生き方・働き方を真剣に考える人たちの間で地方就活が活気づいている。地元に戻る「Uターン」に加え、「Iターン」、「Jターン」と地方へ移住するパターンも増加。東京一極集中から地方創生へと、官民が協力し地方への就職を支援する取り組みも始まった。(辻 陽一郎)

講師が地方就活のポイントについて伝える

講師が地方就活のポイントについて伝える

■地方就活をサポートするLO活セミナー

地方就活を支援するために、厚生労働省は、地方人材還流促進事業、通称「LO活(Local+就活)プロジェクト」をスタートした。地方就職に特化した情報サイト「LO活」や、定期的にエリア別・テーマ別で地方就活に関するセミナーを開いている。1月28日には、東京にて、「北海道・東北エリア」の就職を検討する若者を対象にした、「地域別UIJターン交流会」を行い、10人ほどが集まった。

大都市から地方へ移住する地方就職には3つのパターンがある。地元に戻る「Uターン」、大都市出身者が地方へ移住する「Iターン」、大都市から地元の近くの地方都市へ移住する「Jターン」だ。

地方就活を希望する一方、情報の少なさなど不安要素もある。3年経たずに辞めて東京に戻ってくる人もいる。セミナーでは、講師や、北海道・東北エリアの地方自治体の担当者が地方就活についてアドバイスを行った。

■自分・生き方・働き方の価値観をマッチングすること

地方就活では、企業選びの前にやっておくことがある。講師は、「『自分の大切にしたい価値観』、『地方で暮らす価値』、『地方で働く価値』、地方就活では3つの価値観を深めることが重要」と言う。

今回参加した10人は全員が学生。彼/彼女らは地方で暮らしたことがあっても、働いた経験はない。「例えば、『お金を稼ぎたい』のか、『ワークライフバランスを重視したい』のか。3つの価値観を擦り合わせて『自分が大事にしたい価値観』は何か考えてみることが大切」。

都市に住む学生にとって地方企業の情報を得るのは一苦労。多くの質問が出た

都市に住む学生にとって地方企業の情報を得るのは一苦労。多くの質問が出た

■企業選びは、土地調べ

地方在住者が地元で就職する場合、比較的簡単に、現地で生の情報を手に入れることができるが、都市に住む学生にとってはなかなか難しい。今回参加した「北海道 経済部 労働政策局 人材育成課」主査の中村拓司さんは、「地方の中小企業には、学生1人を採用するために多額のコストをかけられないため、大手就活情報サイトには載っていない企業もある」と前置き。

セミナーでは、地方の企業を探すコツは、その土地の風土や産業から調べてみることだという。例えば、東北エリアは、シリコンロードと呼ばれ、製造業界で有名な企業が集結している。東日本大震災のとき、東北エリアの産業がストップしたことで、部品が届かずアメリカの車製造ラインが止まったと言われている。このように東北には、グローバルに活躍するメーカーがあるのだ。

地方には、独特な風土や伝統を活かして優れた製品を作る企業が豊富にある。例えば、経済産業省は2015年、北海道のチーズや秋田のしょっつるなど日本が誇るべき優れた地方産品を選定し、世界に広く伝えていくプロジェクト「The Wonder 500」という事業をスタートした。こうした日本らしさを活かした地場産業も今後注目を集める企業だ。大手情報サイトではなく、その土地のことを調べてみることで思いもよらない企業と巡り合うだろう。

北海道から来た中村さん、地元企業の良さを学生に伝える

北海道から来た中村さん、地元企業の良さを学生に伝える

■「東京を経験していることが強さになる」

セミナー終了後の交流会では、学生から「地元出身者のほうが採用されやすいのでは」という質問があった。宮城県の担当者は、「地元の大学出身者ばかりの企業もあるが、反対に東京の大学に通っている人を採用したいと考えている企業もある。東京を経験していることが強さになる」と語った。

千葉県出身で、地方への就職を考えている東京国際大学国際関係学部の3年生の男子大学生は、「これからの生き方を考えると、地方は自然がたくさんあり、生活面の豊かさも魅力的だと感じている。ただ、東京にも、外国人が多く多様性にあふれているという魅力があるのではないかと思う」と迷いながらも地方就活を視野に入れている。

地方創生の予算は約2兆円。多くの地方自治体も若者に来てもらうための制度を整えている。家と仕事をセットで用意している自治体もあり、今後、地方就活への流れは加速していくことが予測される。地方企業の情報収集の仕方は、都市部の企業のそれとは異なるため、このようなセミナーの需要は増していくだろう。東京や大阪で定期的に実施しているので、興味がある人は「LO活」サイトでチェックすることを勧めたい。

講師は「自分の大切にしたい価値観を掘り下げ、どうして地方就職を希望するのかを伝えられるようになることが大切」と地方就活で成功するためのポイントを伝えた。

情報サイト「LO活」はこちら

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