーシャルフェスが始まったのは2012年3月からで、それ以来4年間続いてきた。アクアという車名から「水」をテーマに選び、各地域の川・湖・海の保全活動を行っている。これまでに全国47都道府県で397回(15年8月1日時点)行われてきた。
活動内容は多岐に渡る。清掃活動をしている三重県松阪市の松名瀬海岸には、伊勢湾最大級の干潟があり、海浜植物や鳥類の憩いの場だ。しかし、潮干狩りや海水浴でにぎわい、ポイ捨てされるゴミが増え、環境が悪化し、生態系が脅かされていることを受け、清掃活動を実施している。
そのほかにも、熊本県では、県指定希少野生動物の「アカウミガメ」の産卵期に合わせて海岸清掃をしたり、福井県ではコウノトリとともに暮らせる環境を目指して、無農薬の米作り体験をした。
8月1日に長野(魚多し 諏訪の海を取り戻そう!)・奈良(きれいな吉野川を未来に残そう)・愛媛(西条の“豊饒の海”を感じる)で行われたプログラムで、累計の参加者数は4万256人を記録した。6割以上が30代以下の若者たちだ。
実は、この活動は、同社のCSR(企業の社会的責任)活動ではない。実験型のマーケティング活動として取り組んでいる。
この活動では、トヨタマーケティングジャパンが各地のNPO団体をはじめとした活動団体と協働し、それぞれの地域でプログラムを企画している。その取り組みを発信していくため、各地の新聞社とも手を組んだ。
活動には、地域の販売店スタッフも参加するが、アクアの宣伝は最小限にとどめている。一般からボランティアとして集まった若者等の参加者と一緒になって活動をし、受付や駐車場整理など運営スタッフの一員として働くのみだ。
同社では、この取り組みを「共成長マーケティング」と名付けている。共成長マーケティングについて、以前に同社の折戸弘一マーケティングディレクターは、オルタナ編集部の取材で、「企業・社会・個人の3者が共に成長するという関係性で結ばれるマーケティング概念」と説明した。
企業にとっては、「ブランド理解の促進」になり、社会にとっては、「環境保護」となり、個人にとっては、「楽しさ」を生んでいる。従来のマーケティングのように、一方から「提供する」のではなく、3者でwin-winの関係を結ぶことが狙いだ。
参加者の中には、水辺の保全活動に初めて参加する者も多く、アンケートでは、「地域への関心が高まった」と答えた人が9割を占め、72%がアクアへの共感を示した。このキャンペーンは2013年、カンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバルで金賞を受賞した。
この結果を受け、同社プロモーション室の大道康彦グループマネージャーは、「マーケティングに社会性の要素を入れた中長期的な取り組みは、今後の宣伝の潮流になっていくはず」と話した。「地域ごとにエンゲージを強めていき、地域に根付いた会社になることを目指している」。
■「企業が動けば社会が変わる」