九州特化型のクラウドファンディングサイト「LINKSTART」、SNSで話題を呼んだ「軍艦島アーカイブ」。西日本新聞メディアラボは、九州最大の発行部数を誇る西日本新聞のデジタル事業を担うだけでなく、様々なデジタル事業に取り組む。同社の吉村康裕・代表取締役社長に話を聞いた。(武蔵大学松本ゼミ支局=桐山さやか・武蔵大学社会学部メディア社会学科2年)  

吉村康裕・西日本新聞メディアラボ代表取締役社長 

吉村康裕・西日本新聞メディアラボ代表取締役社長 

西日本新聞メディアラボは1993年にFM九州の番組制作会社である匠塾として立ち上がった。2000年に西日本新聞社がホームページの更新作業を業務委託したことをきっかけに2社の関係は始まった。

2014年に西日本新聞社社長直轄の「社長室デジタルプロジェクト」として、6名がメディアラボの前身であるメディアプラネットに出向、新たにデジタルビジネス部を発足した。

2015年に老舗である西日本新聞社の名前を掲げなおし新規顧客を獲得するために社名を西日本新聞メディアラボに変更した。コンテンツ利用契約を締結し西日本新聞社のデジタル事業はメディアラボに移管された。  
 
メディアラボが行う新たなデジタル事業の一つにクラウドソーシングがある。そのうちの一つが「九州お仕事モール」である。

これは業界最大級のランサーズと提携して行っている地方特化型クラウドソーシングサイトである。九州在住のワーカーへ、首都圏を中心とする九州外の仕事を提供するというもので、家に居ながらも仕事をすることができる。

特に8万人のライター会員を生かしたWEBライティング事業は今年度の収益から今後伸びる見込みがあると吉村さんは語った。

「総務省ふるさとテレワーク実証事業」というものもクラウドソーシングを利用したものである。これは2015年度に行われた、テレワークとクラウドソーシングによる移住定住促進事業である。

福岡県の西海岸といわれる糸島市にIT系の人々が移住してきている。その糸島市のコワーキングスペースを使って移住定住のモデル地区を目指し、その一つの働き方としてクラウドソーシングという仕組みを使うことで会社に行かずとも遠隔地で仕事をするという取り組みを総務省から補助金をもらって実施した。吉村さんはこの事業について「本年度もこの事業には参画していきたい」と話した。   

西日本新聞メディアラボはこの他にも「軍艦島アーカイブス」や九州特化型のクラウドファンディングサイトである「LINKSTART」も運営している。2015年に軍艦島世界遺産登録に先駆けて2014年7月に撮影した映像をFace bookとYoutubeで公開した。

それぞれ約3万いいねと約40万回再生の反応があり、特に海外からの反応が多かった。そこで2015年4月に多言語対応したスペシャルサイトを開設した。それが「軍艦島アーカイブス」である。

サイトの閲覧数もよかったものの広告のないサイトだったため収入はなかった。そこで「LINKSTART」を活用して資金を集め、ブルーレイディスクを制作・販売した。このクラウドファンディングについて吉村さんは「新聞社がやる限りは地域の課題や人々の役に立つという視点でプロジェクトを考える」と語った。  
 
このように西日本新聞メディアラボでは、それまでの番組制作会社としてのwebの映像制作や西日本新聞社のデジタル事業だけでなく「新聞社の中にいてはできなかった事業を外にだしして、スピーディーにやる」という強みを活かして多くの新たな事業に取り組んでいる。

様々なデジタル事業の可能性を見つけ、素早く実行することが地域の方々から必要とされる新たな付加価値の獲得につながるのではないだろうか。

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