お盆に入って熊本へ観光に行こうと考えている人はいると思うが、しかし、本当に観光へ行って良いのかが外からでは分からない。そして現地へ行った体験談も聞くことがない。そのようななか、東京の大学に通う3人が熊本へ行き、現地で災害ボランティアに参加して観光をしてきた。シリーズ「いま、熊本へ行へ」として、今回は3人目の体験記を紹介する。
※1人目の体験記はこちら→「災害ボランティア編(明治大学2年=木村)」
※2人目の体験記はこちら→「熊本は前向きになれる場所(東洋大学4年=森田)」
いきなりですが、熊本にはたくさんの魅力があります。海に山に平野に水に食べ物に…。素晴らしいものがこんなにもたくさんあることを私は今まで知りませんでした。
そこで私は熊本へ行って体験した観光について書きたいと思います。読んでいただいたみなさんは絶対に「熊本へ行きたい」と思います。行けば私のように確実に熊本のファンになりますから。この体験談がそのきっかけになれば嬉しいです(武蔵野大学経済学部1年 京藤はるな/神奈川県在住)
トリプルボランティア
私は今回「トリプルボランティア」で熊本へ行きました。トリプルボランティアについては、オルタナSの記事が丁寧に書かれています。
※トリプルボランティアとは「災害ボランティア」「観光ボランティア」「伝達ボランティア」の3つを行うもの。「災害ボランティア」はガレキ撤去や被災住宅の支援といった多くの人が知っているボランティア活動だが、「観光ボランティア」とはその名の通り観光することを指す。被災地や直接的な被害は受けていないものの風評や自粛によって辛い状況になっている場所へ観光として赴くものだ。しかし、場合によっては宿泊施設を被災者や復興事業者が利用している場合もある。そうした時は離れた場所に宿泊し、そこから観光地へ行く。もう一つの「伝達ボランティア」とは、被災地で見たことを個人が伝達する支援活動だ。SNS時代に広まったもので、発災時の被災地情報や物資支援といったことだけではなく、その後も長期に渡って発信しようというものである。これが広まった背景には新聞やTVなどの報道はどうしても瞬間的な発信になりがちで、被害の酷い時にだけ報道しやすいという短所がある。しかし、復興に向けて活動している人や、地域の細かい情報などは個人が発信すれば良い。人が人へ伝達することで被災地を支える。 (【熊本地震】これから必要なのは「トリプルボランティア」より)
私はこの4日間の滞在のなかで「災害ボランティア」にも参加しました。それについては一緒に行った木村勝君(明治大学2年)が体験記(災害ボランティア編)を書いています。また、伝達については森田栞さん(東洋大学4年)が書いています(熊本は前向きになれる場所)。そこで私からは観光について書きます。
熊本のために何かをしたいと思っている人はたくさんいると思いますが、しかし災害ボランティアはその日のニーズや天候によって参加できない場合があります。また、小さなお子さんがいたり、重いものを持つことが困難な方では参加を躊躇されると思います。そうした方にはぜひ「観光ボランティア=観光すること」がおススメです。
どうしても熊本へ行きたかった。
私は2011年に発生した東日本大震災の時は中学生でした。家が神奈川県の湘南にあり、海抜7m、学校が道路を挟んで海に近かったこともあって他人事には感じられませんでした。そして、それから2回ほど、岩手県の被災地へ行きました。全てが流され、家の基礎だけになった町を見て息を飲みました。自分の目で見なければわからないこと、TVを見て頭でわかったつもりでいても感じることはできないことがあることを強く知りました。それからは東北の沿岸部で花火大会を行うための募金活動などをしましたが、「何もできなかった。」という心残りがずっとありました。しかし、熊本震災が発生して、中学生の頃の自分よりいまの大学生の自分の方がやれることがあると思いました。そこで、今回熊本へ行ってきました。
<熊本でのスケジュール>
■1日目<出発、益城町・熊本市>
12:15 羽田空港 発
14:00 熊本空港 着
◆益城町、熊本城、熊本市内などを見る
18:30 ホテル到着
19:30 現地在住の方々と交流会
■2日目<災害ボランティア、現地大学生との交流>
07:00 熊本市災害ボランティアセンターで整理券を受取る
08:00 熊本市災害ボランティアセンターでボランティアの受付
◆被災された個人宅でのボランティア
16:00 ボランティア活動終了
17:30 東海大学熊本キャンパス 復興支援チーム「Vukki」と交流
◆その後、熊本の美味しいものをVukkiの方と食べに居酒屋へ
■3日目<阿蘇観光>
07:00 ホテル出発
10:00 ボランティアセンター着
◆この日は受付開始前に募集人数に達したことから参加できなくなる
◆阿蘇へ、途中、阿蘇ミルク牧場で遊ぶ
17:00 ホテル着
■4日目<阿蘇観光2日目、帰着>
10:00 ホテル出発
◆阿蘇神社、黒川温泉、道の駅
18:45 熊本 発
20:25 羽田 着
→→益城町へ→→
熊本空港に到着後、現地の新聞社の方の案内で益城町へ行きました。それは被災した現状を知り、新しく立ち上がった復興市場で買物をするためです。この日は雨が酷かったために主に車の中から現地を見たのですが、震源地の上ということもあって崩れている建物と崩れていない建物の差が大きいことに驚きました。崩れ方がとてもひどい家には、屋根が落ちて瓦礫だけとなっているところがあり、目の前の現実にただただ衝撃を受けました。
そして、ある程度片付けが進んでいる家とまだまだ瓦礫のままの家がありました。調査が終わっていないということからまだ片付けを始められていなかったり、被害が大きすぎるためにそもそも人が中に入ることができなくて、業者さんに頼むしかない家があることからこのように差があるようです。
→→「益城復興市場・屋台村」へ→→
益城復興市場・屋台村はテントで出来た市場です。建物の中に入ると、飲食店、お花屋さん、美容院までが入ってて、屋台村のオープン日だったこともあって多くの人で賑わっていました。
中に入ると美味しそうな唐揚げを販売しているお店を見つけました。そして注文。とても柔らかくてジューシーで美味しく、いくつでも食べられるほどでした。そして、アクセサリーを販売しているお店もあって。こちらで震災についてなどお聞きし、ささやかではありますが何か応援することはできないかと思って熊本メイドの素敵なデザインのイヤリングを購入させていただきました。
そして次に入ったお店では、熊本の特産物を販売していたのですが、アルバイトをされていた地元の大学4年生のみくさんとお話しました。みくさんのオススメは「熊本味千ラーメン」と「くまモン」のクッキーだそうです。味千ラーメンは熊本の有名ラーメン店の復興支援セットでお土産に購入される方も多いく、くまモンのクッキーは食べ終わった後にティッシュケースになるので、みくさんのお気に入りの商品とおっしゃっていました。
→→熊本城へ→→
益城町を後にした私たちはその後に熊本市内へ向かいます。まずは熊本のシンボルである熊本城へ行きました。駐車場に車を止め、そこから少し歩くと二の丸広場に出ます。これまではこちらから城に入ることができたそうですが、震災の影響でいまは入ることはできませんでした。
熊本城の中は至る所で石垣が崩れていました。しかし、この倒壊のなかからも発見があったそうです。倒壊した石垣の中から、観音菩提の絵が見つかりました。残念ながら私たちは時間がなかったので見ることができませんでしたが、観音菩薩は先祖供養の「板碑」で、加藤神社の境内に入ったお手洗いの近くに置いてあるそうです。熊本地震では失ったものはたくさんあると思いますが、こうした発見があったことに感動しました。
→→市中心部のアーケードへ→→
そして、熊本城を後にして、次に行ったのが市中心部のアーケードです。熊本城から歩いて行ける場所にあります。こちらには大手アパレルやドラックストア、外資系コスメといったファッション系、グルメ系などのお店が170店舗以上も連なり、私が思っていた以上の大賑わいでした。
ここは市内有数のショッピング街ですが、震災の被害はいくつも残っていました。アーケードを支える支柱が折れていたり、外から見る分には問題なさそうでも、壁に大きくヒビがお店など。震災後はしばらく営業できなかったお店も多かったそうですが、しかし、私が訪れた時には多くの店が再開してて、夜になっても賑わいは続いていました。
→→阿蘇へ→→
そして、私たちは阿蘇へ観光に行きました。とても楽しみにしていた場所です。ここへはレンタカーを借りて向かいました。写真は阿蘇で泊まったホテルから見た風景です。山や緑が多く、広大な平野が広がっていました。当日は天気が晴れてはいませんでしたが、涼しく霧のかかった風景がとても神秘的で、空気も綺麗で気持ちよかったです。
→→阿蘇ミルク牧場へ→→
熊本市から阿蘇へ向かう途中に大きな牧場がありました。名前は「阿蘇ミルク牧場」といい、お昼ご飯を食べていなかったこともあって入園しました。
入って最初に向かったのは「マザーズキッチン」というレストランです。こちらでお昼ご飯を食べることにしたのですが、私が注文したメニューは、メイン料理+ご飯、サラダ、デザートのビュッフェ+ドリンクバー、という豪華なもので、メインはハンバーグを選びました。
こちらのレストランは牧場の中にあることから新鮮な牛乳が並んでいて、牛乳があまり得意でない私もゴクゴク美味しくいただくことができました。
そして、デザートビュッフェもたくさんあって。既にお腹いっぱいでしたが、甘いものは別腹ということで全種類食べました。ケーキやフルーツなどさまざまなデザートがありましたが、なかでもバナナマフィンの美味しさと特産物のメロンのみずみずしさはなんとも言えない美味しさでした。
さて、ご飯を食べた後は園内を周りました。こちらにはヤギや羊がいて餌あげができます。そしてモルモットや犬とも触れ合えました。羊の鳴き声は低く、ヤギの鳴き声は高く、その2つがハモっていい感じでした。
私の膝の上に乗っているのはモルモットです。奥からこちらを見ているのが牧場犬です。モルモットの毛はふわふわで気持ち良く、ちょこちょこ膝の上を動き回って可愛かったです。牧場犬は犬によって性格が様々ですが、写真の犬は始終この態勢でのんびりした性格のようでした。動物には見ているだけでも癒されました。
今回、私たちは時間がなくて体験できませんでしたが、他にも「乗馬」やウインナーやパン、バター、チーズなどの「手作り体験教室」などがあるそうです。また、ゴルフ場や休憩スペースもあるのでご家族で1日中楽しむことができると思いました。
→→道の駅へ→→
熊本には道の駅がたくさんあります。道の駅では熊本ならではの特産物に出会うことができます。私たちは2つの道の駅に行きましたが、ここでは「道の駅阿蘇」について書きたいと思います。ここで出会った美味しいものが手に持っている「いきなり団子」というお菓子です。中に入っているのは「あん」と「サツマイモ」で、中はホクホク、外の皮はもちもちとしている素朴な味のお菓子です。
そしてもう一つ写真に写っているのが、「ASA MILK のむヨーグルト」です。こちらののむヨーグルトはお店の方がおススメしていて、牛乳と砂糖だけでつくっているとのことです。とてもまろやかで美味しかったです。
→→阿蘇神社へ→→
阿蘇で最も有名な場所に阿蘇神社があります。そちらへも参りました。こちらは地元の方から「阿蘇神社は被害が大きくてショックも大きいがぜひ見に行って欲しい」と教えていただいたところです。
写真を見ると分かりますが境内の建物は倒壊していました。そして建物の近くは危険なことからロープで囲われていました。そのため臨時の御賽銭箱も用意されていました。
そして、臨時のテントもあって、そちらに神職さんがいらっしゃったのでお話を伺ったところ「今日は土砂降りなので参拝に来られている方は少ない様子ですが、晴れた日ですと多くの方が『早く復興しますように』といらっしゃいます。」とおっしゃっていました。私も同じ気持ちだったので手を合わせさせていただきました。
→→黒川温泉へ→→
黒川温泉は熊本を代表する温泉です。私ははじめ、黒川温泉という大きな1つの温泉施設があるのかと思っていましたが、実際は24軒の風情ある温泉宿が集まった温泉街でこれがまず1つ目の驚いたことでしたが、驚きはこれだけではありません。森の中にいるような温泉や立ったまま入る温泉、顔蒸し風呂といった様々な特徴のある温泉がありまる。黒川温泉では「入湯手形」という1,300円(税込)で3カ所まで選んで入浴できるお得な手形があります。私たちもこれを利用してさまざまな温泉を回ってみたかったのですが、飛行機の時間が迫っており、さらに昨日泊まったホテルでは3時間ほど温泉に入っていたので、今回はその中の1つにだけ入ることにしました。
そこで私たちが選んだのは「いこい旅館」さんです。入り口の前には足湯があって趣のある休憩場所もあります。
そして、温泉ですがこちらには13の湯があって、その一つに立ったまま入る温泉があります。深さは150cmほどで上から吊るしてある丸太につかまりながら入るのですが、私の身長は158cmなので足が着くか着かないかといった深さでしたが、水の中ということもあってずっとぶら下がっているのは想像と違って簡単でした。緑に囲まれた露天風呂はとても気持ちよかったです。
→→いまの熊本へ行ってみて→→
今回、私は初めて熊本へ行きましたが、訪れたことでわかったことは「全てが揃った素敵な場所だった」ということです。
海に山に平野に温泉と全てを一度に楽しむことができ、さらに水は美味しくて、新鮮な食べ物がたくさんある。
しかしそれだけでなく、途中で出会って少しだけお話しをした方から何時間もお話しをした方まで、その全ての方との出会いも素敵だったのです。
そして出会った熊本の方たちが言っていたのは、「遠くから来てくれてありがとう。いろいろなところから来てくれるだけで嬉しい。今の状況から元気な熊本に戻るから見ててほしい。」ということでした。
このようなたくさんの魅力で溢れる熊本ですから、一度行けば誰もが好きになると思います。
そして私のようにファンになって帰ってくると思います。
そして行くことで、「熊本=被災地」というマイナスなイメージではなく、「熊本=素敵なところ」というプラスのイメージに変わると思います。
熊本へ観光に行くことは自分が満足するだけではなく、支援にもなります。
皆さんのなかには今でも「熊本=被災地」と思って観光に行くことを躊躇してしまう人もいると思います。
しかし、そんな方こそ熊本へ行くと私と同じようにファンになると思います。
今回は体験することができませんでしたが、一緒に行ったみんなが美味しいと言っていた米焼酎や日本酒も素晴らしいそうです。
私はまた熊本へ行くと思います。それは今回お会いした方々に再会することや、そして時間の関係から参加できなかった様々な体験をしたいからです。
このようなことを皆さんもぜひ体験して、忘れられない夏の想い出をつくってみてください。
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