徳島で若者とNPOをつなげる団体がある。徳島市市民活力開発センターだ。「習うより慣れろ」の精神で若者とNPOをつなげている。話を聞いた。(武蔵大学松本ゼミ支局=渡部 史哉・武蔵大学社会学部メディア社会学科2年)
前回筆者が執筆した、〜”VS東京”掲げる徳島県庁〜に引き続いて、今回は NPO団体新町川を守る会が運営する、徳島市市民活力開発センター(=以下、市活センター)に取材訪問した。
HPによると市活センターでは、各NPO団体に場所や機材、関連情報の提供などのサポート、広報誌PASSPORTの発行、地域での各種講座やイベントを企画しているということが分かる。
しかし、NPO団体の支援をどのように行っているのか。それは何の意義・目的があるのだろうか。これらの疑問を解消するため、実際に足を運んでみた。
ボーダーの服装に、メガネ。アゴのヒゲ・・・若く、知的で怖そうな出で立ちのこの人物。岸田氏は大学時代、バンド活動に励んでおり、それ以外のことに脇目もふらなかったそうだ。
そんな音楽一色の生活を送っていたとある日、知り合いの祁答院弘智氏(リレイション代表)に誘われ、強制的に地域のボランティア活動に参加させられた。
嫌々参加したが、活動を通して、「人と触れ合う」ことの楽しさ・素晴らしさを肌で感じた。この時の体験が原動力となり、NPO団体の後方支援を行う市活センターの代表を務めるに至った。
岸田さんは現在、「グリーンバード」という全国的なボランティア組織の、徳島チームの支援に力を入れている。グリーンバードは、町の清掃活動を行う団体。一般からも参加を募集し、老若男女が集まる。
岸田氏はどんな支援を心がけているか。岸田氏は迷いなく、はっきりとした口取り「若者の後押し」と答える。
なぜ若者支援にこだわるのか。ボランティア活動や地域活動に携わる多くの人は、NPO関係者か高齢者だ。
レギュラーメンバーがある程度確定しており、その輪の中に若い学生が入ってみても、やる作業がなく、コミュニケーションも取れず、楽しいことがない、いわば本当のタダ働きのような状態になるという。
よって、活動に若者が近寄り難くなり、若者の従事者がいない。その状況を打開すべく、岸田氏は、若者たちに積極的に呼びかけたり、話しかける。
7月には浴衣でお掃除などの一風変わった工夫を凝らして、「若者が快適に参加しやすい雰囲気作り」をしているのである。
その雰囲気作りを行う上で心がけていることを聞いてみた。「こうしろ!と言葉で言い聞かせるのではなく、自分自身の体で感じさせることかな。口でなく態度で示すことかな」と言う。
若者に限らずだが、人は他人の命令口調や偉そうな物言いには心は響かないもの。けれど、自分が実際に体験することで、心境は容易く、何かしら変わる。
要は、百聞は一見にしかず。習うより慣れろ――ということだろう。また、「活動に参加する若者は社会・地域に貢献したいというよりも、何かやり遂げたい・残したいという動機が多い」と話す。
そのような明らかな目標がない若者に対して、機会や課題を与えるが、そこからは若者自身に主体的に考えさせ、解決させ、最終的にやって良かったと実感してもらい、育て伸ばす。このような支援のスタンスを貫き通すことが岸田氏のやり方だ。
最後に岸田氏は若者に向けて語る。「人生は人次第である」と。これは、学生時代、色々な活動をし、人との出会いを通して新たな価値観が芽生え、より幅広い可能性が生まれるということだ。
「ある機会が巡ってきた時、『やる』『やらない』の二つの選択肢がある。ぜひ『やる』を選んでほしい」と話す。かつて知り合いに誘われて、現在が在るように、今度は誘う側に立ち、これからも岸田氏は若者の後押しをしていく。
今回、『地方』を盛り上げ、より良くしていこうとする徳島編①の加藤貴弘氏・徳島編②の岸田侑氏との対話を通して、それぞれの価値観やモノの捉え方、地域への思いを実感した。
都会と比べると、地方は色々なものが不足しているかもしれない。しかし、何もない状態「0」から「1」を生みだす小さな過程が積み重なることで、いつかは「100」になる。そんな兆しを目撃した徳島取材であった。
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