明治安田生命Jリーグはこのほど、クラブの社会課題解決の取り組みを表彰する「2020Jリーグシャレン!アウォーズ」の受賞クラブを発表した。同アウォーズは今回が初の開催で、大宮アルディージャや川崎フロンターレ、ガイナーレ鳥取など5クラブが受賞した。(オルタナ編集部=多田野 豪)

ソーシャルチャレンジャー賞を受賞した大宮アルディージャ

Jリーグは2018年に村井満チェアマンの発案で「シャレン!」を立ち上げた。シャレン!とは「社会連携」の略称で、クラブ、自治体、企業の3者が連携して社会課題を解決する取り組みのことを指す。

Jクラブには1993年の設立時から地域貢献や環境保護などを行うホームタウン活動が義務化されていた。昨年度の活動回数は全クラブ(56クラブ)合計で2万5000回にも及ぶ。

主なホームタウン活動としては、クラブが学校や福祉施設などを訪問するものがあり、原則2者間で行う。子どもたちは選手と触れ合うことで夢を持ち、クラブにとってはサポーターの獲得が期待できる。

一方、シャレン!は単なるファンづくりとは明確に一線を画す。いわば社会課題を解決するための「本質な取り組み」ともいえる。

例えば、特別支援学校の子どもたちを支援する場合、選手との交流だけでは解決できないことがある。シャレン!では、課題の原因を深堀し、真因を特定してから3者で連携した取り組みを行う。

シャレン!の仕組み

今回のアウォーズでは、56クラブのエントリーに対して、一般投票と識者による審査を実施。審査結果は下記の通り。

◆ソーシャルチャレンジャー賞:大宮アルディージャ(手話応援デー)、FC東京(少年院の少年たちの社会復帰サポート活動)
◆パブリック賞:徳島ヴォルティス(ヴォルティスコンディショニングプログラム:SIB)
◆メディア賞:ガイナーレ鳥取(芝生で地域課題解決!「しばふる」で街も人も笑顔に!)
◆Jリーグチェアマン特別賞:川崎フロンターレ(発達障がい児向けサッカー×ユニバーサルツーリズム)

ソーシャルチャレンジャー賞を受賞した大宮アルディージャでは、障がいのある人もない人も一緒に大宮アルディージャを手話で応援しようと、「手話応援デー」を設けている。

2006年から始めて、2020シーズンで12回目を迎えるクラブの代表的な社会連携活動の一つだ。累計13000人が参加しており、当日はスタンドでの応援だけでなく啓発ブース、手話体験ブース、聴導犬PRブースなどもあり、スタジアム全体で手話応援に対応した。選手も手話応援デーTシャツを身に着けてピッチへ入場する。

大山啓輔選手は、「手話応援デーの日は特に、どういう方々に応援していただいているのか、支えていただいているのかを肌で実感できます」と述べる。毎年訪問している大宮ろう学園では、子ども向けのサッカー教室を行っている。「その子たちが試合を見に来てくれたり、声を掛けてくれたりすることがモチベーションになっています」とした。

同じくソーシャルチャレンジャー賞に選ばれたのはFC東京の多摩少年院の少年たちの社会復帰をサポートしている活動だ。

多摩少年院の体育で「サッカー教室」を実施したことがきっかけで、誰も取り残されることのない社会の実現を目指し、同少年院の少年たちの「職業訓練(職場体験)」にも協力することを名乗り出た。

少年たちをトップチームの練習グラウンドやクラブハウスに迎え入れ、グラウンドキーパーやホペイロの業務体験、さらに選手との対談の機会を提供してきた。

メディア関係者の投票で選ばれるメディア賞に選ばれたのはJ3のガイナーレ鳥取。「チュウブYAJINスタジアム」の施設管理で培った芝生の管理スキルをもとに立ち上げたプロジェクトだ。

「地域社会の一員としてお役に立つ」という思いから地域課題である米子市の遊休農地(耕作放棄地)を借りて芝生を生産している。生産はスタッフだけでなく、企業関係者や障がいがある人も行う。

生産した芝生は県内外の教育施設や多目的広場、社屋などに販売。昨年は鳥取県トライアスロン協会や地元ケーブルテレビ局と芝生化クラウドファンディングを行い、1300万円を超える支援額を集めた実績もある。クラブの地域価値の向上、収益強化につなげた。

シャレン!の活動はこちら

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