宮城県石巻市十三浜で漁業を営む阿部滋さん(62)。東日本大震災で所有していいた船や加工施設など合わせて、約5000万円の被害を受けた。一度は漁師を辞めようと思ったが、一人息子(32)の「もう一度、がんばろう」の一言に再び漁業を再開することを決意したという。(聞き手・オルタナS特派員=池田真隆)
——震災後1年が経過しましたが、今のお気持ちはいかがでしょうか。
阿部:1年たったが、何も変わっていないなという心境です。テレビでは復興と言っているが、まだ実感がわかないです。私は、自分の家を失って賃貸に住んでいるのでなおさらです。
——阿部さんが震災を経て変わったことはありますか。
阿部:人の気持ちがわかるようになりました。全国から本当に多くの人が毎日ボランティアに来てくれています。1円にもならないのに、我々の手助けをしてくれてすごく感謝しています。これからも忘れないで付き合ってくれたらと思います
よく、外部の人が被災地支援イベントなどを実施することへの批判の声を聞きますが、私はもっとそのようなイベントを行ってほしいと思っています。今回も東京に被災地イベントで来ましたが、本当に来て良かったと思っています。
——ボランティアとの忘れられない出来事はありますか。
阿部:たくさんありますが、一つ挙げるとすれば、避難所からの引っ越しのときです。その人たちは九州と四国から来ていて、引っ越しの荷物運びや、部屋の掃除、食器なども全てキレイに洗ってくれました。
帰りがけ、いつか何かお返ししたいと思い住所を聞いたのですが、住所は教えてくれませんでした。その代わりボランティア団体の住所を教えてくれました。