中村雅人さんは世界100カ国を旅した経験を伝えるため、世界一周学校を立ち上げる。この学校は移動式で、中村さんがキャンピングカーに乗りながら全国を周る。「肩書や地位に縛られることなく、自分らしい生き方を伝えたい」と話す。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

世界100カ国を周った中村さん

世界100カ国を周った中村さん

中村さんは神奈川県生まれの29歳。2013年から2年半をかけて100カ国を周った。その旅では、サハラ砂漠250キロを走るマラソンに出場したり、空の景色が地面に映るウユニ塩湖の上に立ったりと世界の大自然を目にした。

世界的観光名所のウユニ塩湖で

世界的観光名所のウユニ塩湖で

灼熱のマグマにも接近した

灼熱のマグマにも接近した

古代遺跡も訪れた

古代遺跡も訪れた

そのなかで、多くの人とも出会った。この学校では、中村さんが旅で出会った「自分らしく生きている人」を講師に招き授業を行う。その数は30人ほど。

竹あかりで地域活性化を行うアーティストや中国の植林やフィリピンの台風被害の復興支援活動を行うNPO代表らがいる。

■「死ぬときに幸せか」

中村さんが世界一周に出た理由は、「自分の可能性をみたいと思ったから」。中村さんは2010年3月に大学を卒業後、不動産会社に就職した。3年働き、仕事にもやりがいを感じ、職場の関係や収入も不満はなかった。

だが、「自分のやりたいことができているのか。死ぬときに幸せになれるのか」という違和感はあった。このまま仕事を続けることと、旅に出ることを天秤にかけたら、「あとになって、あのときに旅に出ておけばよかったと思い返したくない」と思い、旅立つことを決めた。

中村さんは大学生時代に世界青年の船やフィリピン留学を経験しており、「もっと世界を見たい」と、異国の文化に魅力を感じていた。その思いは日本に帰国し、就職しても消えることはなかった。

■8月から日本一周

世界一周には出たが、当初は不安もあった。肩書がなくなり、収入もなくなった。「これまでは『大学名』だったり『企業名』など、所属している組織に守られていた。しかし、何者でもなくなり、自分自身が試されるようになった」。

旅を通して、このアイデンティティについて深く学んだ。特にスペインの巡礼の道として知られる「カミーノ・デ・サンティアゴ」を歩いていたときにそれを強く意識したという。

カミーノの道中で出会った仲間と

カミーノの道中で出会った仲間と

約800キロに及ぶその道中、弁護士や俳優、先生、大学生など世界各国からさまざまな人と交流した。彼/彼女らからは、所属している組織や仕事内容ではなく、「ぼく個人についてたずねられることが多かった」。

話すことで、仕事をしていないことに負い目を感じていた自分から脱却し、「自分の今を肯定できるようになった」と振り返る。

世界一周学校は、この経験をもとに企画した。「自分に自信を持てなく、やりたいことができていない人の背中を押してあげたい」と意気込む。クラウドファンディング「Makuake(マクアケ)」で立ち上げ資金を募ったところ、148人から177万5000円が集まった。スタートは8月から。都内公園を皮切りに、全国47都道府県を半年から1年をかけてキャンピングカーで周る。

・中村さんのブログはこちら

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