お客様に自慢に思ってもらえる宿であるために。社会貢献への想い。

――渡辺さんが宿を提供したいと思ったのはなぜですか。

(渡辺さん以下渡)
私も何か役に立てればと思っていたからです。
震災後、宿は休業し、スタッフは自宅待機になりました。当然売上は0です。
いくらでも経費を削減して、これまで通りの質で営業を再開し、スタッフを宿に
呼び戻すことに備えなければなりません。
しかし温泉は流れ続けているので、修理の必要がなかったお風呂は使用でき
ますし、幸い建物もほとんど無事でした。それなら少しでも社会貢献してから
営業を再開したいと考えたんです。

――それはなぜですか。

(渡)今はみんなが助け合わなければいけない時だと思うからです。
当宿は、規模が小さいことや最小限のスタッフしかいないため大きなことは
できません。しかし何か私たちも力になりたかったんです。
それに私どものお客様にも、『震災の時にこんなことをして頑張りましたよ』と
報告できたらなあと思いました。
私はいつもブログを書いているのですが、震災後は停電などの影響でしばらく更新できずにいました。
ですが再開した途端、コメント欄に100件以上の応援メッセージを寄せて頂きました。
そんな、当宿を応援してくださっているお客様にも、自慢に思ってもらえる宿で
ありたいとも思いました。
※震災後のブログURL http://daikon-no-hana.mo-blog.jp/daikon/2011/03/

つながる想い。宿の提供へ。

――松島さんと渡辺さんはどのようにつながったんですか。

(渡)懸け橋役になってくれた湯川さんという方がいたんです。
たまたま私が彼のtwitterをフォローしていました。それで彼が、石巻に行ったり
物資を運んだりとかなり精力的に動いていたのを見ていたんです。
ある時、彼が白石に来ているとtwitterで知り、こんなに近くに来ているのなら一度宿を見ていただいて何か協力できることがないか相談してみようとtwitterを通じて連絡をしました。
とんぼ返りで宮城と東京を行き来しているようだったので泊まる場所がないのか
とも思いましたので。
それに湯川さんといえば、有名アーティストのプロジェクトを通じて知る人ぞ知る有名人でしたから信頼できる方だとわかってもいました。

――湯川さんと松島さんとはどうつながったんですか。

(松)湯川さんは会社の先輩の知人で、一緒に仕事をしたこともあるんです。今回のことでも一緒に石巻へ行くなど、しばらく行動を共にしてました。
それである時、電話があったんです。『まっつん、いい話しがあるぞ』と(笑)。
それで渡辺さんの話しを伺い、すぐ会いに行きました!

――それはいつ頃ですか。

(松&渡)4月6日ですね。

――じゃあかなり早く準備が進んだのですね。
  (旅館の提供は4月8日~20日)
お二人が初めて会ってから、どのように話しを進めてきたのですか。

(松)まず、渡辺さんと館内を見学しながら話し合いをしました。
そして「宿泊先がない」「テント泊は心配」という不安がある人たちのために、
寝る場所とお風呂を提供できないかというアイデアにたどり着きました。それに
沿う形で渡辺さんに使用ルールを作って頂き、打ち合わせをしながら、細部を
詰めて運用ルールを固めました。

旅館のエントランス

※ボランティアで泊まる方は基本的にセルフサービス。掃除やごみの持ち帰りなどは自分たちで行い旅館に負担をかけないよう使わせて頂いた。

(3)へ続く