『京大生が書いた高校化学 基礎編―「有効数字の見方」や「化学式の書き方」からはじめる 』(工学社)という本が、今月発売された。

自著を手にする京大生の松本直樹さん


「有効数字」の見方や使い方、「化学式」の見方や書き方などの基本中の基本から丁寧に解説されていて、知らず知らずのうちに化学の深い知識が身につけられる。

著者は、兵庫県三田市に在住の現役京大生で、理学部4年生の松本直樹さん(23歳)。気象学を専攻し、ジェット気流の起こる速度の上限値を理論的に求める手法を研究した論文を執筆中だ。

そんな彼が、なぜこの本を出すことになったのか。
Facebookから連絡を取り、インタビューを試みた。




――なぜ大学生が高校生向けの参考書を作成したのでしょうか。

松本:実は、この本の元の原稿は、僕が高校2年の冬から発表しているホームページ『化学魔の還元』なんです。高校生の頃、化学の授業が面白く感じられず、「僕ならこういう説明がわかりやすい」と思った表現で、自分より若い人へ化学の面白さを還元したいと思ったんですね。

このホームページを大学生になってからも書き続けていたところ、工学社の編集者の方の目に留まり、昨年6月に出版の話をいただいたのです。

――つまり、高校生自身が高校生に向けて発信した内容が受けたのですね。

松本:まさにそうです。実際、現役高校生から「とてもわかりやすかった」「ここまで論理的に化学を説明できるものなのか」などのメールをよくいただきました。

僕はもともと小学生の頃から気象に興味があり、気象予報士を知ってやりたいと思ったり、中学の頃に先生が「台風の発生するプロセスはよくわかってないんだよ」と言ったのを聞いて「それなら研究してみたい」と思ったりしていました。

だから、化学も楽しく教えてほしかったんです。この本を書くときも、漫然と授業を受けたり、なんとなく理解するような受け身ではなく、読者が化学を楽しく理解し、理解した後は自分が誰かに楽しく教える立場になってほしいと思って、ホームページには書いてないことも加筆しました。

「化学は苦手だけど教えなければならなくなった」という教師の方や、中学の理科で「イオンを教え方がわからない」とお悩みの先生にも参考になれば、うれしいです。




松本さんは来春、京都大学大学院へ進学予定で、「ゆくゆくは暴風雨や台風などの発生のメカニズムを研究していきたい」と言う。このように自分の学びを楽しく伝える若者が増えてほしい。(今一生


●化学魔の還元
http://kagakuma.iza-yoi.net/index.html