今年の2月にオープンした、「せんだい3.11メモリアル交流館」を訪れた。震災の脅威と復興への取り組みを後世に残すために作られた施設で、交流スペースや展示室などがある。展示室には、震災前や震災当時の写真も飾られているが、小さな窓からのぞく仕組みになっているなど、地元市民の気持ちを汲んだ配慮がいたるところにされている。(学生による被災地支援のための市民メディアプロジェクト支局=藤井 亜美・武蔵大学メディア社会学科3年)

2階展示室

せんだい3.11メモリアル交流館の2階展示室

被災時の現場をのぞける窓

窓をのぞくと被災直後の映像や津波でひしゃげた看板がある

「せんだい3.11メモリアル交流館」は、震災や地域の記憶を語り継いでいくための場所。交流スペースや展示室、スタジオなどがある。地下鉄東西線を使えば仙台駅から荒井駅行きで13分ほどに位置する。駅直結で、気軽に立ち寄れる。

交流館は3階建てで、1階は立体地図やスライド、関連図書などが置かれており、仙台市東部沿岸地域の情報を知ることができる交流スペースとなっている。2階は展示室、スタジオなどがある。展示室は震災被害や復旧・復興の状況などを伝える常設展示と、東部沿岸地域の暮らし・記憶など様々な視点から震災を伝える企画展示で構成されている。スタジオは各種ワークショップなどに使用するほか、震災や地域の記憶を伝えていく市民活動の場として活用されている。3階は屋上庭園となっており、憩いの場として開放されている。

2011年11月に「仙台市震災復興計画」が策定された。この復興計画では、「100万人の復興プロジェクト」の一つとして、震災の脅威と復興への取り組みを後世に継承するための、震災メモリアルプロジェクトが定められている。「せんだい3.11メモリアル交流館」もこの事業の一環として進められた。

仙台市では、中心部と沿岸部でそれぞれの場所の特性を生かしながら事業を展開することが有効であると考え、沿岸部では荒井が拠点地として選定された。中心部のプロジェクトに先駆け、一足先に「せんだい3.11メモリアル交流館」が開設された。今後は中心部と沿岸部の2つを拠点に、それぞれの特性を生かしながら、また連携しながら、震災の記憶と経験を、未来や世界へとつないでいくこと目指している。

仙台市まちづくり政策局防災環境都市推進室メモリアル事業担当の松村光さんは、「ここは単なるミュージアム(展示館)ではない。震災の事実を伝えることも大切であるが、あくまで訪れる人たちの交流の場であり、人々の思いや記憶を伝えていくことが重要である」と述べた。

話を聞いた、柳谷理紗さん(左)松村光さん(右)

話を聞いた、柳谷理紗さん(左)松村光さん(右)

松村さんが言うように、館内には、来館者の沿岸部の思い出をイラストにしたマップが展示されていたり、訪れた人たちが感想をかけるノートが置いてあったりと交流できる場が多くある。「この交流館は、外部の人間だけでなく地元の人たちにも利用してもらうために、あまり直接的に津波を見せるようにはしていない」と松村さん。

地元の子どもたちとつくりあげたマップ

沿岸部での思い出を来館者が付箋で書き込むことができ、それをもとにイラストを追加していったマップ

展示室には、震災前の写真も多く飾られており、また、震災直後の映像や津波で大きくひしゃげた看板が置かれたスペースは、見たい人だけが小さな窓からのぞく仕組みになっている。地元民の気持ちを汲んだ配慮がいたるところにされている。

震災から5年が経ち、ようやくこういった記憶を伝える場ができた。今後この「せんだい3.11メモリアル交流館」が、震災の記憶、人々の思いを風化させないための拠点として活躍してくれることを心から願う。

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