日本のTPP(環太平洋経済連携協定)参加で最も懸念される事態は、市場における「不等価交換」の更なる促進だ。 例えば、農産物や介護に代表される地域内のケア労働が典型だが、これらは市場経済では不当に低い価格で流通されている。
こうした商品やサービスは共同体の維持と発展に不可欠であるにもかかわらず、短期的な時間軸に基づき、効率やコストの面でしか評価されない。 私はコミュニティを中心に研究を続けており、大量消費社会の行き詰まりが明らかな今、特に食糧やエネルギーにおける課題の解決はローカルなレベルから行うべきだと考える。 TPPを巡っては、ローカル化を是とする立場であっても参加に肯定的な人がいることは承知している。
それを否定はしないが、市場経済では、地域を守る政策的な対応も必要だ。 具体的には農作物の価格維持や農業版ベーシックインカムなどを提唱するが、大都市が地方に安価に依存している現状では、都市から地方への再分配が欠かせない。私には都市と地方との関係が、先進国と途上国の関係に重なって見える。 TPPへの参加で、こうした傾向が更に強まることを懸念する。 (聞き手・斉藤円華)