ふるさと納税を通じて寄付を受け取る自治体が、複数のNPOなどと連携することで、社会課題解決の力を何倍にも増幅する事例が増えつつある。分野を超えた連携は、コレクティブインパクトと呼ばれる課題へのアプローチだ。複数団体による課題全体への取り組みは抜本的な課題解決につながり易く、外からでも課題の全体像が整理、可視化されるため寄付者のモチベーションやエンゲージメントを得やすいという利点がある。(オルタナ編集部=沖本 啓一)

社会課題を解決する有効な手段として注目が集まる「ふるさと納税」だが、ほとんどの課題は自治体だけの力では解決が難しい。そこで自治体はNPOと連携する必要が生まれる。これまで、多くの自治体は集まった寄付金を単独のNPOに託し、課題を解決してもらう方法を取っていたが、最近では変わりつつある。

ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」に掲載されるGCFには、複数のNPOが関わるプロジェクトが散見される。文京区のふるさと納税プロジェクト「こども宅食」では、文京区と5つの非営利団体がコンソーシアム(共同体)形式で課題解決に取り組み、それぞれが得意な分野を生かしてプロジェクトに貢献する。

特徴的なのはコンソーシアムを組む団体が全て並列の関係にあることだ。「子ども宅食」の例では、NPO法人フローレンスが全体の企画と広報などを担当し、キッズドアが実際の食糧の配送、ケースごとの管理をする。社会事業コーディネーター集団の社団法人RCFは企業とのコーディネートを担当し、企業がプロジェクトに協力する窓口となる。日本ファンドレイジング協会は具体的なインパクトを評価する役割を持つ。

行政も例外ではない。文京区はプロジェクトの参画者として積極的に課題解決に関わる。ふるさとチョイスを運営するトラストバンク(東京・目黒)のGCF/災害支援グループのリーダー、浪越達夫氏は「地域の課題の情報発信や、規模感の把握、ネットワークの形成など、行政も得意とする分野があります。納税窓口としてだけでなく、自治体の力も必須です」と話す。

「コレクティブインパクトでは、課題の解決のためにどのような取り組みが必要なのか、寄付する人にも伝わりやすく、課題の発生から解決までの流れが可視化されます。それによって共感を得られ、寄付する側の満足感も大きくなります」(浪越氏)というように、寄付者と取り組む団体の全体に「共感」が生まれ、課題解決への実行力が膨れ上がるという。

ふるさと納税制度を利用したコレクティブインパクト事例は先の「子ども宅食」の他、若者の海外留学支援「トビタテ!留学JAPAN」や佐賀県発で子どもの貧困問題に取り組む「子ども救済システム」など、どんどん増えつつある。

複数の事例から、ふるさと納税を資金源としてコレクティブインパクトをどのように課題解決に生かすのかを考えるシンポジウム「コレクティブインパクト×ふるさと納税フォーラム2017」が、12月6日に開催される。当日はNPO法人ピースウィンズ・ジャパンの大西健丞氏や、フローレンスの駒崎弘樹氏など、コレクティブインパクトを活用した実績を持つさまざまな人が登壇する予定となっている。

【コレクティブ・インパクト×ふるさと納税フォーラム2017】
開催日時:2017年12月6日15時~18時50分
開催場所:東京国際フォーラム(東京・千代田) ホールB5
定員:300枚(先着申込み順)
参加費:無料
イベント詳細⇒ https://www.furusato-tax.jp/collectiveimpact/index.html


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