日雇い労働者や生活保護受給者が集まる横浜寿町。ドヤ街と呼ばれるその町で、絵を描き続ける幸田千依さん(28)。ドヤ街に暮らす人々に魅了され、その土地でしか感じることのできない何かを絵に現す。「ここに住んでいる人のことを怠け者として世間は見ているけど、ちゃんと見るとそうではない。みんな事情がある」と話す。(聞き手・オルタナS特派員=池田真隆)


ドヤ街の一室で絵を描く幸田さん


——なぜ、ドヤ街に住み込んで絵を描こうと思ったのですか。

幸田:もともと各地に滞在して、そこで感じたことを絵に描く暮らし方をしていました。今まで、鹿児島や大分に住みながら絵を描いていました。ドヤ街は2010年の5月に知人アーティストとともに訪れたことが初めてで、それがきっかけで、もっとここの土地を知りたいと思い、2011年の9月に住む事に決めました。

——ドヤ街に住むことに抵抗はなかったのですか。

幸田:ニュースの情報などでは、ドヤ街は近づいてはいけない場所のような印象を受けますが、実際住んでみるとまったくそうではないです。一人ひとりに事情があります。例えば、精神障がいが原因でコミュニケーションが取れずに働けない人や、日雇いでなんとか生活していけるが住民票がないためにアパートを借りることができない人などがいます。だから、一概に怠け者の集まりではないと思っています。

——ドヤ街の魅力はどこにありますか。

幸田:住んでいる人です。たまに喧嘩してたり、道ばたで昼間から寝ている人がいますが(笑)。ドヤ街に住んでいるからといって特殊な人ではありません。ここの土地で見る光景には何か面白いものを感じます。

ドヤ街に住む人々と絵を通して交流する


——ドヤ街の人にご自身で描かれた絵をプレゼントしていますが、ドヤ街の人は絵を渡されてどういう様子でしょうか。

幸田:私は絵を描いていく過程も公開しています。なので、絵を描いている途中に私の部屋に見にきてくれて、完成するまでの苦悩や挫折の道のりを一緒に共有します。完成したその絵を自分ごとのように捉えてくれています。

——「絵描きは職業ではなく、生き方」とおっしゃっていますが、なぜそこまで絵を描く事にこだわるのでしょうか。

幸田:そうやって生きていきたいからです。絵を描くことがきっかけで多くの人と出会えました。今後も、絵描きとしてのフィルターを通して世の中を見ていきたいと思っています。

幸田さんの描いた絵「森林浴場」


——現在、クラウドファンディングのプラットホームCAMPFIREで、幸田さんがドヤ街で見た、聞いた、感じたものを書籍化するプロジェクトを実施しています。この書籍では誰に、何を伝えたいのでしょうか。

幸田:ドヤ街の印象を自分の心の中で勝手に決めつけている人たちに、実際のドヤ街の姿を知ってほしいです。そして、寿町に住んで変わった私自身についても感じとってくれたらと思っています。


現在幸田さんが取り組んでいるプロジェクト↓
横浜のドヤ街を舞台にしたアートプロジェクト「寿から絵を放つ」の書籍化と「絵のパレード」
http://camp-fire.jp/projects/view/173