武蔵大学社会学部メディア社会学科松本ゼミでは、フィールドワークを行い、学生たちが地方新聞社などを取材した。近年、若者の新聞離れが叫ばれているが、「新聞の若者離れ」も起きている。地方紙は存続をかけてどのような戦略を取るのか。第5弾として、長野県松本市に本社を置く市民タイムスを紹介する。
近年、紙媒体の新聞の発行部数が減少している。この10年間で1割近く読者を減らした新聞社も少なくない中、2007年から昨年までの読者減少率を約2%に抑えた新聞社がある。長野県松本市で、地域紙という特性を生かし地域に必要とされる紙面づくりを行う「市民タイムス」を取材した。(武蔵大学松本ゼミ支局=武蔵大学社会学部メディア社会学科3年・岸川詩野)
同社は、半世紀ほど前の1971年10月に創刊。発行エリアは、長野県の松本、木曽、長野、塩尻、安曇野の5箇所だ。創刊当初は「松本市民タイムス」という名称で松本市内のみを発行エリアとし、1日の発行部数は2000部、紙面も僅か4枚で構成されていた。現在では紙面も大幅に増え、毎日6万8000部を発行している。2018年4月時点での発行エリア内の世帯普及率は、52.23%と半分以上のシェアを誇る。2003年からは電子版の発行も行っている。
新聞社のユニークな紙面づくりの1つとして、先述した5箇所の市町村それぞれの地域の記事が毎日一面に来るようにしていることが挙げられる。自分が住んでいる地域の記事が一面に載る事は、その地域の読者にとって関心を寄せやすいことではないだろうか。
一面記事には、地域で発生した事件事故を大きく取り上げるのではなく、市民生活に密接に関わる行政の情報や、市民の近況などを中心に掲載しているのが印象的であった。紙面には市民の寄稿枠も用意されており、新聞社と読者の距離の近さを感じられた。
ふたつ目のユニークな紙面づくりとして、遠方の重大事件などを除いて殆どの記事を同社の記者が署名記事として執筆を行っている。多くの新聞社はニュース配信を行う時事通信社から記事の情報提供を受けているが、市民タイムスはここからの情報提供を受付ていない。
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