経済メディア「NewsPicks」などを運営するユーザベース(東京・渋谷)は4月8日、「革新的な女性の働き方」をテーマに、社内セミナーを開いた。同セミナーは、同社が昨年立ち上げたCSRチームが主催したもので、社内の働き方を多様化することが目的。ゲストにはNPO代表者、企業経営者を招いた。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
同セミナーで登壇したのは、児童労働問題の解決に取り組む認定NPO法人ACE(エース、東京・台東)を立ち上げた岩附由香さんとキャリア女性向けのマッチングサービスを運営するWaris(ワリス、東京・港)の代表取締役・河京子さん。
■「成長できる組織に」
ACEが立ち上がったのは1997年。岩附さんが大学院生のときに、友人らと一緒に立ち上げた。同団体では、インドとガーナで児童労働問題に取り組んでいる。アドボカシ―活動やセミナーでの啓発を行い、これまでに1200人の子どもたちを児童労働から解放してきた。
現在、同団体では13人の有給スタッフが働き、2014年度の売上は8100万円。現在、岩附さんは2児の母で、子どもを保育園まで迎えに行くため18時には帰っている。だが、2005年までは「夜遅くまで働き、休みは月に1回あるかないかだった」という。
2006年に結婚をし、週末のイベントの出勤なども少しずつ制限するようになるが、2010年頃まで事務局の業務は多忙を極めた。組織内のコミュニケーションの質が低下し、中心的なスタッフから「このままでは、ACEで働き続けられないかも」と打ち明けられたこともあったという。
岩附さんは子どもができた2012年に育児休暇を取得したが、この年を機に、就業規則を変えた。残業を申請・許可制にすること、業務全体の優先順位を決めるなどし、夜遅くまで働くこと自体は改善されていった。
加えて、組織全体のコミュニケーションの改善のためピーター・M・センゲの『学習する組織—―システム思考で未来を創造する』の考え方を踏まえた研修を全スタッフ参加で実施し、ありたい組織のビジョンを共有した。
研修後、スタッフの就労観を把握するためワークプランシートを配布して、面接も定期的に行うようになった。岩附さんは働く上で、「タスクを迅速にこなしていくこと」を重点的に考える結果主義の面があったが、スタッフの中には、関係性を築く「プロセス」を重視する人がいることが分かった。
こうして、今まで向かい合わなかったスタッフのニーズをくみ取り、成長できる組織になるため環境を整えていった。2015年第2子を出産、2回目の育児休暇復帰後の2015年8月の決算では、過去最高の収入を記録した。
女性が結婚しても働き続けるには、パートナー選びも重要とし、マーケティングの発想で理想の相手を見つけた実体験も話した。
■女性リーダー増やし、職場に多様性
ユーザベースでは、2015年1月に社内有志でCSRチームを立ち上げた。これまでに、社内向けのイベントにNPOを呼んで交流会を開いたり、経済メディア「NewsPicks」の広告枠をNPOに無償で提供することなどを行ってきた。
同社にCSRの重要性を呼びかけているのは、米国と日本のハーフのエリーシャ・ギアーズさん。エリーシャさんは難民支援を行う国際NGOのボランティア活動をするなど、普段からソーシャルな意識は高かった。
エリーシャさんは去年から草の根的な活動を続け、今年から正式にCSRチームを立ち上げた。社内でCSRを浸透させていくために、社員にアンケートを取り、関心のある社会的課題をまとめた。
その結果、多様性とES(従業員満足)への関心度が高く、今回の社内セミナーを企画した。セミナーには、梅田優祐・共同経営者をはじめ経営陣も多く出席した。4月15日には、同社の新野良介・共同経営者を司会に、女性リーダーをどう増やすかについて社内でディスカッションを行う予定だ。
エリーシャさんは、「ユーザベースが世界的な企業になるためには、性別、民族性、性的指向や才能など、あらゆる意味で多様性を高めていくことが求められる」と言う。「第一歩として今回のセミナーを企画した。ユーザベースには現場で活躍している女性メンバーは多いですが、管理職以上となると、女性の数はかなり少ない。才能豊かな女性リーダーを増やすことで、社内外の多くの女性たちに一歩を踏み出す勇気を与えていきたい」。今後CSRチームを通して多様性などの重点課題を解決していく。
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