京都市は2016年にソーシャルイノベーションクラスター構想を掲げました。「社会貢献」や「信頼」、「関係性」といった「目に見えない価値」を経済で循環させていくことで、社会をよくしていこうと宣言して、産官学金融協働のソーシャルグッドなプロジェクトやイベントなどをいたるところで行ってきました。(詳しくはこちら)
今回は、WorldShift コミュニケーターであり、環境番組の放送作家、京都造形大学の教授でもある谷崎テトラさんと、日・中・韓の芸術文化や伝統文化などの促進や交流を目的とした『東アジア文化都市2017京都』を契機に、チェンジメーカーとなる創造的実践者を紹介するメディア『PLAY ON』を立ち上げた、一般社団法人リリース共同代表の桜井肖典さんを訪ねました。
2018年2月4日、京都造形大学内にある京都芸術劇場 春秋座で「Worldshift京都フォーラム2018」が開催されます。観光だけでなくソーシャルムーブメントもますます盛り上がりを見せる京都。この動きの渦中にいるキーパーソンのお二人に、変わりゆくこれからの時代に向けて必要な視座、意識のあり方についてお話を伺います。(*この記事は4本あります。こちらは(3/4)の内容となりますので、まだ(1/4)から見ていない方はこちらから読んでいただくことをおすすめします。
■真の美しさを問い直し、社会にアートを実装する「ソーシャルデザイン」
桜井:僕は1600年くらいからの地球史について学生たちと授業をやったことがあって、技術の進歩、政治の変化、戦争、思想、農や医療など、世界で何があったかをポストイットで貼っていくんです。そこでわかったのが、思想が先に出てきて、そのあと技術が少し遅れてやってきて、技術が民間の意識を開いて、デモクラシー的に民意が変わったときに、かつての思想を社会の変化の拠り所として再共有するところで社会が変わる図式ができているんじゃないかってなんとなく思って。
テトラさんの地球史的な思考からすると、世界が変わるときに何がどの順番で起きるのかが聞きたいなと。
テトラ:確実に言えるのは、抽象度が高い概念はなかなか理解しづらいから遅れて出てくるということ。そして、技術もしくは仕組みが生まれたときに社会が変わる。だからデザインなんです。
デザインに先行するのがアートですが、アートの語源的にいえば、技術そのものな訳です。美学的という考え方にも現れていますが、最終的にアートと言われている概念は、美しさに気づくこと。何が美しいと感じるかが先行するんですね。
そして、そのアートを社会生活に実装することができるわけで、そのことをクリエイティブと言っているわけですね。京都造形大学が芸術立国と言っているわけですけれども、これは、すべての人がアートやクリエイティビティで世界を変えていって欲しいとの思いが込められています。すべての仕事にクリエイティビティを入れられると。
大概の芸術大学は、1,000人の生徒のなかで一人の天才を生み出そうとする。その一人以外は諦めて就職するっていう芸術家のスタート。京都造形芸術大学はそうではなくて、1,000人が1,000人、すべての仕事に芸術を持ち込む人材を養成するってことをやっている。芸術家をつくるのではなくて、社会に芸術を持ち込む人材をつくる。それは似て非なるもの。
桜井:そう、こういう時代だからこそ、僕らの活動はアートだと思うんです。美しさを感じる活動をテトラさんは『WorldShift』というミュージアムとして見せようとしている。そこに環境意識はもちろんあるんですけど、それだけではなくて、人間としてそれは美しいと思うかどうかをみんなでみましょうよってことなのかなって。それさえ共有できれば、人はクリエーションできますよねっていう問いかけをするテトラさんの姿勢に、僕は深く共感します。
テトラ:ありがとうございます。それで言うと『WorldShift』の活動は、一言で言うと「巨大な社会彫刻」なんですよね。ヨーゼフ・ボイスが唱えている「社会彫刻」に相当すると思うのですが、すべての人がすべての仕事を通じて、社会という巨大な彫刻をつくりあげているという考え方。
それがまさに今回の『WorldShift』のテーマで、それぞれのシフトやビジョンをどういう形で自分のミッションにつなげていくか?ということを宣言する、社会彫刻の場なんですね。
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【WorldShift 京都フォーラム】
2018/02/04 (日)13:00 – 18:00@京都芸術劇場 春秋座(京都造形芸術大学内)
谷崎テトラ:
京都造形芸術大学教授/放送作家 1964年生まれ。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。プロフィール詳細はこちら:http://tetra4.wixsite.com/home/profile
桜井肖典:
1977年生まれ。2000年よりデザインコンサルティング会社を経営後、企業や自治体との事業開発を経済における広義のアートと位置づけ、京都を拠点に年の半分近くは国内外を移動しながら「芸術と社会変革のあいだ」で、ひと・もの・ことの営みを幅広くプロデュースする社会芸術家であり起業家。共著に『青虫は一度溶けて蝶になる(春秋社)』がある。一般社団法人RELEASE; 共同代表、オンラインメディア『PLAY ON』編集長、京都市ソーシャル・イノベーション研究所コミュニティ・オーガナイザー。http://release.world
取材協力:shiny owl cafe