京都市は2016年にソーシャルイノベーションクラスター構想を掲げました。「社会貢献」や「信頼」、「関係性」といった「目に見えない価値」を経済で循環させていくことで、社会をよくしていこうと宣言して、産官学金融協働のソーシャルグッドなプロジェクトやイベントなどをいたるところで行ってきました。(詳しくはこちら

今回は、WorldShift コミュニケーターであり、環境番組の放送作家、京都造形大学の教授でもある谷崎テトラさんと、日・中・韓の芸術文化や伝統文化などの促進や交流を目的とした『東アジア文化都市2017京都』を契機に、チェンジメーカーとなる創造的実践者を紹介するメディア『PLAY ONを立ち上げた、一般社団法人リリース共同代表の桜井肖典さんを訪ねました。

2018年2月4日、京都造形大学内にある京都芸術劇場 春秋座で「Worldshift京都フォーラム2018」が開催されます。観光だけでなくソーシャルムーブメントもますます盛り上がりを見せる京都。この動きの渦中にいるキーパーソンのお二人に、変わりゆくこれからの時代に向けて必要な視座、意識のあり方についてお話を伺います。(*この記事は4本あります。こちらは(4/4)の内容となりますので、まだ(1/4)から見ていない方はこちらから読んでいただくことをおすすめします。

地球は宇宙船。地球市民は全員がミッションを持った「プレイヤー」

テトラ:リーマンショック直後の2009年、ラズロ博士は今(当時)の地球は危機的状況にあって、22世紀までに文明を維持できない理由が100以上あると言いました。社会・生態系・経済、この3つの大きな危機があると。

しかし、これらは地球環境にいいことをしようというレベルでは解決できない。そこで文明そのものを転換し、人類のマインドセットを変えないといけないと博士はお話しされました。人を殺したり環境を破壊するのは文明とは言えないのではないか。新しい人類の文明をつくる必要があると提唱されたんですね。博士は、この危機は人間が人間らしくいられる文明を始めるためのチャンスなんだとおっしゃっています。

「World」と「Shift」の間にスペースがないワンワード。環境問題、ジェンダー、人権問題などの問題に取り組む人は、このワードを聞いた瞬間にピンとくる人もいると思います。自分は、文明の転換期のための仕事をしていたんだとね。それぞれの仕事を通じて社会を変えていく。今、そのような動きが、世界中で始まっていますよね。

桜井:僕は『WorldShift』の言葉を聞いた瞬間ピンときたんです。これはパラダイムシフトのことなんだと思いました。社会を変えると言っても、これまでのマインドセットから変えないと変化がこれまでの問題を拡大してしまう。そもそものマインドを変えることが大事ですよね。

テトラ:そう。1968年12月24日にアポロ8号が月軌道に到達し、人類が初めて外から地球を見て、パラダイムシフトが起きた。およそ50年前に変化が始まって、人類のマインドセットが変わった。そこから1980年代に入って、ハーマン・E・デリー氏が「エコロジー経済学」を発表するまで、無限に成長していくという効率主義が前提で経済学が成り立っていたんですよね。

実は、僕のテトラという名前は、R.バックミンスター・フラーの「テトラスクロール」からとったんです。バックミンスターは、著書『宇宙船地球号操縦マニュアル』のなかで、宇宙船では食料・水・空気が限られた環境であり、宇宙船のなかで排泄物を処理しないといけないという状況について話しています。

そこから出た廃棄物は宇宙に捨てるわけじゃなくて、閉じられたところで循環させないといけない。宇宙船は旅客機じゃないし、運転手がいてお客さんがいるのではなくて、乗っている全員がミッションを持っている。全員がプレイヤーなんだと。

そして彼は、地球も宇宙船なんだと言ったんですね。僕たち地球に住む全員がミッションを持った乗組員なんです。『PLAY ON』の話を聞いたときに、僕はこの話につながったわけです。

桜井:青い地球を見たあとの世代、ネクスト人類の僕らからマインドを変えていかないといけないですよね。僕が今回『PLAY ON』をつくったのは、ただ「LIVE(住む)」「WORK(働く)」だけではなくて、「PLAY(遊ぶ)」をしようというところからなんです。

「PLAY」は自分の心が踊るし、目的がない状態でも始められる。これまでのマインドセットの延長線上の目的では心が動かないことに、実はみんな気づいていると思うんです。それでもなかなか動き出せないのは、動いた先に経済的価値や社会的価値を生むのかということを先に心配してしまう。

アートがそうであるように、それは未来の社会が決めればいい。プライベートにアートすることが「PLAY」だし、今僕たちが信頼する価値観も先人たちの「PLAY」の積み重ねにあると思うんです。

芸術がアーティストだけのものじゃなく、つねに身近なところにあるように。芸術へのハードルを下げるために、芸術をみんなで考え芸術をする機会やきっかけをつくっているのが『PLAY ON』なんです。

新しい時代に向けて『WorldShift』でマインドセットを。そして『PLAY ON』でかたちにしていく。

テトラ:毎年『WorldShift 元年』と言っていて、誰でも始めたら元年になるわけです。これにコミットしなかったら始まっていないわけで。毎年新しい『WorldShift』の実践者である「シフター」をつくりあげていくことが僕のミッションですね。

桜井:書いたコミットメントを書いたまま終わらせないために、何を始めると一歩踏み出せる、シフトし始められると思いますか?

テトラ:多様に集まる人がそれぞれが活動している場があるから、まずは気になる人や気になる場所に行ってみるのは手。

『WorldShift』は、0から1にする活動だけれど、これを社会運動にするには0を100にしなければいけなくて、それにはツールが必要となってくる。先行する概念はあるんだけど、ツールや仕組みを実装させることでソーシャルデザインできる。

その社会実装はまだできていない気がするな。そこはぜひ『PLAY ON』してもらえればいいと思うし、今年のフォーラムには海外からいろんな人がくるから、そういう人たちと『PLAY ON』したいですね。

【WorldShift 京都フォーラム】

https://wskf2018.peatix.com/

2018/02/04 (日)13:00 – 18:00@京都芸術劇場 春秋座(京都造形芸術大学内)

http://k-pac.org/

谷崎テトラ:
京都造形芸術大学教授/放送作家 1964年生まれ。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。プロフィール詳細はこちら:http://tetra4.wixsite.com/home/profile

桜井肖典:
1977年生まれ。2000年よりデザインコンサルティング会社を経営後、企業や自治体との事業開発を経済における広義のアートと位置づけ、京都を拠点に年の半分近くは国内外を移動しながら「芸術と社会変革のあいだ」で、ひと・もの・ことの営みを幅広くプロデュースする社会芸術家であり起業家。共著に『青虫は一度溶けて蝶になる(春秋社)』がある。一般社団法人RELEASE; 共同代表、オンラインメディア『PLAY ON』編集長、京都市ソーシャル・イノベーション研究所コミュニティ・オーガナイザー。http://release.world

取材協力:shiny owl cafe


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