3年以内で離職する美容師の割合は約7割とされるなか、創業4年間で離職率0を更新し続けている美容室がある。東京・銀座を中心に国内外に美容室とまつげサロンを7店舗構えるLond(ロンド)だ。専門学校時代の同級生6人で立ち上げた同店は、従業員第一主義を貫き、CSR(企業の社会的責任)にも力を入れる。(オルタナS編集長=池田 真隆)
銀座に構える第一号店はパリのホテルをイメージした上質な空間。10時の開店から夜11時まで、客足が途絶えることなく、月に20~30代の女性を中心に1300~1500人が訪れる。
カットはシャンプー・ブロー込みで4680円からと低価格だが、技術や接客が支持され、「HOT PEPPER Beauty AWARD2017」の「BEST SALON GOLD Prize」に輝いた。国内には美容室を銀座に3店舗、錦糸町に1店舗、そして今年10月中旬にはジャカルタに店舗を出し、初の海外進出を果たした。
■創業から最低保証給と社会保険を完備
「スタッフが豊かでなければ、お客様を幸せにできないのではないか」――。共同創業者の石田吉信さんは取材時に何度も口にした。その問いからLondのコンセプトを設計していき、従業員の働きやすい環境を徹底的に追及してきた。
2013年の創業時から社会保険を完備し、スタイリストには指名が取れなくても最低保証給として24万円を設定した。
従業員を大切にする考えは、創業者の原体験から来ているという。Londは専門学校時代の同級生6人で立ち上げた。6人は学生時代に、「技術を磨いて、いつか一緒に店を構えよう」と約束し、卒業後はそれぞれ表参道や青山などの有名店に就職した。
しかし、そこで待っていたのは、先輩からの理不尽な指導や労働時間の割には低い待遇だった。「アシスタント時代の先輩の伝え方にもう少し工夫があれば受け入れやすいと思っていた。その『言葉の刃』は教育に必要なのか疑問に思っていた」と石田さんは言う。
このときに問題視した、「指導の仕方」「常態化している長時間労働」「手取り12~3万円ほどの低賃金」を自分たちの店では改善したいと決めていた。
いまの従業員第一主義では、スタイリストとアシスタントの人員バランスを変えて、1人当たりの生産性を上げた。経営陣が給与を取り過ぎないようにして、完全歩合制40%のフリーランスと同等の給与体系を実現させた。
完全週休2日制や育児休暇から復帰した社員にも柔軟な働き方を提供している。現在、社員は50人ほどだが、創業から離職率は0を誇る。
■CSRで社会的地位向上へ
CSRにも力を入れて、月に1回は店舗周辺の地域での清掃活動を始めた。現在は、解決する社会課題や美容室の社会的責任について、社内で話し合っている段階だ。石田さんは、「美容師はお客様と2時間ほど一緒にいるので、カウンセラー的存在にもなれる。商売している地域にも感謝して、美容室の社会的地位を向上させていきたい」と話す。
■Londの公式サイトはこちら
◆オルタナ50号ではミレニアル世代を特集