IT企業サイバーエージェント株式会社(東京渋谷区)は、5000万円の出資金で新しく設立したスマートフォン向けアプリ開発の子会社「シロク」の社長に2012年新卒内定者の21歳飯塚勇太(慶應義塾大学経済学部)さんを抜擢した。内定者アルバイト時代に仲間と開発したiphon用カメラアプリ「my365」が世界50万DLを記録した実績を持つ。コンプレックスは趣味が無い事という飯塚さんの素顔に迫った。(聞き手・オルタナS特派員=池田真隆)

新しい当たり前をつくりたいと語る飯塚さん


——「my365」は一日一枚の写真を日記のようにカレンダーに貼付けていき、それをユーザー間で共有しながら楽しみます。この一日一枚だけというコンセプトは足湯から生まれたそうですね。

飯塚:限定されていると逆にやりたくなるのが人間の特性だと思います。足湯に浸かれるのは足だけですが、足湯は人気です。また、例えば目の前の箱に「開けるな」と書かれていれば開けたくなる感覚です。5・7・5の制限された文字数で美しいものを考える俳句もそうだと思います。日本人は古来からそのように考えるのが好きな体質だと思っていました。

——11月にサービスを開始してわずか3ヶ月で50万DLを記録しました。2012年1月19日には日本のApp Store「カメラ・ビデオ」カテゴリの無料ランキングにおいて1位を獲得しました。ここまで広まった要因は何でしょうか。

飯塚:わかりやすさではないかと思っています。アプリ名やデザインもシンプルに作り、一目見て使い方が分かることを心がけました。

また、多くの人は常々日記を書きたいと思っていますが、時間がなくてなかなか続けることが難しいのが現状です。しかし、写真一枚だと時間もかからないので続けることが容易です。これらのことが要因で広まったのではないかと思っています。


■サッカーW杯も見てませんし、ファッションやグルメにも興味がありません

——このアプリを思いついた背景には何があるのでしょうか。

飯塚:「my365」を開発するまえに、日頃からネット上で膨大な量の情報が垂れ流され続けていることに疑問を感じていました。情報をストックするコストは比較的安いので、どうにか出来ないのかと思っていたことが背景にあります。

また、他のカメラアプリは撮った写真を見返すイメージがあまりつかなかったので、「my365」では撮った写真を思わず見返したくなるようにデザインしました。

——新卒内定者からいきなり株式会社シロク代表取締役社長になりました。変化はどうですか。

飯塚:多くの人に存在を知って頂けたという意味で、周りからの目は変わりました。

また、今までは好きなメンバーと好きなことをしているだけでしたが、これからは好きなことをしながら、会社としてお金を稼ぐ使命が追加されました。お金を稼ぐことの難しさを感じています。

——大学1年生からIT企業にインターンを経験されて、これまでの学生時代にもビジネスコンテストで入賞しています。何かコンプレックスや忘れられない失敗経験などはありますか。

今でも忘れられない失敗は、第一志望の高校に受験失敗したことです。そして、コンプレックスなのですが趣味が無いことです。同世代のみんなが大抵夢中になることに関心が持てないのが悩みでもあります。

サッカーのワールドカップもまったく見ませんでしたし、流行のファッションやグルメなどにも興味がわきません。

あえて言えば、今は仕事そのものが趣味であります。だから、唯一ビジネスに興味を持てたことがラッキーでした。

■写真で構成された日記は、将来の財産になる

——休みの日はどのように過していますか。

飯塚:休みの日はネットサーフィンをして、他のWebサービスを調べていることがほとんどです。また、世の中にある会社がどのくらい儲けているのか知りたいので、色々な会社の決算資料を見ることが好きです(笑)有名企業の決算資料はほとんど見ています。

——2012年の目標を教えてください。

飯塚:「my365」の1000万DLを目指しています。
そして、キャッチコピーである「何気ない毎日を振り返ると素敵な思い出でした」という概念を広めていきたいです。

今は情報を蓄積することに対するコストは小さいのに、一日一日をとどめていません。何気なく毎日を過してしまい、振り返る手段を持っていない人が多い気がします。

仕事や学校で時間的に日記を続けるのが難しい人も、写真なら続けられると思
います。そして、それは将来の財産になると信じています。

■ユーザーの優しさを感じる「入院した」という写真への大量のコメント

——このアプリで実現したい未来像などはありますか。

飯塚:今までは、写真を撮るときは割と偶然的な瞬間が主流でした。しかし、これからはmy365があるから写真を撮るように働きかけていきたいです。

my365に掲載するために写真を撮るようになれば、日々の生活で注意深くものを見るようになっていきます。

辺りを見渡せば絶対思い出に残るものがあります。この「my365」を通してそういう文化を作っていきたいです。そして、新しい当たり前を作っていきたいです。

——その未来像に対してユーザーの反応はどうでしょうか。

飯塚:最近では、ユーザーの人たちの優しさを体感しています。
あるご高齢な方がmy365を使ってくれていて、その方が「入院した」と写真つきで掲載したら、フォロワーの方々からものすごい量のコメントがきた事例があります。

そのご老人にも「こんなに心配してもらえるとは思わなかった」と言って頂き、とても感動しました。


my365の紹介動画↓


飯塚勇太
1990年3月9日生まれ/慶應義塾大学経済学部/2012年株式会社シロク代表取締役就任

「my365」のダウンロードはこちら