22日に投開票される衆議院選挙の結果によっては、憲法改正が実施される。しかし、憲法改正に賛成でも反対でも、そもそも憲法についての認識が誤っている人や理解が不十分な人もいるのではないだろうか。今回の選挙で投票先を考えるためには、憲法を理解することが非常に重要だ。(オルタナS編集長=池田 真隆、オルタナ編集部=沖本 啓一)

日本国憲法は1947年(昭和22年)5月3日に施行された

■そもそも憲法とは

結論から言えば、憲法とは「国民から国家への命令」だ。憲法99条によれば、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」とされる。つまり、国民個人には憲法を守る義務はないのだ。憲法とは主権者の国民が、国家に「権力」を託すにあたり定めて、課しているルールなのだ。

権力には強制力がある。もしも「権力」が存在しなければ、世の中は弱肉強食になってしまうだろう。権力とは人間を幸福にするための、人類の「発明」なのだ。その一方で、権力の濫用は個人の自由を損害してしまう。権力の暴走を抑えるためにコントロールが必要なのだ。

そのために考え出された仕組みが憲法であり、このように権力を憲法で縛ろうという発想を「立憲主義」という。その根底には「絶対的権力は絶対的に腐敗する」「権力は濫用されがち」という権力に対する警戒心がある。

■押さえておきたい憲法と法律の違い

憲法と法律の違いは、その宛先と優先順位だ。憲法は国に向けたルールであり、法律は国民、国、自治体すべてに宛てたルールだ。憲法は最高法規であり、法律は憲法の下にある。だからこそ、憲法違反の法律は無効になるのだ。

「憲法>法律」を実現する方法は、裁判所の「違憲立法審査権」による。憲法81条で「最高裁判所は一切の法律、命令、規則に対して憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と規定されている。つまり、最終的には裁判官によって決定されるが、裁判官は国民による選挙など民主的な方法で選ばれているわけではない。

権力に対して憲法で縛りをかける必要性は先述したとおりだが、たとえ「民意を反映した」政治権力に対してであっても、これは同じだ。多数意見でも侵害してはいけない大切な価値があり、それを憲法によって守る。これが「立憲民主主義」と呼ばれる考え方だ。

「その法律、従いたくない」と思ったら、裁判で「その法律、憲法違反」と主張できないか考えてみることができる。これが憲法の使い方のひとつだろう。

■改憲したらどうなる?

10月18日、衆院選の争点である「改憲」について議論するイベントが横浜で開かれた。その名は、「YOKOHAMAデモクラシー道場」。「明日の自由を守る若手弁護士の会(通称あすわか)」の太田啓子弁護士と神奈川新聞の田崎基記者が登壇した。

YOKOHAMAデモクラシー道場のイベント

自民党が検討している憲法改正の4項目(「9条に自衛隊を明記」「緊急事態条項を創設」「参院選挙区の合区解消」「教育の無償化」)のうち、「9条に自衛隊を明記」「緊急事態条項を創設」の2つを問題視した。

■明記されるのは「新自衛隊」

この改正案で明記されている自衛隊は、安全保障関連法により任務が拡大された「新自衛隊だ」と太田氏は指摘する。安保法が施行される前の自衛隊の任務は、災害救助と国土防衛で、個別的自衛権の枠内に限定されていた。つまり、日本が武力攻撃を受けたときのみ反撃する権利が与えられていた。

しかし、安保法の施行後は集団的自衛権の行使が認められた。個別的自衛権との違いは、日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受けた場合、たとえ日本が直接武力攻撃を受けていなくても反撃ができるようになったことだ。

太田氏は自衛隊を憲法に明記するならば、「自衛隊の暴走を制限する条項も憲法に入れるべき」と主張。任務範囲について明確にし、活動も国会の承認を必要とするなどの規定を設けるべきとした。

■「緊急事態」とは何か

新たに創設されようとしている「緊急事態条項」とは、政府が「緊急事態」と発令すれば、選挙を行わずに「議員の任期延長」を可能とするものだ。田崎氏は、「緊急事態の定義が不明瞭。今後、選挙が行われない可能性もあり、この改憲項目こそが最も危険なトリガーだ」と述べた。

仮に自民党が政権を取った場合、憲法改正の発議を経て国民投票となるが、その時期は「2018年の秋頃」と予想されている。国民投票で憲法改正案に対して、投票者の半数以上の承認が集まったときに憲法改正となる。

国民投票には、最低投票率の定めがない。有権者ではなく、投票者の半数以上で承認となるため、たとえ投票者が3人だけだとしても、2人が承認すると改正が可能となる。

YOKOHAMAデモクラシー道場を主催する柳澤史樹さんは、「今回が『最後の選挙』になるわけではなく、未来にわたっていつでも『最後の選挙にできる権限を与えてしまってもいいのか』が問われている」と投げかけた。


◆政策比較表はこちら「憲法改正」「消費税引き上げ」「原発・エネルギー政策」「環境・ダイバーシティ」をもとに比較


【編集部おすすめの最新ニュースやイベント情報などをお届け!】メルマガ&LINEの登録はこちらから↓
友だち追加
友だち追加



オルタナ50号ではミレニアル世代を特集

第一特集は「ミレニアル世代を動かす6つの法則」

オルタナ50号(9月29日販売)では、「ミレニアル世代」を特集しました。ほかの世代と比べて価値観が異なるこの世代を企業はどう見るべきなのか。6つの法則にまとめました。詳しくはこちら

[showwhatsnew]

お知らせ オルタナSでは、社会問題の解決につながる活動を行う若者を応援しています。自薦・他薦は問いませんので、おすすめの若者がいましたらご連絡お待ちしております。記事化(オルタナS/ヤフーニュースほか)に加えて、ご相談の上、可能な範囲で活動の支援をさせていただきます。お問い合わせはこちらから