「親と一緒に過ごせるうちは良いけれど、自分が亡き後、わが子は生きていけるのだろうか。それが可能な社会なのだろうか」——。福岡で、知的障がいを持つ子どもの父親が立ち上がり「父親だけの障がい者支援団体」を設立しました。障がい者を隔離するのではなく、抱えている課題を共有することで誰も排除しない社会づくりを目指します。(JAMMIN=山本 めぐみ)

■父親だけの障がい者支援団体

一般社団法人「福岡おやじたい」メンバーの皆さん

福岡を拠点に活動する一般社団法人「福岡おやじたい」。その名前の通り、活動メンバーは、障がいのある子どもを持つ「お父さん」たちです。

「メンバーは全部で16名。61歳から38歳までの、職業や職種、生活環境が異なる父親が集まって、障がい啓発活動を行っている」。そう話すのは、福岡おやじたいのメンバーの一人、財津英樹(ざいつ・ひでき)さん(46)。

お話をお伺いした財津英樹さん。娘の環ちゃん(5)と

「家庭にもよるが、母親はどちらかというと子どもに寄り添い、より近いところでサポートできることが強み。一方で父親は、母親と比較して社会との接点が多いことが強み。この強みを生かしながら、各自の人脈を使い、いかに障がいのある子どもたちの将来に貢献できるかが私たちの役目」だと活動について語ります。

■親亡き後も、障がいのあるわが子が受け入れられる社会を

今年1月に福岡市で開催されたイベント『笑顔と絆のスクラム Part4 共に生きる社会の実現を目指して』は、今年で4回目の開催。会場は満員御礼となった

財津さんの一人娘、環ちゃん(5)は、ダウン症を持って生まれてきました。

「『子どもに接する期間はあとどれくらいだろう?』とこの先を考えると、そう長くはない。私や妻亡き後、この子はどうやって生きていくのだろう?と不安に感じた。障がいに対して専門知識があるわけではないが、活動を通じ、わが子が社会と関わり、助け合って生きていけるようような環境を作っていきたい」と話します。

2ヶ月に1度開催している「MAZEKOZEセミナー」の様子。セミナーやシンポジウムで扱うテーマは、障がい者支援や触法など多岐に渡る

「福岡おやじたい」は、広く一般の人に障がいについて知ってもらおうと、これまで数々のセミナーやシンポジウム等を開催してきました。障がいとの共生に取り組んでいる福祉施設を紹介したり、障がい者の抱える課題を発信しながら「誰も排除しない社会」の実現を目指しています。

■父親が関わることで、周囲の反応も変化

「福岡おやじたい」理事長の吉田正弘さんと幼少期の息子の陸人さん。自閉症で最重度の知的障がいを持って生まれた陸人さんにはてんかん発作の持病があり、生活には全面的な介護が必要。吉田さんはそんな中で、子どもの未来を変えるために立ち上がった

娘の環ちゃんが生まれるまで、ビジネスマンとして昼夜関係なく忙しく働いてきたという財津さん。環ちゃんが生まれてからも、しばらくその生活は変わらなかったと言います。しかし奥さんからのSOSで、娘との時間を作るために転職を決意。

「いざ娘との時間ができると、見えてきたことがたくさんあった。子育て自体もそう。妻に任せるのと、自分も携わるのとでは、感じることが全然違った。障がいのあるわが子に降りかかる目の前の課題を解決しようと動いてみると、大変だと感じることもたくさんあり、到底妻一人で抱え込めるものではないと感じた」と当時を振り返ります。

環ちゃんは、障がいを理由にいくつもの保育園で入園を断られました。

「父親として一緒に保育園に出向いたことで、妻が楽になった部分もあるし、先方も真摯に受け止め、聞く耳を持ってくれたように思う。父親である自分が子育てに携わることで、周囲の反応の変化を感じた」と言います。

■多様性を受け入れる「やさしい社会」を目指して

福岡おやじたいメンバーの一人、日高大輔さん・歩望くん親子。10歳になる歩望くんは未熟児で生まれ、水頭症と診断されたが手術で完治。手足に麻痺があり、食事や排泄には介助が必要。自力での歩行は困難だが、3年ほど前に両足を手術してリハビリ中

娘と過ごす中で、自身の意識も大きく変化したと財津さんは言います。

「娘が生まれるまでは、それこそ効率重視で、効率のわるいことはバッサリ切リ捨て、人間関係も信頼もないような世界でがむしゃらに働いていた。娘の成長を見ながら、『それは違うんじゃないか』と思うようになったし、人として学ぶことがたくさんあった。娘が障がいを持って生まれてきたからこそ、目を開かせてもらった部分がある」

「人にはそれぞれ個性があり、得意不得意もある。いろんな歯車が絡み合って、社会が成り立っている。それぞれが個性を生かし、互いを尊重しながら、自分らしく生きていくことができるということを、娘から教えてもらった」

「障がいのある人も、ない人も、“隔離”ではなく“共有”することで、やさしい社会が創られていくのではないか。一緒にいる中で、自然と支え合う関係が生まれたら理想。そのためには互いを知るために一緒にいる空間をもっと増やしていくこと大切」

■「福岡おやじたい」の活動を応援できるチャリティーキャンペーン

『笑顔と絆のスクラム Part4』では、ダウン症の書家・金澤翔子さんが書を披露した。力強いメッセージが込められている

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、「福岡おやじたい」と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。

1アイテムにつき700円が「福岡おやじたい」へとチャリティーされ、集まったチャリティーは、より広く障がい啓発活動を行うため、障がいをテーマにしたセミナーやイベントを開催するための資金になります。

「JAMMIN×福岡おやじたい」1週間限定のチャリティーデザイン(ベーシックTシャツのカラーは全8色。他にスウェットやパーカーなどあり

JAMMINがデザインしたアイテムに描かれているのは、クロスした2本のハンマー。家族であり仲間でもある「親子の関係」を表すと同時に、実はこの2本のハンマー、漢字の「父」のかたちをオマージュしたもの。子どもの将来のため、道を切り拓くお父さんと、そんなお父さんに勇気をくれる子どもの関係を表現しています。

チャリティーアイテムの販売期間は、2月5日~2月11日までの1週間。JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、福岡おやじたいの活動について、財津さんのより詳しいインタビューを掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

「父ちゃんたちは、共生社会を目指してがんばるぜ!」 父親だけの障がい者支援団体〜福岡おやじたい

山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。

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