財務情報と非財務情報の違いを知っているだろうか。おおまかに区別すると、財務情報とは、売上高や株価など数値化できる情報であり、非財務情報は環境や社会課題への取り組みなど、一見数値化できない情報だ。この非財務情報に着目することによって、企業のリスクへの対応力や環境・社会課題の背景が見えてくる。(オルタナS編集長=池田 真隆)

ESG投資の専門家・岸上有沙さん

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” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]非財務情報を考える上で抑えておきたい言葉がある。それは「ESG」だ。環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の頭文字を取ったもので、それまで「非財務」と思われる一方、長期的に投資価値に及ぼすものとして認識された3領域を総称したものである。

ESG情報を投資判断に本格的に考慮するようになるきっかけは2008年のリーマンショックとされている。短期的思考の金融メカニズムの限界を目の当たりにし、利益追求を第一に考えた経営よりも長期的なガバナンスや経営を重要視している企業が評価されるようになった。

近年では、企業のガバナンス体制の改善やエネルギー効率の改善を促す投資家対話(エンゲージメント)、株価だけではなく環境・社会への対応を考慮した指数に基づいた投資等、様々な投資関連行動の中でESG情報が考慮される様になってきている。また、こうしたESG情報や長期目線でのサステナブル投資の運用残高の伸び率は年率約16%を記録しており、2019年4月に発表された「GSIR-世界サステナブル投資報告」では、世界のサステナブル投資の運用残高が初めて約3350兆円を超えた。

では、このESG投資の元となる環境・社会課題を見ていこう。

「アマゾン森林火災も気候変動も、その背景を紐解いていくと、遠い国の曖昧な話題ではなく、消費者として、投資家としての活動にたどり着く」――ESG投資の専門家である岸上有沙さんは指摘する。

アマゾン森林火災を例に挙げてこう説明する。昨年から今年にかけて、ブラジル、東南アジア、北米、オーストラリアと、各地でのアマゾン林、原生林での火災により、生態系への影響、そして地球規模での著しい気候の変動を緩和するCO2吸収力の低下に関する懸念の声が高まっている。

その懸念の矛先の一つとして、マルフルギ社というブラジルの食肉加工会社があげられた。ブラジルのアマゾンで生じた火災の主原因の一つは牛の放牧や大豆の生産のための大規模農場を確保するための野焼きと判明されており、そうした野焼きを防ぐエンゲージメントや企業行動の移行を求める投資、またはダイベストメントをすべきか、投資家内での議論は熱くなった。

日本はブラジル産の食肉を輸入していないため、一見日本の消費者とは無縁な議論だ。しかし、マルフリギ社はエマージング・マーケットに位置する上場企業であり、エマージング市場の投資商品の中には入りうる企業となるであろう。また、同社は2018年、アメリカの牛肉加工生産会社ナショナル・ビーフを買収し、そのナショナル・ビーフのこれまでの第一の輸出先は日本だ。こうしてみると、消費者としても、投資家としても、日本でも無関係ではない議論であることが見えてくる。

岸上さんは、金融インデックス開発世界大手のFTSE Russellのアジア環太平洋地域のESG責任者という経歴を持つ。ESGインデックスやレーティングの開発と管理、機関投資家のスチュワードシップ活動の実行に関する支援を行ってきた。

2019年4月からはEn-CycleS (Engagement Cycle for Sustainability)というイニシアチブを立ち上げた。近年、気候変動によって相次いで起きる台風や豪雨などの異常気象について言及しながら、「ESGの要素を自分事としてとらえられなければいけない時期に来た」と話す。

企業や市民の資産を預かるアセット・オーナー向けにESGの要素を、自分事・組織事としてとらえてもらうことを目指したワークショップなどを実践、開発中だ。

ESGの要素を自分事にしている組織は何が違うのか。岸上さんは、「対話力が優れている」と話す。対話力とは、社内外で建設的なコミュニケーションができることを指す。「社内や取引先だけでなく、社会課題の最前線で活動しているNGO・NPOなどのステークホルダーとも積極的に対話の機会を持つことで、リスクを察知し、事前に対応策を取れるようになる」。

自分事として捉え、対話力を持った組織文化はどのように育まれていくのか。投資判断を行う上で不可欠な情報となりつつある「非財務」なESG情報は、財務・非財務という隔てなく、「重要な情報」となっていくのか。岸上さんは今後も執筆、講演、授業など、様々な方法を通じて、企業・投資関係者と丁寧に議論を重ねて行きたい、という。

岸上有沙:
2007年よりESGとサステナブル投資に従事し、2015年よりFTSE Russellのアジア環太平洋地域のESG責任者を務める。2019年4月よりEn-CycleS (Engagement Cycle for Sustainability)という自らのイニシアチブの元、ESG投資やサステナビリティに関連した企業・投資家行動とグローバル発信の促進に携わる。各種講演の他、英国を拠点とする責任投資の専門メディア媒体、Responsible Investor で定期的にESG投資議論と実態に関するコラム執筆。日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)やAsian Investor Group on Climate Change (AIGCC)等の運営に携わり、同JSIFの協力講座として4月から早稲田大学大学院経営管理研究科で開講される講座、「企業の社会的責任(CSR) と責任投資(SRI/ESG)」の担当教員を務める。

「企業の社会的責任(CSR) と責任投資(SRI/ESG)」の申し込みはこちら(会社からの派遣等、一科目だけの「科目履修生」としての出願締め切りは2月7日)
https://www.wsl.waseda.jp/syllabus/JAA104.php?pKey=5700101081012020570010108157&pLng=jp




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