ミスキャンパスらによる社会貢献を行う任意団体「Sweet Smile」を立ち上げ、企業とのチャリティプロジェクトやイベントを行っていた山崎ひな子さん(23)。彼女がミスコンに出たのは、世界にある格差問題について多くの人に伝えるためだった。社会人になった今、彼女が後輩たちに伝えたい想いとは――。
ーー伝えることの難しさを痛感し、ミスコン出場へ
2008年、山崎さんはミス法政大学に輝いた。ミスコンテストに出たのは、世界の格差問題について多くの人に知ってもらいたいという想いがあったからだった。
「Sweet Smile(スウィートスマイル)を立ち上げる前は、フェアトレードを行うNGOに入っていたのですが、そこで『伝えること』の難しさを痛感しました。情報社会といわれる現代、私たちは多くの情報に囲まれ生活していますが、私たちの生活と深く関わっている世界の現状など、本当に大切なことは、見えにくい環境でもあると思うのです。そこで、見えにくいけど大切なことを、わかりやすいものを活用して伝えたいと思い、ミスコンに出場しました」
その後、他大学のミスキャンパスメンバーを集め、社会貢献イベントなどを行う任意団体「Sweet Smile」を2009年に立ち上げた。Sweet Smileでは、スリーエフやTable for Twoとコラボレーションした寄付付き弁当のプロデュース、チャリティイベントなどを行っている。
ーーNPOの取材を通じて、日本社会の問題が見えた
そして、Sweet Smileから本「ミスキャンパスpresents世界を変える仕事44」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が発売された。これは、メンバーが選んだNPOやNGOを取材し、活動を紹介した上で、就活を控えた学生や若者に新しい選択肢を提示している。取材をしていく中で、日本の社会が抱える問題が見えてきたという。
「例えば、フローレンスは病児保育を行う団体です。子どもが熱を出すと通常、保育園では預かってくれません。しかし、親御さんは仕事に行かなければならない。そういった時に子どもを預かってくれるのですが、昔なら、近所のおばさんや同居しているおばあちゃんが預かってくれたりしたと思うのです。だけど、今はそういった人のつながりが希薄になっているため、このような問題が起こり、そこを補う存在としてNPOがあるのだと感じました」
ーー行動につながるきっかけを提供したい
4月からはNKK和歌山放送局でキャスターとして働いている。メディアに携わる者としてこの経験をどう生かすのだろうか。
「ただ伝えるのではなく、伝えたあと、つなげることを一番目指しています。私が社会活動にかかわるきっかけがテレビでした。ニュースでホームレスに炊き出しを行っている、セカンドハーベストジャパンを知りました。その日にすぐ電話をして、次の日にボランティアへ行きました」
それが、テレビと自分の距離がなくなった瞬間だという。それからテレビで社会問題を知ったら、ネットで調べて動くようになった。そうすることで、自分の世界が広がり、メディアの力の大きさを実感した。
ーー頭で考えないで、心で感じて動く
山崎さんに今、学生に伝えたいことを聞いた。
「ぜひ、頭で考えないで、心で感じて動いてほしいです。例えば、就活は自己分析を行うなど、頭で考えてやるものだと教わります。しかし、それがすべてではないと思うのです。日本の狭い就活の常識にとらわれなくてもいいと思います。みんながやっているから自分もやらなきゃ、と考えるのは分かりますが、もっと今自分がやりたいことを素直に行動に移してみてもよいのではないでしょうか。その先に自分が本当にやりたい仕事が見えるのだと思います。皆が持っている自分の心、良心に、素直に行動することができたら、皆が心地よく暮らすことができると信じています」
*オルタナS vol.2(2011年5月)から転載
*本記事は、2011年5月に掲載されたものであり、年齢や日時は全て当時のものです。