東北地方太平洋沖大地震で被害を受けた被災地に赴き、復興支援活動をした若者と大人が現地に行って感じた思いをありのままに語る座談会の第一回目。

今回のテーマは「被災地で見つけたかけがえのないもの」

今回はフリーライターの今一生さん、フォトジャーナリストの安田菜津紀さん、法政大学の三井俊介さんにお話しを伺った。
震災が起きてから今までの被災地の現状について、これからの支援活動のありかたについて、そして社会に出る若者たちへ被災地を見たからこそ感じた大切なものを今、伝える。


*語り手
三井俊介 1988年生まれ 法政大学4年 サッカーで国際協力する学生団体WorldFut共同創設者 社会起業大学1期生 震災支援団体学生非営利組織SET共同発起人 9人の学生の休学体験談をまとめた電子書籍「休学のススメ」共同責任者 ミツメルproject共同発起人 個人blog:生まれゆく光の中で  twitter@shusuke_1223

 

 

安田菜津紀 1987年生まれ 上智大卒 studio AFTERMODE 所属 フォトジャーナリスト 2003年8月、「国境なき子どもたち」の友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。2006年、写真と出会ったことを機に、カンボジアを中心に各地の取材を始める。現在、東南アジアの貧困問題や、中東の難民問題などを中心に取材を進める。2008年7月、青年版国民栄誉賞「人間力大賞」会頭特別賞を受賞。2009年 日本ドキュメンタリー写真ユースコンテスト大賞受賞。写真展に「緑の壁」HIVと共に生きる(2010・コニカミノルタプラザ)など。共著に『アジア×カメラ 「正解」のない旅へ』(第三書館)。twitter@NatsukiYasuda

 

今一生 1965年生まれ フリーライター、編集者。『オルタナ』「Hungry For Mission」連載中。児童虐待・家出・自殺の取材を経て、社会起業やCSRを中心に
取材中。震災後は、10代向けの作文事業や講演事業を始め、被災者に収入が入る仕組みを増やしている。編著書に『社会起業家に学べ!』(アスキー新書)、『大人の知らない子どもたち』(学事出版)『日本一醜い親への手紙』(ノンカフェブックス)など多数。公式サイト www.createmedia.co.jp twitter @conisshow

*聞き手 池田真隆 (オルタナS編集員)

震災からはやくも4ヶ月が過ぎようとしています。率直に今の現状をどう思いますか。

三井「震災はまだ終わってないのに、もうひと段落ついたと思っている人が多い気がします。風化されはじめたように感じています。」

「そうだね。マスコミも報道しなくなってきたし、したとしても一部しか流さない。その内容には偏向があるよね。現地に行ってみないとわからないことがまだまだあるから実際動けるなら動いてほしい。これはボランティアだけではなくてマスコミにも言える。」

安田「震災が発生したばかりの頃は午前のニーズが午後のニーズと違ったりして、その状況に対応することに追われていたけれど、現在はようやく落ち着いてきました。でも、今は今で普段の生活が徐々に戻ってきて、そのための事務処理や手続きなどで毎日膨大な仕事に追われています。特に学校の職員室は明かりが消えないですね。」

「普段通りの生活が被災者それぞれに戻ってきつつある今は何か問題はないの?」

三井「陸前高田市はまだ復興後の青写真が出てないんですよ。大船渡市は出てるんですけど。陸前高田市のご年配のかたは行政が決めないと動けないと言っていて、20代、30代のかたは行政の判断を待っているのではなく自分たちで進めていこうとしています。そこの溝を私たちの力で埋めていければいいかなと思っています。」

「うん。私はそれは素晴らしいと思うよ。復興まで20年くらいはかかるとされている中で、その期間を縮めることができるのは被災者に寄り添うことができる人たちの存在だから、」

三井「ありがとうございます。私たちの団体は現地の防災本部と連携して、私たち学生だからこそできることを追求していってます。」

「今回の震災は私だからこそできることみたいな自分の社会的価値がどこにあるのかを見つめ直すいい機会になってるよね。」

安田「私がこの震災への復興支援活動を行っていてはじめて自分のやるべきことが見つかった気がしたのは、写真を活かせる活動を見つけたときです。小学校や中学校で入学式が始まるときに合わせて記念写真を撮る活動は私にとってもかけがえのない経験となりました。私が写真を撮らせて頂いた気仙小学校は甚大な被害に合われた場所で新入生が2名だったのですが、先生がその新入生に向って『きみたち二人の命はみんなの宝物だよ』と入学祝いの言葉をひとつひとつ噛み締めながら言っていてとても感慨深いものでした。」

「それは凄い経験したね。」

安田「はい。今後は陸前高田市で拾った写真を洗浄してその持ち主に返すプロジェクトを行っていく予定です。」

三井「その写真はどのくらいの量なんですか?」

安田「膨大な量ですね。それに汚れた写真は時間が経つと損傷が激しくなってしまうので時間との勝負もあるんですね。だから、夏休みやには多くの学生を呼んで手伝ってもらう予定です。」

「これからの支援活動はワクワクしながら、楽しんでやったほうがいいと思うよ。例えば、その写真洗浄にしても、顔の見えない人たちの写真を洗っているんじゃなくて、知っている人のエピソードやその人の名前のついた思い出を蘇らせる、持ち主にヒアリングしながら作業するツアーを組んでみればいいと思う。」

三井「私たちの団体も現地のかたと親戚のような関係を築けたので、瓦礫撤去だけではなくて、現地の中学生と部活の練習相手や夏に行う肝試しのお手伝い、高校生の進路相談相手など、自分たちの価値を最大限に活かせるツアーを組む予定です。」

「自分だからこそできることって大きいものである必要はなくて、いつも自分がしていることでいいんだと思うよ。震災当時はマンガ家の井上雄彦さんが笑顔の子どもの絵を描き続けていたけど、それを見て自分にも何かできるかもって思った人はいっぱいいると思う。そのような毎日していることをしていけば、その延長線上に必ず被災者のかたとつながることがあると思う。だから、大学生は等身大のままで高校生と話すことでもいいと思う。復興は過去ばかり見るのではなくて、楽しみながら行ってほしい。」

三井「そうですね。今は現地の人の様子も変わってきてて、前までは震災当時のことを話してくれたんだけど、今は話すことを嫌がっている気がします。思い出すことを辞めて、震災のことを封印しているように感じました。だからこそ、今、ともに楽しむということが重要になってくる気がします。」

へ続く・・