自分たちの力で社会を良くしようとする人々が、NPO革命を起こした。この20年の間に、行政や企業に頼らず、自らの力で一歩一歩変えていく人たちが現れた。本書『新市民伝 NPOを担う人々』(講談社エディトリアル)ではそういった市民を「新市民」と呼ぶ。日本経済では、失われた20年と言うが、NPOにとっては多くの「新市民」が登場する成長の20年だった。(辻 陽一郎)

NPO成長の20年の軌跡が本書には記されている

NPO成長の20年の軌跡が本書には記されている

『新市民伝 NPOを担う人々』(講談社エディトリアル)には、10年以上活動を続ける様々な分野の新市民が登場する。決して特別な人たちではない。ふつうの会社員や主婦、学生がふとしたきっかけから、社会を変える行動を起こした。阪神・淡路大震災のとき、当時フィリピン人向けレンタルビデオ店で働いていた田村太郎さん(ダイバーシティ研究所代表理事)は、外国人の友人も被災したことを知る。

電話をすると、彼は避難情報を知らなかった。日本語が分からない外国人には震災の情報がほとんど届いていなかった。すぐに他言語の電話相談を開始した。また、小学校教員だった奥地圭子(東京シューレ理事長)さんは、自分の子どもが不登校になり、不登校は特別なことではないと知った。安心していられる学校外の居場所が必要と感じ、フリースクールを始めた。

一昔前は、問題が起きたら行政に頼ることが当たり前だった。だが、今は違う。自ら行動して社会を変えていくことができる。本書に登場する65人はその先駆者だ。課題先進国と言われる日本では、これからも行政・企業とは異なる役割を果たす、NPOの必要性が増してくる。子ども・まちづくり・福祉・環境・海外支援・市民保護・NPO支援とさまざまなジャンルの新市民のなかから、自分事に近い活動が見つかるかもしれない。

65人の新市民以外にも、政治家や企業人、スポーツ選手としてNPOと関わり合う人のエピソードも掲載。また、NPO法人の仕組みや歴史、公益法人制度など制度面についての章もあり、幅広い目的で読むことができる。

本書は、朝日新聞記者の辻陽明が長期連載したコラム『新市民伝』がベースになっている(2005-07年、朝日新聞土曜版be)。コラムを単行本の形で具現化するために、10年前の記事に2015年の活動を再取材して採録した。

『新市民伝 NPOを担う人々』(講談社エディトリアル)

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