横浜最大の蛍の生息地である瀬上沢で大規模な開発計画が進められている。有志グループは市へ開発計画の是非を問う住民投票を求める署名を住民から集めている。住民投票を実施するためには12月10日までに同市の有権者6万人分の署名が必要だ。(オルタナS編集長=池田 真隆)
■人口減・高齢化が進む地区で本当に必要か?
瀬上沢は横浜の南部栄区上郷町にある。里山・谷戸など原風景を思わせる緑豊かな地区だ。蛍だけでなく、オオタカ、コサギ、カワセミなど多様な生き物が暮らす。
しかし、いま、この自然環境豊かな地区が壊されようとしている。東急建設が横浜市へ、瀬上沢の緑地10ヘクタールの森を切り崩し、宅地や商業・医療施設などを建設する計画を提案した。市はこの計画を容認し、来年3月に着工する予定だ。
この動きに対して、横浜市民は「横浜のみどりを未来につなぐ実行委員会」を結成。この計画の是非を問う住民投票の実施に向けて、住民から署名を集めている。住民投票条例制定のため、住民投票を実施するためには、署名開始から2カ月以内で横浜市の有権者50分の一以上から署名を集めなくてはならない。その数は約6万で、期限は12月10日までだ。
オンラインで集めることはできない。そのため、この取り組みに賛同した市民が駅前やオーガニックレストラン、コミュニティスペースなどで署名を集めている。約50カ所に及び、随時団体のフェイスブックページで情報を更新している。
9月15日から28日の約2週間で、第一期の署名を集めた。50カ所すべての集計は済んでいないが、10月18日時点で約1000人分の署名が集まった。
署名集めは衆議院選挙が行われるため、9月29日から10月22日まで中断するが、10月23日から12月10日までの期間に第2期の署名集めを行う。この期間で合計6万人分の署名が集まらないと、住民投票を実施することができない。
■人口減なのに開発
「人口減・高齢化が進むなかで、新たな開発は将来世代への負担になるだけ」と、同実行員会に所属する関本幸さんはこの計画に反対する。
上郷町の人口は2017年(9月30日時)には2444人で、約20年前の1998年(4155人)と比べるとおよそ半減した。高齢化率は16.9%(2004年)で、全市平均の15.8%を上回る。
宅地や商業施設などを建てることで、一時的には人口が増え、活性化するかもしれないが、「環境を壊して、これらのインフラを整備するために市民が長期的に税金で負担することには納得がいかない」と強調する。
実は問題はこの計画だけではない。横浜市は、2015年に神奈川県から瀬上沢地区の整備、開発、保全にまつわる権利を譲渡された。同市は今年度の都市計画で約630ヘクタールに及ぶ土地を「市街化調整区域」から「市街化区域」に編入しようとしているのだ。
「市街化調整区域」は森や農地などに与えられており、該当地区での開発は規制されている。「市街化区域」とすることで、開発を可能にする。
実行委員会の安田晃浩さんは、「もしこの大規模な計画が通ってしまうと、他県の参考となってしまう」と、「恥ずかしき前例」となることを危惧する。
「環境保全を目的とした横浜みどり税を納めてきたが、この計画には疑問を感じる。開発ではなく、有効活用する方法を話し合いたい」と述べた。
「『横浜に残された希少で豊かな緑地を未来に残す』のか『それとも従来の緑を削る都市開発を続ける』のか、住民投票の署名活動を通して、一人でも多くの市民の声を行政に直接届ける手段として、この活動を行っている」
「特にこれから子どもを産み育てていく世代、横浜市の未来を担う若者たちにとっても、自分たちの声を政治に直接届け、共に未来をつくっていくこの活動は意義深いものだと考えている」とした。
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