千葉県松戸市にある古民家「旧・原田米店」の一角に、ヨーロッパの伝統的な技術を用いて椅子張りを行う女性職人、遠藤友嘉里さんの工房がある。遠藤さんは航空会社に勤務後、イタリア、次いでイギリスに渡り、憧れていたものづくりの世界へ飛び込んだという。



椅子張りとは、長く使った椅子の骨組みを残し、座面や背もたれなどのうち古くなって使えない部分を新しく作り直す仕事だ。張替えをすることによって座り心地も戻り、見た目にも生まれ変わる。伝統的な技法で作られた椅子には、100年持つといわれるものもあり、親子に渡って受け継いで使うことができるという。

例えば、最近では椅子の中身はウレタンなどが主流になっているが、伝統的な椅子張りでは馬毛やヤシの実の繊維など自然の素材が使われていたり、椅子にも手縫いでステッチを入れているという。ヨーロッパでは専門の職人たちがその技術を日々守り、高めている。

遠藤さんは「椅子張りのすべての工程がわくわくするんです。自然の素材を扱っているので、さわっていて気持ちがいいし……セラピーを受けているみたいで、心が洗われるようなところがあるんですよ。理屈抜きで、楽しいですね」とその楽しさを熱く語る。

「はがし」と呼ばれる道具で釘を外し、古い座面を剥がす作業。話をしながらも、手は動きつづけます。


工房の近所で知り合った人たちとの交流も深まっているという。近所のミシン屋さんは、修理もできる職人で、情熱もあり、色々教えてもらっているそう。遠藤さんの作品は「MAD City Gallery」(松戸市)で展示・販売されているので、ぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。(寄稿 吉野元春 編集 猪鹿倉陽子)

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