トヨタ財団は5月18日、NPO向けにトヨタ自動車のマネジメント手法を伝える「トヨタNPOカレッジ カイケツ」の第2期目を開講した。公募で選ばれた17団体の経営層が参加した。受講生は半年間、トヨタ自動車で業務品質改善を行う講師らの個別指導を受け、組織で抱える課題の改善に取り組む。(オルタナS編集長=池田 真隆)

名古屋市にあるトヨタ産業技術記念館で行われた

カイケツは昨年から始まり、今年度で2期目となる。トヨタ財団はトヨタ自動車によって1974年に設立された財団法人。「研究」「国際」「国内」の3分野でこれまでにした助成件数は7900を超える。助成金を出すだけでなく、トヨタ自動車が持つマネジメント方法を生かして、NPOの活性化へつなげていくことを目的に企画した。

主催者を代表して挨拶をしたトヨタ財団の大野満事務局長

第2期生となる17のNPOは青森や栃木、大阪、福岡など全国から集まった。活動内容も、「子どもの貧困」、「若年層の自殺対策」、「フードロス」、「LGBT支援」など多岐にわたる。抱える課題も、「業務の効率化」、「組織運営」、「会員集め」など異なる。

自己紹介をするNPO経営陣、半年間をかけてトヨタ自動車のメソッドを学んでいく

受講生たちは6回の講座を通して、それぞれの悩みを改善していく。講師を務めるのは、トヨタ自動車の古谷健夫・業務品質改善部主査ら4人。受講生は6人1グループに分けられ、それぞれのグループに講師が一人就き、指導を受ける。

18日には、講師を務める古谷氏がトヨタ自動車の「問題解決」の考え方について講演した。

古谷氏は、「問題」についてこう定義する。「設定してある目標と現実との間に存在する、対策して克服する必要のあるギャップ」。「目指す姿」と「現状の姿」の間にあるギャップが「問題」となる。

トヨタ自動車の品質管理の原点として、「G型自動織機(しょっき)」を紹介した。これは創業者の故豊田佐吉氏が、「糸が切れたら止まる仕組み」にしたことで、止まることによって、問題が顕在化でき、その結果、品質管理につなげることができた。

古谷氏は、「異変が起きた時点で止まるので、その場で対策を立案できる。不良品を作らなくなる。自ら働くことから、自働化の原点」と話した。

品質については、「(対象とするものの)よしあし・値打ち」と定義する。そして、「よしあし・値打ち」を決めるのは、サービスの提供者ではなく、受益者とし、だからこそ、「ばらつき・変化するもの」とした。

常に変化する品質に対応するためには、「標準の状態を把握することが必要」と説明して、具体的には、SDCA(標準化・実施・評価・処置)サイクルを回すこととした。SDCAで日常管理を行い、品質の変化に気付いたら、PDCAで新たな価値を創造していく流れを伝えた。

トヨタ自動車の問題解決について講演する古谷氏

■トヨタ自動車の「問題解決」の8ステップ

古谷氏は問題解決の方法として、トヨタ自動車の「問題解決」の8ステップを挙げた。8ステップは下記。

1「テーマ選定」:解決すべき対象を決める。問題の重要性、問題が拡大傾向にあるか、問題の影響の大きさなど様々な観点から何を解決すべきか判断する。経営者の重要な役割・
2「現状把握」:現状の姿を客観的かつ定量的に認識すること。事実・データに基づいて伝えることがポイント。
3「目標設定」:何を、いつまでに、どのようにするのかを具体的に決める。マイルストーンを置いて、取り組みの経過を可視化する。
4「要因解析」:なぜを繰り返して、真因を探る。なぜを繰り返すことで、具体的な実施事項が出てくるので、論理的、合理的な解決策が期待できる。
5「対策立案」:対策内容を整理して、実行計画を立てる。5W1Hを明確にして、最も効果的と思われる対策案から手掛けていく。
6「対策実行」:計画通りにやりきることが大切。
7「効果確認」:対策内容への評価を行う。「対策をほとんど実施し、期待通りの成果が出た」「対策はほとんど実施したが、成果は得られなかった」、「対策はほとんど実施しなかったが、期待通りの成果が得られた」、「対策はほとんど実施せず、成果も得られなかった」の4つのパターンが考えられる。
8「標準化と管理の定着」:効果が出た対策の内容を標準化して、その後の取り組みに反映させていく。こうすることで、同じ問題の再発を防いでいく。

古谷氏は、問題を解決するためには、この「8ステップの理解」と「事実を客観的に把握し、共有すること」、そして、「品質管理とは製造過程の話ではなく、マネジメントそのものととらえる考え方」の3つの工程に尽きると言う。

その場で問題解決のワークショップを行った。売上が落ちている八百屋の原因について検討した

そして、この3つの工程を意識した上で、組織が目指す姿であるビジョンと使命(ミッション)を決めていくことが重要と強調した。

電気通信大学の鈴木和幸教授の「問題なのは、問題があることではなく、それを隠し、そのまま潜在化させておくことである」という言葉を引用し、「異常が発見されたら放っておかずに素早い対応を取るべき。そのためには、経営陣にはコミュニケーションが取れるオープンな職場風土づくりが求められる」と伝えた。

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