企業・NPO・行政など379法人が参加する全国的な寄付の啓発キャンペーン「寄付月間」が今年も始まった。12月の1カ月間で、71の企画が実施される予定だ。寄付月間は昨年から始まり、ビル・ゲイツ氏を招いたシンポジウムを開き話題を集めた。今年の目玉企画を紹介する。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
今年の目玉企画の一つは、「Giving Initiative」という名称の啓発プラットフォーム。ビジネス界のリーダーが「寄付をする生き方」を発信し、社会貢献意識を高めていくものだ。
発起人は寄付月間推進委員会委員長の小宮山宏氏(三菱総合研究所理事長/元東京大学総長)や日本IBM・北城恪太郎相談役、武田薬品工業・長谷川閑史取締役会長らが揃う。
米国では、ビル・ゲイツ夫妻と投資家のウォーレン・バフェット氏が立ち上げた「ギビング・プレッジ」がある。これは、資産家が生前もしくは死後に自身の資産の半分以上を社会貢献活動に寄付することを公言するプラットフォームだ。
2016年6月にでき、現時点で、フェイスブック創業者のザッカ―バーグ氏や映画監督のジョージ・ルーカス氏など150人以上が加入している。米国の個人寄付総額は27兆3504億円で、英国(1兆8100億円)、日本(7409億円)を大きく離している。
■11の大型書店でブックフェア
今年から寄付月間の賛同パートナーになった楽天は、社会貢献プロジェクト「楽天チャリティー」を実施する。同企画の仕組みはこうだ。
事前エントリーしたユーザーが、楽天市場で購入すると、一定のポイントが社会貢献活動を行う団体への寄付金として差し引かれる。楽天市場と賛同した店舗からも同額の寄付金を上乗せし、団体へ贈る。
寄付先は、子どもの貧困の解消を目指すNPO法人キッズドア(東京・中央)や福島県南相馬市で活動する認定NPO法人フロンティア南相馬など6団体から選べる。楽天の会員数は1億1650万人(2016年9月末時点)で、出店店舗数は約44000。
日本ファンドレイジング協会(東京・港)と英治出版(東京・渋谷)は寄付月間に合わせて、紀伊國屋書店やジュンク堂書店、大学生協などでブックフェアを開く。昨年は4店舗で開いたが、今年は11店舗に増えた。印税や売り上げが寄付になる本を多数揃え、書籍の購入を通して、寄付につながる仕組みになっている。
紀伊國屋書店新宿本店の梅津友里さんは、「震災直後などの一時期ほど、このジャンルの新刊は多くない気がするが、面白そうな本が多く、もう一度集めてやりたいと思った。過去にソーシャルデザインの棚を作った経験もあったが、寄付という切り口で集めたのは初めて。棚に来てくださった方にとって、考えるきっかけになって欲しい」と話す。
社会人だけでなく、大学生向けの啓発イベントも行う。寄付月間推進委員会の学生インターンは12月14日19時から日本財団(東京・港)で、「キフトーク」を開く。寄付の意義に対して伝え、寄付するための一歩を踏み出してもらうことを狙う。
登壇するのは、特定非営利活動法人CANPANセンター・山田泰久代表やヤフー・妹尾正仁社長室コーポレートコミュニケーション本部社会貢献推進室室長ら。
■逆「寄付教育」の存在
個人寄付総額に関して、日本は米国と比べると3%以下だ。大きく差が開いている原因として、鵜尾雅隆・日本ファンドレイジング協会(東京・港)代表理事は、寄付教育のあり方を指摘する。
日本では、学校で寄付先を決めてから、生徒が街頭募金などを行う。だが、集まった寄付金はどこでどう使われたのかまでは、生徒に伝わらないことがほとんど。こうした経験を幼いころにしてしまうと、「寄付は偽善っぽい」というイメージを抱いてしまう。
一方、米国の寄付教育は、日本とは真逆だ。子どもたちが寄付を集めるのではなく、寄付先を選んでもらう。子どもたちは、寄付先を選ぶために、地域の課題を調べ、NPOがもたらす社会的インパクトを検討する。そうして、寄付の価値を学ぶ。
今秋には、同団体は東京学芸大学付属国際中等教育学校の6年生(高校3年生)に、この仕組みの寄付教育を行った。鵜尾氏は、子どもたちに「選ばせる」・「達成感をもたらす」ことが、寄付文化先進国になるための重要な取り組みだと強調する。
[showwhatsnew]