奈良県は東京五輪で見込まれる外国人観光客に備え、奈良公園内にリゾートホテルの建設を計画しているが、地元住民から建設計画への反発の声が高まっている。計画地は、もともと国が所有しており、開発が禁止されている市街化調整区域だったが、同県は国から同地を購入し、都市公園法に基づき、「県立都市公園 奈良公園」と編入し、建設を行う。ムササビや野鳥が生息する同地を、県の裁量で宿泊施設に変えてしまうこの計画に対し、地元住民は昨年11月末から建設計画の開示を訴えるなど「話し合い」を求めているが、同県からはいまだ具体的な回答はきていない。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

リゾートホテル建設計画の話が出ている奈良公園

■知事「ホテルのレベルが高いほど、環境が良くなる」

同計画は、奈良県が2020年の東京五輪などで来日することが見込まれる外国人観光客向けのインバウンドツーリズムを促進することが目的。同県には世界文化遺産や重要文化財があり、日本有数の観光地であるが、宿泊施設の客室数が都道府県で最も少ない。

外国人含め多くの観光客が訪れる奈良公園内にリゾートホテルを建設することで、宿泊してもらうことを狙う。

昨年12月、奈良県の荒井正吾知事は、山村幸穂議員から、同計画の必要性について質問を受けたが、「反対は一部で、多くが賛成している」とし、「高級ホテルのレベルが高いほど、環境が良くなる」と答えた。今後、土地や建物を貸す事業者を公募し、春先に優先交渉権者を決める予定だ。

■「反対」、モンベル会長が呼びかけ

この計画を受けて、地元住民は「奈良公園の環境を守る会」を立ち上げた。呼びかけ人代表は、アウトドアメーカー「モンベル」会長の辰野勇氏が務める。

1月27日、住民らが同県に開示を求めていた行政文書が開示されたが、住民らが重要視していた、「高畑町裁判所跡地の整備計画における基本コンセプト」、「利用ターゲット」、「施設の建築面積」、「建物配置」、「収支計算等提案募集の内容及び審査基準」に関しては開示されなかった。

同県は開示しない理由として、「県の機関が行う事業なので、公にすることにより、適切な逐行に支障を及ぼすおそれがあるため」と述べた。

辰野氏は、「肝心な部分を開示しないことは民主主義に反している。事業に支障をきたすとはどういうことなのか」と話した。

さらに、「この地で1ヘクタール以上の開発を行う場合は奈良市の許可を得なければいけないし、公園法で公園の用に呈する建物以外は建設できない決まりがある。県は独自に、これらのルールを捻じ曲げてまで、ホテルを建てようとしていることが理解できない」とした。

同県は地方創生・インバウンドツーリズムの一環として、この取り組みを進めているが、「本来、地方創生は過疎が進んでいる地域を応援するもの。ほうっておいても観光客が来る地域には馴染まない。地方創生交付金を取り合っている匂いがする」と辰野氏。

かつて、この土地には老舗旅館があったが、規制の縛りで経営難に遭い、倒産してしまったという。「奈良県にホテルが少ないというなら、既存の宿泊施設の支援をしていくべきだ」と主張した。

建設計画に反対する署名は増えており、1月21日には7374人だったが、2月2日時点で25633人から集まっている。2月18日には奈良県文化会館で奈良公園の環境を考えるシンポジウムを開く。辰野氏をはじめ、前滋賀県知事の嘉田由紀子氏、奈良県議会議員の山村さちほ氏、弁護士の田中幹夫氏、作家の寮美千子氏が登壇する。

・リゾートホテル建設反対について住民たちが立ち上げたサイトはこちら

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