熊本県天草市には、天草市の行政資料、地域資料を保管している「天草アーカイブズ」という施設がある。2002年4月に旧本渡市で設立され、2007年4月に現在所在する天草市役所五和支所内に移され現在に至っている。天草市の各部署で作成された行政資料は、保存期間を終了になり次第、この天草アーカイブズに移される。今回は、天草アーカイブズ管理係主任橋本竜輝さん、管理係主査松野恭子さんにこの施設ができた経緯、現状、今後について話しを伺った。(武蔵大学松本ゼミ支局=吉岡 優作)
「市長は市民の宝である公文書を廃棄されるおつもりですか?」――これはとあるアーカイブズ学の先生から2000年当時の市長が言われた言葉である。その翌日から公文書保存に向けた活動が始まった。
そこから、公文書さらには地域資料を将来に渡り保存、活用していくため「公文書館」の整備構想が生まれ、当初のきっかけから約2年後の2002年に開館した。開館はされたが、2006年の天草市町村合併までは、それぞれの自治体で資料は保管されており、市町村合併後に天草アーカイブズに資料が集められた。
集められた資料の利用に関しては、2016年度は閲覧件数50件、複写申請件数59件、レファレンス件数44件となっている。天草アーカイブズでは、広報活動の一環としてアーカイブズに保存してある資料を利用した展示会を年に一度行っている。
そして、毎年8月頃にはアーカイブズ主催の古文書や写真の調査会を地域史料調査協力員の方の協力のもと行われている。ただ、参加者自体は多くないという。天草市全体は広く、また、立地してある場所の関係上天草アーカイブズ自体知らないという人もいるという。
今後は、事前の広報活動のあり方というのも参加者拡大に向けた課題の一つと言えるのではないだろうか。それが、結果としてアーカイブズの普及につながり利用の拡大につながっていくはずである。
天草アーカイブズに集められる行政資料に関しては1年~30年という保存期間を終了したものすべてが集められている。これを「全量移管」という。移されるものはファイルに閉じられた資料である。
集められた資料は天草アーカイブズ内にあるホールに厳重に保管されている。今回特別にホールを見せて頂いたが、資料の多さに圧倒された。地域資料に関しても、別の部屋に保管されている。
地域資料は、特に集める際に告知は行っておらず、歴史民俗資料館と連携し資料の収集を行う場合、資料の展示会が開催されるときに申し出があり提供を受ける場合もある。また、
地域資料協力員が、地域の資料に関しての情報提供や地域資料の扱いに関して住人の方に助言をすることがある。
この行政資料と地域資料についてはそれぞれに課題が生じている。行政資料については、文書を作成する全職員の公文書管理保全に対する意識の向上である。
「しっかり作って、しっかり管理することが保存・活用を目指すうえで最も重要なこと」こう語ったのは、橋本さんである。橋本さん自身、保存に関わっているからこそ感じることがあったのではないだろうか。今後、課題解決に向けより一層尽力することだろう。
地域資料に関しては、古文書に比べて劣化しやすい紙質のものが多いためその保存処置や代替化が今後の課題となる。災害時の対応が迅速にできるように、市内の資料の所在確認調査を日頃から進めていくことが課題としてある。
これまで、設立から現在まで様々な活動を行ってきた天草アーカイブズは今後、新たな取り組みとして、インターネット上での資料の公開を目指している。
全国の誰でも資料を閲覧できる仕組みを整えているところだ。そして、学校現場への参入も今後新たな取り組みとしてやろうとしていることである。教科書研究も行い、小中学校への授業で扱いやすい資料の提供を目指している。これら新たな活動が浸透すれば、天草アーカイブズの認知度、そして活動の認知度も上がっていくことであろう。
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