社会貢献を身近にする割引優待サービス「みんなの優待」がこのほどリリースされた。月額490円で、レジャーや映画、グルメなど120万件以上の割引特典が付いている。会員にはNPOが主催するチャリティーランなどのボランティア情報も配信し、社会貢献への接点を増やしていく。(オルタナS編集長=池田 真隆)
みんなの優待を運営するのは、セプテーニ・ホールディングスの子会社gooddo(東京・新宿、グッドゥ)。同サービスには、映画や旅行、遊園地などの割引優待が付いている。
その数は120万件以上に及び、大企業の福利厚生と同等の内容だ。月額490円でこの割引優待を制限なく利用できる。会員の家族も優待サービスを受けることができて、育児や教育、介護などを支援するサービスも充実している。
同社は2014年からNPOを支援するプラットフォーム「gooddo」を運営しており、771団体に約1億5000万円を届けてきた。同サービスは、フェイスブックのいいねボタンを押すことや指定の商品を購入することで、NPOに支援ができる仕組み。スマートフォンで気軽にできる支援と好評だ。
しかし、たとえ身銭を切る必要をなくしても、無関心な人はいる。そこで考えたのがこの「みんなの優待」だ。金銭的メリットがある優待サービスをフックに社会貢献に無関心な人へアプローチしていくことを狙った。
サービスのポイントは3つある。1つ目が、フックとなる圧倒的な金銭的メリット。福利厚生サービス最大手のベネフィット・ステーションと連携し、大手企業の福利厚生と同等の内容を誇る。
2つ目は、自身のライフイベントやサポートが必要なときに使うことができるライフサポート。例えば悩みを抱える妊娠期の母親と育児支援を行う団体をつなげるなど、個別のマッチングも考えている。
最後は、会員の興味関心などに合わせた社会貢献活動を紹介する機能。NPO団体のイベント情報を会員へ配信し、社会貢献に一歩踏み出してもらうことを促す。6月からテストマーケティングを始め、すでに利用者は30~40代の主婦を中心に数百人いるという。同社は2020年までに会員数100万人を目指している。
■中高でボランティア部
同サービスを考えたのは、同社の中村奈津さん。中村さんは1988年生まれのミレニアル世代だ。高齢化が進む東京都多摩市で育ったことで、幼い頃から少子高齢化を身近に体感してきた。通っていた幼稚園も小学校も閉校した。子育て環境がなくなることを感じたり、生きづらさを訴える独居老人を間近に見たりすることで、社会問題に関心を持つようになった。
中学生のときに学年で1人だったがボランティア同好会に入り、障がい者施設などを訪問した。学校外の人と交流できることに楽しさを見出して活動を続けた。
ボランティアに熱心な中村さんを周囲は、「いい子だね」と称えたが、その言葉に違和感を持っていたと明かす。「施設に手伝いに行くと、こっちがかわいがってもらえた。当時は行くだけでも感謝され、単純にうれしかった」と言う。続けて、「楽しそうに暮らす障がい者の方々と支える施設の職員を見ていると、自分にもし何かあっても支えてくれる人がいると安心できた。だから今は、助けが必要な人がいたら私も支えたいと思っています」
無関心層へアプローチしていくために、3つのステップがあると言う。1つ目は、「社会問題の自分事化」である。育児や介護、障がいなどいつ自分が当事者になるか分からない。なかには、産後うつや老老介護などすでに社会問題の当事者であるが、そのことすら知らずに孤独を感じている可能性がある。
中村さんは支援した人に話を聞くと、「いつか私が困った時に助けてもらいたいから支援した」という声をよく聞くという。このように、「支えられる経験」を積むことや「支えてもらう可能性がある」ことを認識することが、社会問題の自分事化となり、支援活動への重要な入り口だとする。
■サービス内容はNPOと共創で
2つ目は寄付や社会貢献活動の成功体験を感じてもらうことだ。インタビューなどを通して、9割が街頭募金やコンビニ募金などしたことがあると答えた。だが、「やってよかった」と思った人は多くなかった。
「誰かのためになるなら、少しだけど何かしたいという気持ちは持っているのに、単発で終わってしまい、達成感を感じられていませんでした。このサービスでは、継続的な会員制度にしたので支援のその後が伝わりやすい仕組みにしています」
継続して寄付や活動に関わってもらうために、NPO側が報告するだけでなく、「プラスアルファ」な行為が必要と強調した。プラスアルファな行為については中村さん自身も解は持っておらず、「ユーザーのニーズをくみ取りながら、それぞれのNPOと状況に応じて決めていく」とのことだ。
3つ目は、「関わり方の多様化」である。多くの人が社会貢献に抱くイメージは、「いい人が何かを犠牲にしながら行っていることで、自分には無理だと決めつけてしまいがちだと思います」と言う。
「『メリットがあるからやる』という価値観を広げることは、社会貢献へ関心を持つ人を増やすためには非常に重要なことだと考えています。企業側の社会貢献のニーズも多様化していますし、様々な取り組みをしていく予定です。気軽にできる社会貢献を、企業やNPOと一緒に作っていきたいと思っています」
中村さんはこれからの公共に関しては、「民間が担う役割は大きくなっていくはずです」とし、gooddoは「1人が1億円寄付するのではなく、1億人が1円ずつ寄付する社会」を理想としている。
現在、同サービスを無料で体験できるキャンペーン中だ。NPOの関係者はアンケートに答えることによって、半年間無料で使うことができる。それ以外の人は、3カ月無料で使うことができる。
この「みんなの優待」は、ユーザーに優待をフックに登録してもらうが、困った時にはサポートを受けることができ、自然と興味のある社会貢献活動に参加できるようにつくっていくという。具体的な施策は、今後NPOや企業担当者と協力し合いながら決める予定だ。
中村さんは、「ユーザーの体験を第一に、みんなで話し合いながらつくっていきたいと思っています。無関心な人の意識を変えていきたいです」と話した。
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