途上国で医療活動を行う吉岡秀人医師の「日本の未来を創る若者の育成」というビジョンのもと、一人でも多くの学生に「一歩を踏み出すキッカケ」を提供する特定非営利活動法人ジャパンハート。その学生組織であるHEART’s(ハーツ)代表の有松水彩さんとメンバーの伊藤未菜さん。「学生だからこそ『今』必要とされていることに、みんなで一緒に挑戦し、成し遂げたい」−そう語る眼差しの先には何があるのだろうか。二人に話を聞いた。(聞き手・Readyfor支局=吉田 梨乃)

※有松さんと伊藤さんたちは、クラウドファンディングサービス・Readyforによる国際協力活動応援プログラム「Readyfor VOYAGE」でのクラウドファンディングに挑戦中です!子どもたちが手術を待つミャンマーの病院に医療用ライトを届けるため、200万円の寄付の呼びかけを行っています。寄付の受付は、2017年11月8日水曜日23時まで!<詳しくはこちらから>

支援先のワッチェの病院で子どもたちにバルーンアートをプレゼントした有松さん

——HEART’sで国際医療支援に携わることになったキッカケを教えてください。

有松:小学生の頃からガールスカウトに所属し、その中でのボランティア活動の経験を通して、「人の役に立つ仕事がしたい」と思うようになりました。そこから看護師を目指しはじめ、今は看護学生として勉強に励む傍ら、団体で活動をしています。

去年の夏、実際にジャパンハートの支援地のあるカンボジアの病院に足を運びました。その時に途上国に対して「支援される側」というマイナスな印象を持っていたのですが、現地の人々との交流を通じて、その印象を覆すことができました。

病院で待つ家族の姿を見て人のつながりの温かさを感じ、医療を施すことができない学生である私に対しても心から感謝してくれたんですよね。そんな現地の人々の温かさを身に染みて感じ、心の豊かさや漠然と「本当の幸せってなんだろう?」と考えるようになりました。

今回、医療用ライトを届けることを考えているミャンマーのワッチェ慈善病院へも訪れたのですが、施術室には物が格段に不足しています。その現状を「しょうがないな」と捉えることもできますが、私はどうしても無視できなかったんですよね。

患者さんの家族への愛や、人々の温かさと触れ合うことができたからには何かしらの恩返しがしたい、と思うようになりました。学生は直接医療を施すことはできないかもしれないけれど、学生ながらも出来ることがあると思い、微力ながらメンバー一同、本当に一生懸命活動しています。

伊藤:私はもともと看護師という職業に興味があったことと国際協力への関心を持っていたことが大きいです。中学生の時、難民問題を背景とした舞台を芸術鑑賞で観たのですが、自分の当たり前に享受してきた環境とまるで違った環境があることに愕然としてしまいました。

見えない世界を知ってゾッとした感覚です。そこから私は、自分の知らない世界への「探究心」を持つようになり、国際協力に関連する本や映画をたくさん観るようになりました。特に、映画『ポバティー・インク』で取り上げられていた国際協力の裏側を知った時には、私たちの善意が途上国に悪影響を与えている実態に衝撃を覚えました。

HEART’sに入ったのは、ジャパンハートの創設者である吉岡先生の「学びというのは貯金の作業、必ずアウトプットしなければいけない」という言葉に出会ったことがきっかけです。私自身、看護学生として学んでいたり、映画や本から情報をインプットしていたのですが、何もアウトプットできていなかった自分がいたことに気づきました。

見えない世界への「探究心」を思い起こしてHEART‘sへの入団を決めました。かねてから国境なき医師団に憧れを持っていたのもあって、自ら関心のある国際協力界において看護師という役割の必要性を感じながら、自分も学生ながら何かしらの形で貢献していきたいと思っています。

伊藤さんは看護師に出来る国際協力を模索しつつ勉強に励んでいる

——HEART’sの活動はどのようなことをされているのですか?

有松:HEART’sでは、ジャパンハートが活動する病院への支援や現地に学生を派遣する「学生国際研修」のコーディネートを行っています。また国際協力などのテーマを決めたワークショップイベント、交流会企画など活動は多岐に渡ります。

医療活動をしているNPO法人の学生組織ですが、医療を専門としない学生も一緒に活動しており、ワークショップのテーマも幅広く設定しています。私たちとしては、特定の分野のみにとどまらず、みんなで協力して一緒に何かを成し遂げたいという思いを持ちながら活動していますね。

より多くの人に私たちの活動を知ってもらいながら、支援地の実態を私たちのできるやり方で、様々な形を通して伝えていきたいと思っています。

——自分たちの活動を知ってもらった方々やクラウドファンディングに協力していただいた方にどうなってほしいと考えていますか?

伊藤:私はFacebookで広報を担当しているのですが、「頑張れ」っていう言葉だけではなくて、支援してくれる人も「一緒に」頑張っていきたいと思っています。私たちだけがやるだけでは大きな意味にはならないかもしれないけれど、一人でも多くの方が私たちの活動に興味を持って、支援者の方々も自分ごとのように応援したくなるようなプラスの効果が生まれてほしいです。

有松:極端な話、実際にただライトを届けたいだけなら自分たちで貯金して送ればいいだけのことだけかもしれないですが、クラウドファンディングで寄付を集めることに対して意味があると思っています。クラウドファンディングに挑戦することで、みんなで一緒に達成するという気持ちを共有できるから一人の問題にとどまらないものになるのではないしょうか。

プロジェクトが成功して医療ライト現地に届けることができたら、それはもう私たちだけの課題ではなく、支援してくださった方々と共有したからこそ、一緒に解決課題に意識がシフトしていくのではないかと考えています。

——活動に対する原動力はありますか?

有松:はっきりとは言えないのですが、私はもともと人に喜んでもらうことがとても好きで、目の前にいる人が笑顔になることに、自分も幸せを感じます。それってすごく素敵なことだなって思うんですよね。実際に支援地に足を運んだ時にも、言語も文化も違う私を受け入れてくれる人々の温かさを感じた時に、とても幸せな気持ちで胸がいっぱいになったのを覚えています。ここで必要とされていることがあるならば、今ここでできることを全力でしていくだけです。

伊藤:私も人に喜んでもらうことが好きです。国際協力に興味がある人に共通しているのかな(笑)あとは、自分とバックグラウンドが異なる人と関わることが好きです。色んな価値観に触れ合うことで、自分の世界が壊されて当たり前を覆されるような不思議な感覚を覚えるんですよね。国際協力に置き換えても言えることで、決して自分の当たり前の枠内だけで行動して、一方的なことはしたくないと思っています。自分たちだけが気持ち良かったり、楽しいだけの支援ではいけないんです。

「足るを知る」という言葉にもあるように、現地の人々は確かに貧しいのかもしれないけれど、もしかしたら今のままでも十分幸せなのかもしれない。人間だから何かを与えたら、求めるに決まっている。そしたら私たちのやることはただ一方的なものになってしまうかもしれない。

だからこそ、悪影響を与えずに彼らのより生活の質を少しでも向上させるのが支援者である私たちの役割なのかなと思っています。私は現地にまだ行ったことないから、映画や本はバイアスがかかっているかもしれないです。

しかし、実際現地に行ったメンバーの話を聞くと、現地の人は嬉しさや楽しさも普段の生活の中で私たちと同じように感じているのだとよく聞きます。

そういう現状を目の当たりにするたびに、「困っている人を助ける」いう気持ちをモチベーションにして活動することに悩むことも現実としてはあります。だからこそ、自分たちの当たり前の世界の中でとどまらない現地に寄り添う支援を続けていきたいです。

Photo by Junji Naito 貧困層の方にとってはワッチェ病院が最後の頼り。数日かけて訪れる方も多くいる

——自分たちの支援の先にある現状についてはどう考えていますか?

有松:確かに、私が病院で患者さんの家族が揃いに揃って待っている姿を見て、家族の絆を見て表面的には良いとプラスに捉えていたことは、彼らの裏の部分を見られていないだけなのかもしれないです。

実際に、家族が全員病院にいることは高額な医療費を払えないために、この病院だけを頼りに遠くから家族で来ているという「貧困」という現実が隠されています。ですが、彼らには日本を初めとする先進国の人が失ってしまった「心の豊かさ」があることには変わりはないと私は信じています。確かに、途上国の人々は自営業で生計を立てているため、所得は私たちのように高くありません。でも、例えば日本であったら育休を取るのが難しいという課題もあると思います。

単純に家族を思う気持ちよりも、社会の中で生きて行く上での「決まり」によって、知らない間に私たちは抑圧されてしまい、余裕をなくして「心の豊かさ」をなくしてしまっているのではないでしょうか。

ミャンマーの病院では、人の温かさに数え切れないほど触れ合ってきました。その度に、私は日本とミャンマーのどっちが「幸せ」なのだろうか、と自問を続けます。支援の先にある現状に向き合いつつも、彼らの中に「ない」だけではなく「ある」ものを良さとして大切にする支援にこれからも携わっていきたいです。

伊藤:先日、途上国で問題になっている親がHIVに感染し孤児となってしまった子供たちの問題についての作品を読みました。両親を失ったことで中学生の長女がある日突然、家族の面倒を見て学校に行けなくなる事例が取り上げられていました。

その本を読んで、自分と照らし合わせて考えてみた時に、「私は自分のことしか考えずに生きていた」と思わざるを得ませんでした。少し前まで親から面倒を見てもらっていた娘、かつ学ぶべき年齢にある子供が一家の大黒柱になってしまう現状に胸が痛みました。

もちろん表面上は笑顔を見せながら幸せそうにやってるかもしれないけれど、それ以上に辛い思い経験をしているはずです。彼らの笑顔の裏に隠されているものは一体何か、表面上の理解をとどまらない知識や経験を身につけていく必要があると強く感じました。HEART’sの支援地には行ったことがない私なのですが、日本での2週間の看護実習で患者さんと向き合ってみて同じようなことを実感しました。

大学病院での実習では、看護師さんは忙しさの中で、患者さんの背景を全て読み解くことがどんなに難しいのかを思い知りました。

しかし先日、訪問看護のインターンに行った時は、実際に患者さんのお家に訪れることもあって、患者さんと信頼関係を築いた上で医療を施している場面に遭遇しました。

その時に、相手の置かれている現状や表面上の理解にとどまらず、きちんとコミュニケーションをとりながら相手と信頼関係を構築していき、必要なことを見出していくことの重要性に気づかされました。

学生だからできる支援を考え、挑戦していく

——最後に、クラウドファンディングに対する思いを聞かせてください。

有松:今回の挑戦は、「今」まさに現地で必要とされているものだからこそ成し遂げたいと強く思っています。「自分が大人になってからやればいいか…」と思うのではなく、今この瞬間に求められているこのタイミングでやることに必要性を感じています。

そして、私たちだけの力では成し遂げることができないこのプロジェクトをみんなで「一緒に」挑戦したいです。今必要とされていることに対して、学生という縛りにとらわれずにできることやる覚悟と強い意志を持ち合わせながら、挑戦していきたいです。

伊藤:私たちはまだ10代の未熟な学生で、でもだからこそ未来に期待を持っています。ある意味、成功を信じて目標に向かって一生懸命できることに取り組んでいくことができます。

わがままかもしれないけれど、それをいつまでも信じさせてくれる大人の方々がいたらいいなって思っています。「頑張れば結果がついてくるんだ」ということを証明していきたいし、支援してくださる方々の心を揺さぶりたいんですよね。

ミャンマーのことへの共感や私たちの頑張りに対する応援をしていただけることはもちろん、私たちと一緒に走り抜けていきたいんです。学生だから無力な部分はあるし、これからもたくさんの限界に直面すると思います。

だからこそ、自分たちなりに精一杯やる姿勢や、誠意を大事にしていくべきだと感じています。学業との両立の中で学校のレポートをやりつつも、クラウドファンディングの広報活動を行ったり、両方のことを全力でやりたい気持ちもあるけれど、大変な部分も正直あります。

けれども、成し遂げたいからこそ、自分たちの可能性を捨てずに、諦めずに挑戦し続けたいんです。少しでも私たちに力を貸していただけたら本当に嬉しいです。ミャンマーの子どもたちのためにどうかご支援、ご拡散をよろしくお願い致します!

ぜひ下記の画像をクリックして、私たちの挑戦をご覧いただけますと幸いです。


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