種目は「女子100m自由形S11」。S11は完全に視力がない、つまり全盲のクラスである。パラリンピック競技に付いているアルファベットは競技を、数字は障害の種類と程度を表していて、数が少ないほど重度の障害クラスである。

基本的に障害のない競技のルールと変わらないが、水中からスタートしても良く、コーチが棒でたたいてターンやリレーのタイミングを教えることも許されている。

スタートすると、「Go!Go!里奈!!Go!Go!里奈!!」応援団の声援が響く。思わずカメラを片手に僕も声を上げる。まるで自分の子供や孫を応援するような真剣なまなざしに、なぜか自分まで頑張らなきゃ、という気にさせられる。

出だしは好調だったがターンで少し遅れを取った。応援団も声をますます張り上げる。順位は関係ない、最後まで応援する覚悟だ。

自由形のレースに果敢に挑む背泳ぎの秋山里奈(写真:市川亮/LIVEonWIRE)


結果はフォルス・スタート(水泳競技で合図よりも前にスタートしてしまうこと)で残念ながら失格。応援団からは「肩慣らしだよ。背泳ぎでクロールと戦ったんだ、立派なもんだよ!」「まだまだこれから、本番は明後日だよ」と声が上がる。

明後日は「女子100m背泳ぎS11」だ。背泳ぎは里奈さんの真骨頂、結果を期待してしまうのはもちろんだが、なによりアスリートとしての素敵な泳ぎが楽しみだ。

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