「レジ袋の削減のため、まずは某コンビニエンスストアでの売上が日本トップである創価大学でのレジ袋削減のため、レジ袋を使用しなかった学生へポイントを付与し、そのポイントを使えるように学食と提携する」「学生の気候変動への意識を高めるためSNSを活用する」「早稲田大学で模擬COPを開き、学生から環境意識を変えていくことで最終的には環境学部の開設に漕ぎ着け、早稲田大学を環境教育機関にする」「企業のCSR活動を促進するためにまずCSR活動についての学生の認知度を上げる活動をしていく」というものだ。

4つの案はどれもバラバラな案に見えるが、注目していただきたいのは、どの案も自分たちの足元から環境意識を変えていこうとしている点である。学生にできることは確かに多くはないかもしれないが、学生が一丸となればその力は目を見張るものとなるのだ。

ソーシャルムーブメントを起こすための方法について参加者でアイデアをだした

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■「あなたにとっての模擬COP21の成果は何ですか」
「今回の模擬COP21の成果は議定書だけではありません。その成果はあなたたち一人一人がどのようにこの模擬COP21を解釈するかによります。その解釈はあなたたちに任せます」筆者にとって印象的だったのは、今回の会議の議長を務めたパリ政治学院2年の安田クリスチーナさんの言葉だ。確かに、同じことをしていても、それぞれの参加者で思うところは違うはずだ。そこで今回は参加者に「あなたにとっての模擬COP21の成果とは何ですか」という質問をぶつけてみた。

(1)「ひとつひとつの文言の裏にある苦労を学んだこと」
今回の模擬COP21には国際交渉の場での合意作りを体験したいという思いで参加した女子学生は言う。実際に本会議では、国際交渉の場での合意作りの体験に加え、実際自分たちが作った議定書におけるひとつひとつの文言の裏にある相当な苦労を経験し、実際のCOP交渉がなかなか進まない理由も理解できたと話したくれた。

彼女は、CYJ(Climate Youth Japan)のメンバーである。これからも、日本の若者の環境意識を変えるために活動してくれるだろう。

(2)「私がいないと届かない声があることを知った」
こう話すのは、前回の記事で「模擬」ならではの試みという紹介をした「non state entities」の中の「土壌」として会議に参加した女子学生だ。「国の代表と異なり、立場自体がはっきりしないnon state entitiesだが、会議が進むに連れて土壌の立場から意見を言いたいと思うことがあった。この声は国同士の交渉では上がらない声であるから、私が気候変動の直接の被害者として発言しないと届かない声があるのだと実感した」と言う。

(3)「知識を得て、自分の興味のあることについて深く話し合うことの楽しみを知った」
ロシアの市民社会代表として参加した男子学生は言う。「まず知識が付いた。そして、環境問題に関して興味を持つ学生が周りになかなかいない中で、今回の模擬COPでは自分の興味のある環境分野に対して同じく関心をもつ人たちとその分野について深い議論をすることができて、その面白さを知った」また、「市民社会」という立場で参加したことで感じた点として、「市民社会としてはやはり環境問題が改善されることを願っている。そのような意味で、どの国でも市民社会のレベルでは環境問題に関する意見の相違はあまり見られないのかなという風に感じた」

(4)「環境について、政治や経済の観点からも学べた」
これは、アルゼンチン政府代表として参加した男子学生の意見だ。「環境問題を勉強するとき、背景にある政治や経済状況を鑑みないと、ただ単に『地球規模で環境問題を考えよう』というような机上の空論に止まってしまうが、利権が絡み合う現状を学びながら環境問題を考えると、なぜ今環境問題についての取り組みが前進していないのかを理解することができた」と言う。

このようにどの参加者も、自分なりの「成果」を達成感に満ちた目で語り、本会議が文字通り成功を収めたことを物語る。
さらに、このような参加者をまとめていた議長の口からも、次のような言葉が語られた。

(5)「『世界を変えていく』というビジョンの下で、参加者に『考える機会』を与えることができた」
達成感を漂わせる表情で語るのは、先述の安田さん。「会議が最終日に向かうにつれて、参加者の目の輝きが増してきたことを実感した。日本の学生を揺るがすことができたかなと感じた。環境問題は生活の全てに関わる問題であるという意識を強く持ってほしい」

また、彼女は環境問題だけでなく日本人の政治的姿勢にも言及した。「日本人は何事にも批判的に『考える』ということに対してまだまだ意識が薄いと思う。また、日本には政治軽視ともいえる風潮もあるが、どのくらい政治が生活を拘束しているかを知ってほしい」とも話していた。そして、今回は環境省の方もいらっしゃっていて、学生どうしではなく省庁とのつながりができたことも収穫の一つであった、とも語り、模擬COP21からの動きをさらに大きくしたいという姿勢がここでも伺われた。

多様な参加者に多様な「成果」。今回の模擬COP21が、参加者全員の望む通り社会的な一大ムーブメントになれば、日本はまた一歩環境先進国としての地位確立に一歩近づくのかもしれない。

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