病気や事故、自死、犯罪、災害などで親やきょうだい、祖父母や友達を失った時、子どもは悲しみや深い喪失感に襲われ、大人以上にさまざまな思いや反応を抱えます。こういった子どもたちをサポートしたいと活動するNPOに話を聞きました。(JAMMIN=山本 めぐみ)
大切な人を亡くした子どもたちをサポート
福岡市を拠点に活動するNPO法人「こどもグリーフサポートふくおか」。大切な人を亡くした子どもが集い、安心して過ごせる場を提供しています。
「現在は小学生くらいまでを対象にした『子どもの集い』と、10代を対象にした『10代の集い』を、年間計10回開催しています。また、子どものグリーフに携わることができる人を増やすべく、ファシリテーター養成講座も年に1度開催しています」と話すのは、代表理事の秋田寛子(あきた・のりこ)さん(36)。
秋田さんは、高校生の時に2歳離れた姉を交通事故で突然失いました。
「悲しい、つらい、会いたいという気持ちと同時に、自分が悪かったのではないかという思いにとらわれました。こんなに簡単に人はなくなるのだと思うと、当たり前に過ごしていた日常が、安心できないものになっていました」と当時を振り返る秋田さん。
その後、グリーフサポートに興味を持ち学ぶ中で「怒り、悲しみ、苦しみ、喪失感、描いていた未来のイメージが無くなること…こういった自分の経験や思いはすべてグリーフであり、何らおかしいことではなく、自然のことだったということを知った」といいます。
「こどもの集い」「10代の集い」では、大切な人を亡くした子どもが、自分の意志で生きていく力を取り戻すためにサポートをしているといいます。
「子どもが自分で決める」ことを重視
集いでは、参加する子どもたちが「自分で決めて、自分で行動する」ことを大事にしていて、サポートするファシリテーターも、子どもが自分で決めて行動できるように徹底しているのだそう。その理由を尋ねてみました。
「『大切な人を亡くす』というどうにもならないことを経験した時に、無力感に打ちひしがれ、『自分の力で何かに取り組む』という気持ちが失われてしまう子どもたちは少なくありません。『何もできない』というところから、何をやる・やらないも含め、自分の意志で選択し、その通りに過ごせる空間があること、そして、その周りに共に過ごす人がいることで、生きていく中で自分のペースを取り戻し、人生をもう一度、自分でコントロールできるようになるためのサポートになるといいな、と思っています」(秋田さん)
さらに当事者同士が集まるということが、子どもたちにとっても自分らしく居られる一つのきっかけにもなるといいます。「大切な人を亡くしていても、子どもたちが学校生活のなかであえてそれを話せるような機会はありません。『自分だけ違う』とか『触れられたくない』という気持ちから、心にバリアを張ったり、本当には傷ついていても何もないように振舞ったりする子どももいます」とスタッフの内田裕子さん(うちだ・ゆうこ)さん(37)。内田さんは、小学6年生の時に父親をがんで亡くしました。
「中学校に入ってからは、思春期ということもあったし、環境的にもなかなか個人の経験を話せる機会はなく、傷つく質問を受けることもありました。人の死・家族の死がタブーという雰囲気があって、保護者の名簿が配られた時に、通常はお父さんの名前が書いてある家庭が多かったのですが、私だけ母の名前が書いてあって、それでハッと私の方を見る子もいました」と当時を振り返ります。
「家族だからこそ、話せないこともある」
「大切な人の死について語ることができないという状況は、家族の中でも起こり得る」と二人。
たとえばきょうだいを亡くした時、遺された子どもが心配をかけまいと親の前で自分の感情に蓋をして明るく振る舞ったり、期待に応えよう、いい子でいようと頑張りすぎてしまったりすることがあるといいます。
「子どもは親のことを考え親は子どものことを考えながら、どちらも一生懸命に生きています。でも、だからこそ『頑張らなきゃ』と思いがちなところもあるかもしれません。元気な姿を見せたら安心するから、家族の前で無理して笑顔をつくってしまう。でも、それはどこかでひずみとなって自分に戻ってきてしまいます。もちろん、家族だから分かりあえることや思い出の共有などもありますが、家族だから何でも話せるわけではなく、家族だからこそ、話せないこともあるのではないでしょうか」と内田さん。
「『自分は亡くなった家族の話をしたいけど、家で亡くなったお父さんのことを話すと、お母さんが悲しむかもしれない』など、子どもなりに気にして家族には話せないこともある」と指摘します。
子どもたちの「受け皿」に
子どもと関わるファシリテーターには、子どもたちが安心して過ごせる安心な空間を作ること、そこで子どもたちとグリーフワークの場を共有するための知識とスキルが求められます。「集いの中では、全部子どもたちに教えてもらう、扱ってもらう、どうやるかも教えてもらう。そんな姿勢を大事にしている」と二人は話します。
「ファシリテーターの『ファシリティー』という言葉には、『受け皿・器』といった意味があります。あくまで私たちは受け皿で、主導権は子どもたち。『私という個人として子どもたちに好かれる』ために振る舞わず、その場にいる私たちでさえ、子どもが選ぶツールのひとつ、という考え方です」(内田さん)
「子どもがこういう態度だったら多分こうなんじゃないかとか、こういうことを言うのはこう思っているからなんじゃないかとか、大人は状況を分析します。そうではなくて、子どもが言っていることをそのまま直接受け入れること。どんな意味を含んでいるかを中心にせずに子どもと関わることを大切にしています」(内田さん)
「グリーフは、誰しもの身近にあるもの」
「退職や引っ越し、妊娠・出産など一般的におめでたいことでも、人生における様々な変化はグリーフを伴うことがあるため、そういった変化もグリーフと呼ぶことができ、そういう意味では、グリーフは誰しもの身近にあるもの。大なり小なり必ず誰しもが人生のどこかで誰かを失うことを経験し、この世からグリーフが無くなることはない」と二人。
「時間が経ったりサポートを受けたりして少しずつグリーフが小さくなっても、ふと何かのきっかけで心が揺らいだり、記憶や感情が蘇ってきて圧倒されることもあります。でも、自分の経験や過去を消し去ることはできません。グリーフと共に、生きていく道を探っていくことが大切です」(内田さん)
「これだけ身近にありながら、サポートの必要性がまだまだ一般に浸透していません。特に子どもの場合は、自分からグリーフサポートにつながるということは難しいです。グリーフサポートが必要な子どもとつながるためには、まずは大人にグリーフサポートの大切さを知ってもらうことが重要だと思っていて、啓発活動にも今後もっと力を入れていきたいと思っています」(秋田さん)
「子どもの集い」運営のための資金を集めるチャリティーキャンペーン
チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、「こどもグリーフサポートふくおか」と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。「JAMMIN×こどもグリーフサポートふくおか」コラボアイテムを買うごとに700円がチャリティーされ、「子どもの集い」「10代の集い」を運営する資金となります。
JAMMINがデザインしたコラボデザインに描かれているのは、大自然の上に広がる太陽や雲、雨や虹が出た空。いろんな感情や思い、そのどれもが自然なもの。自分らしく自由に、自らを信じて生きてほしいというメッセージを込めました。
チャリティーアイテムの販売期間は、9月2日~9月8日の1週間。チャリティーアイテムは、JAMMINホームページから購入できます。
JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。
・死別により大切な人を亡くした子どもが、「自分の力を取り戻す」サポートを〜NPO法人こどもグリーフサポートふくおか
山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしている京都の小さな会社です。創業6年目を迎え、チャリティー総額は3,500万円を突破しました。
【JAMMIN】
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