華やかなペットブームの裏で「高齢のため飼えなくなった」「繁殖しすぎてもう飼えない」「生活環境が変わったからもう要らない」と、人間の身勝手な都合により捨てられる小さな命。1990年、英語教師として日本に降り立った英国人女性が、道端に捨てられた小さな命に心を痛め、たった一人で保護活動を始めました。活動を開始して27年、約7000頭の犬猫を里親に譲渡してきました。彼女が目指す、保護動物たちが安心して暮らせる「サンクチュアリ」とは。(JAMMIN=山本 めぐみ)

■英国と日本、異なるペットを取り巻く事情

NPO法人アニマルレフュージ関西(大阪、以下ARK)理事長のエリザベス・オリバーさん(77)は、52年前、25歳の時に英語教師として初来日しました。当時、働いていた大学への通勤途中に捨てられていた犬や猫を見過ごすことができず、一人で保護活動を始めました。

ARK代表理事のエリザベス・オリバーさん。現在は5頭の老犬と2匹の猫と暮らす動物好き

「捨てられていた犬猫を引き取り、最初は自宅で保護していました。多い時で30頭ほどいたかな。毎月の給料は、すべて犬猫の飼育代や病院代に消えていきましたね」とオリバーさん。母国とは全く異なる日本のペット事情に驚くと同時に、心を痛めたと言います。

「イギリスではたとえ事情があってペットを飼えなくなったとしても、引き取る施設がたくさんあるし、ペットを飼う場合、半数以上の人は保護施設から新しい家族を迎え入れる。飼い主が年老いて老人ホームに入ることになっても多くの場合はペットと一緒に入居できる」

ARKの施設の一つ「篠山ARK」にて。東日本大震災の津波により飼い主と別々の生活を余儀なくされARKに来たというKuriちゃん

「一方で日本では、多くの人がペットショップでペットを買う。事情があって飼えなくなった場合は、どこかへ捨てるか保健所に引き取ってもらうかしか選択肢がない。年老いて老人ホームや病院に入ることになったら、長年連れ添ってきたペットを一緒に連れていくことができない。そうやってたくさんの命が失われてしまうことに、ずっと心を痛めている」。日本と母国イギリスのペットを取り巻く事情の違いについて、そう話します。

■周囲の理解を得て、NPOを設立。阪神淡路大震災が転機に

個人での活動に限界を感じ、1990年、オリバーさんは大阪・能勢にてNPO法人「アニマルレフュージ関西(ARK)」を設立し、動物の保護活動を続けました。

設立から5年経った1995年に起きた阪神・淡路大震災は、ARKの転機となりました。

震災によって飼い主と一緒に住めなくなった動物たちを、急遽保護することになったのです。保護する動物、スタッフ、ボランティアの数がそれぞれ3倍に膨れ上がり、ARKの活動は一気に加速しました。

ARKは日本で唯一、イギリス最大の犬の保護団体「Dogs Trust」の認定を受け、資金面や保護犬に関するトレーニングの面で支援を受けている

阪神・淡路大震災をきっかけに、ARKの活動が多くの人に知られることになり寄付も増えたと言います。しかし、時の経過と共にボランティアや寄付は減っていく。そんな中で活動をどのように持続させてきたのか尋ねると、次のような答えが返ってきました。

「活動を続ける中で、大切なのは『バランス』。“かわいそう”“なんとかしなくちゃ”と感情だけで動いては、後々活動の持続が困難になる。保護した動物たちを責任を持って面倒を見るためにも、お金のこと、保護する動物たちのスペースのこと、動物を世話してくれるスタッフやボランティアさんのこと、常に全体を見て、ロジカルに判断し、バランスをとってやってきたから、今まで活動を続けてくることができた」

オリバーさんがたった一人で始めた小さな活動は、27年が経ち、これまでに4,655頭の犬と2,468頭の猫(※2017年8月末の数)を保護し、新しい里親に引き渡すまでになりました。

現在、活動拠点である大阪ARKの保護施設には、320の保護動物がいます。

■理想の保護施設「篠山ARK サンクチュアリ」

活動を続ける中で、拠点である大阪ARKが手狭になってきたことと、保護した動物たちが老後も安心して過ごせるよう広々とした場所で世話をしたいという思いから、10年以上前から新たな土地を探していたというオリバーさん。

2008年に兵庫県篠山市の緑に囲まれた7,000坪の土地を購入し、新たな保護施設「篠山ARK サンクチュアリ」の建設を進めています。購入当時は荒れ放題だった土地を整備し、2014年には1棟目となる犬舎が完成。しかし、理想の保護施設完成は、まだまだ長い道のりだとオリバーさんは話します。

篠山ARKの犬舎。7,000坪ある敷地内はもちろん、周辺にも広大な自然が広がる

「篠山ARKの完成は、私の一生をかけたプロジェクト。犬舎だけでなく猫舎はもちろん、犬のトレーニング施設や獣医が常駐できる施設、また動物愛護の歴史が浅い日本で、今後の教育のためにセミナーを開催できる施設も作りたい」と夢を語ります。

犬それぞれの部屋の入り口には、その部屋(ユニット)購入のための寄付者の名前が。自分の愛犬や、亡くなった愛犬の名前を寄付者名とする人も

「篠山から、人間の生き方と同時に動物たちの生き方についても一緒に考えよう、ということを発信し、伝えていきたい。『サンクチュアリ』と名付けたこの保護施設を多くの人が訪れてくださり、人間が動物とより良い関係を築いていく一つのきっかけになれば。そして、私の意志を日本の人たちが受け継いでいってくれたら嬉しい」。篠山ARKへの思いを、そう語ってくれました。

■篠山ARK建設をサポートできるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、ARKと1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。集まったチャリティーは、ARKの新施設・篠山ARKで新たに犬舎や猫舎を建設するための資金の一部になります。

「JAMMIN×ARK」1週間限定のチャリティーデザイン(ベーシックTシャツのカラーは全8色。他にVネックTシャツや7分袖Tシャツ(レディースのみ)・パーカーなどあり)

JAMMINがデザインしたTシャツに描かれているのは、保護施設を象徴するパラソルの下で、リラックスした表情を浮かべる犬猫たち。“Shelter Animals Love You More”という文言には、助けられた犬や猫は、あなたを愛し、きっと生涯の友になるだろう、というARKのメッセージが込められています。

Tシャツ1枚につき700円が、ARKへチャリティーされます。販売期間は、9月25日〜10月1日までの1週間。JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、私が実際に訪れ、取材させてもらった篠山 ARKと、そこへかけるオリバーさんの熱い思いをより詳しく掲載しています。こちらもあわせてチェックしてみてくださいね!

動物を愛し、共に生きる。理想の保護施設「サンクチュアリ」の完成を目指して〜NPO法人アニマルレフュージ関西

山本 めぐみ(JAMMIN):
京都発チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」専属ライター。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。

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